2.速さと速度および加速度

 物体が運動しているとき、進んだ距離x[m]を移動に要した時間[s]で割った量x/t[m/s]を平均の速さという。しかし、運動における速さとは、平均の速さではなく、その時刻における瞬間の速さを意味する。すなわち[m/s]の速さとは物体がそのままの速さで運動すると仮定すると、1秒間にv[m]の距離を進むことを意味し、v[m]の距離を1秒かかって運動した場合の平均の速さとは異なる。物体の時刻tにおける(瞬間の)速さを求めるには、まず

 (1)微小な時間間隔[t,t+凾脳での平均の速さ凾/凾狽考える。

ここで、凾は微小時間凾狽フ間に物体の進んだ距離である。そして、

 (2)凾煤ィ0における凾/凾狽フ極限値を求める。

この極限値が時刻tにおける物体の速さである。これは距離xを時間tで微分することと同じである。

 一般の運動においては速さは一定ではなく、時々刻々変化するが、速さが一定の運動を等速運動といい、この場合、物体の進む距離は時間に比例する

 速さは運動の大きさは表すが運動の方向は不明である。大きさだけの量はスカラー量とよばれ、他に時間、距離、質量などの物理量がある。一方、運動の大きさと運動の方向を表す量が速度である。そして、このような大きさと向きのある量をベクトル量という。
速度瞬間の速度を意味し、速さと同様に、まず平均の速度を考える。この場合、微小な時間間隔[t,t+凾脳での物体の移動距離凾のかわりに、物体の位置の変位ベクトル(=(t+凾)−(t))を考えると、/凾狽ヘ平均の速度を表す。ここで、(t)は時刻tにおける物体の位置ベクトルである。そして、凾/凾狽フ凾煤ィ0における極限値が(瞬間の)速度である。すなわち、速度とは物体の位置ベクトルの時間微分である。速度が一定の運動を等速度運動というがこれはまた、速さと運動の方向が一定であるので等速直線運動ともよばれる。また、速度が変化する運動は加速度運動とよばれる。速さは変わらなくても運動の方向が変化すれば、速度が変化したことになるので、これも加速度運動である。時間に対する速度の変化率が加速度で、加速度は速度を時間で微分したものである。加速度が一定な運動を等加速度運動といい、この場合、速度は時間に比例して変化する。

2.1 速度の合成と分解

 流速Vの川面を静水中での速度Vの船が進んでいる場合を考えよう。このとき船の川底に対する速度はである。このような速度の和を合成速度という
 また、速度は逆に、任意の方向に分解して考えることもできる。例えば、平面上を物体が速度Vで運動しているとすると、その運動はx軸方向の速度Vとy軸方向の速度Vに分解して考えることが出来る。すなわち、VVVである。そこで速度Vがx軸とθの角度を成すとき、x軸やy軸方向の速度の大きさはそれぞれ、|V|=|V|cosθ、|V|=|V|sinθである。そしてまた、|V=|V+|Vの関係が成り立つ。

2.2 相対速度

 観測者が車に乗っていて隣を走っている車を見たとき、相手の車が同じ方向に進んでいるときはその動きはゆっくりに見えて、すれ違うときは速く見える。このように、共に運動している物体から相手を見た時、相手の速度はお互いの運動方向によって違った速度に見える。そして、互いに運動している物体を片方から見たときの速度を相対速度という

また、列車に乗っていて窓に残る雨粒の軌跡をみると、雨粒は真下に落下しているにもかかわらず斜め後方に落下しているように見える。これは列車から見た雨粒の相対速度に他ならない。すなわち、列車から見た雨粒の速度はV雨粒V列車である。

 一般に、速度Vで運動している物体から速度Vで運動している物体bを見たときの相対速度Vabである。速度はベクトル量であるので、ベクトルの平行四辺形の法則から、相対速度はベクトルVの終点(矢印)からベクトルVの終点(矢印)へ引いたベクトルとなる。そしてこの関係は運動の次元に関係なく成り立つ。


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