3.波の表示

 波はその変位y(x,t)が位置xと時間tの二つの変数で表される関数であるが、波を観測する場合、位置を固定してその場における変位の時間変化を観測する場合と、ある時刻における各点での変位を観測する場合とが考えられる。
前者の場合はx=一定で、その時間的変化はy(定数,t)で表される。横軸に時間t、縦軸にある位置における各時刻での変位を図示すると、波の山(谷)から山(谷)の区間が周期である。
 また後者の場合は、t=一定であり、その位置的変化はy(x,定数)で表され、これは波のある時刻における波形を表す。従って、横軸に位置x、縦軸にある時刻における各点での変位を図示すると、波の山(谷)から山(谷)の区間が波長である。

3.1 波動方程式

 正弦波の一般式は

で与えられる。ここで、A、T、λおよびδはそれぞれ、振幅、周期、波長、初期位相である。上式はまた、振動数fと波数k(=2π/λ)を用いて、
y(x,t)=A sin (2πft−kx+δ)
と書き表わされる。さらに、角振動数ω(=2πf)を用いると、
y(x,t)=A sin (ωt−kx+δ)
と表すこともできる。このように、正弦波の一般式はさまざまな表し方ができる。
さらにまた、コサイン波は

であるから、位相がπ/2だけ異なった正弦波(サイン波)と見なすことができる。
 これまで、x軸を伝わる一次元の波を考えてきたが、次に、空間を伝わる平面波について考える。波の伝わる方向にξ軸をとれば、
y(ξ,t)=A sin (ωt−kξ+δ)
である。また、波の伝わる方向の単位ベクトルをs(sx ,sy ,sz)とすると、位置(=x+y+z)における変位y(r,t)は、ξ==xs+ys+zsより、

y(r,t)=A sin (ωt−k+δ)

である。ここで、k波数ベクトルといい、波の伝わる方向を向いている。波数ベクトルを用いると、空間を伝わる平面波は、
y(r,t)=A sin (ωt−+δ)
と、表される。
 一般に波はf(ωt−)の式で与えられるが、これは波動方程式と呼ばれる偏微分方程式

を満足する。ここで、

である。

3.2 波の複素数表示

正弦波は、オイラーの公式

を用いて、複素数の世界では、

と表すことができる。上式で、実部と虚部が共に現実の正弦波を表している。式において、

複素振幅という。波の複素数表示は波動における計算を容易にする。


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