レースに向けて


 いよいよ,ホノルルマラソンです!
 思い返すと,初夏の頃に“ホノルルマラソン”を合い言葉にお集まりいただきともに走ってきました。「本当に完走できるのか?」「相当走らなければならないのでは?」と考えていた方が多かったはずです。しかし完走できる走力がついていることを実感しているのは,実は皆さん自身のはずです。
 “走る”というシンプルなスポーツは,シンプルゆえにトレーニングは地味な印象があります。その地味なトレーニング,走ることが習慣になると不思議な魅力を感じることができます。その魅力は十人十色です。魅力は生活に潤いを与え,もしかしたら人生そのものを豊かにしてくれるかも知れません。皆さんは,果たしてどんな魅力を見つけたのでしょうか?
 ランナーは,芸術家と同じ作業をしていきます。たとえば,芸術家が絵を描き上げるためには,時間をかけてキャンバスに筆を置いていく作業が必要です。マラソンも,完走するためには時間をかけてトレーニングを重ねなければなりません。芸術家は,絵が完成すると展覧会に出品します。ランナーは,展覧会の代わりにマラソンレースに出るのです。ホノルルマラソンは,皆さんの展覧会です。ホノルルでは,完走することが目的でもいいでしょう。少しでも早くゴールすることでもいいでしょう。どんな目標でもいいのです。今までしてきたトレーニングの結果を表現するのです。
 ホノルルマラソンのゴールの向こうには何があるのでしょうか? ぜひとも皆さん自身の足で確かめてください。

レースの準備編
シューズ
 42.195km走るのに,やはりシューズは要。満を持して走るマラソンですから,「シューズも新調して・・・」と思いがち。しかし,そこに落とし穴があるのです。
 シューズは,できるだけ履き慣れたものをレースに使います。割と新しめであっても,普段のトレーニングで使用していれば大丈夫です。その場合,インソールだけでも洗っておけば足になじみやすくなります。いずれにしても必ず確認しておきたいのは,シューズの中で足に部分がないか,ということです。
 ところで,ホノルルマラソンのコースは17km過ぎからハイウェイを走ります。このハイウェイのアスファルト,案外硬く感じます。脚力に不安があるランナーは,厚めのシューズを履いた方が賢明かと思います。
 レース中,できるだけ煩わしい動作はしたくありません。シューズのひもは,ほどけないように結ぶことも確認事項の一つです。煩わしいだけでなく,ほどけたひもを踏んで転びかねません。二重に結んだりし注意を払っておきましょう。

ウェア
 ホノルルマラソンは,スタートは朝5時で涼しく,日が昇るにつれ暑さを感じるようになります。ウェアは,夏場のレースを想定したウェアがいいでしょう。長いパンツやタイツより,短いランニングパンツやタイツが気持ちよく感じます。
 ところで,新しいウェアは汗の吸収が悪かったり,脇などが擦れる原因にもなります。ウェアだけでなくソックスも同様です。身につけるウェア類は,一度は洗っておきましょう。
 レースが始まり時間が経つにつれ,照りつける暑さと路面からの反射熱で暑さを感じます。時間をかけて完走を目指すランナーは,キャップをできるだけかぶっておきたいところです。日差しから体調を守るためにも,必需品と言えるでしょう。
ハワイについたら
時差解消
 日本とハワイとでは,当然時差があります。できるだけハワイの時間に自分自身を合わせることが必要です。日があるうちにつくのなら,すぐに寝ることはさけ軽めのjogなどを行いましょう。食事を楽しみ,日が暮れてから寝るようにします。日が暮れてからつくのなら,できるだけ早く寝るようにし,いつも通りの朝の起床を心がけましょう(もちろん,ハワイの時間で)。
レース前日
トレーニング
 ホノルルに着いてから,緊張や興奮からついついたくさん走ってしまうランナーを時々見かけます。レース前のトレーニング,どうしたらいいでしょうか?
 レースは万全の体調を臨みたいものです。身体は疲労していないフレッシュな状態が理想です。そのためには,走りすぎて疲労をため込むよりも「トレーニング不足」を感じるくらいで構いません。何しろレースでたくさん走るのですから,そのエネルギーをためる意識を持ちましょう。
 具体的には,軽めのjog,ストレッチングなどがメニューとなります。

起床時間、睡眠
 レースのスタート時間は,朝の5時です。起床は,少なくても3時間くらい前に起きましょう。したがって,起床時間は2時頃になります。
 起きてからの行動も,あわてずにこなしていきます。行動予定は,次のようになります。

・ホテルからスタート場所までどのように行くか確認

・用意しておいた朝食をしっかり摂る

・トイレをすます

・ウェアやシューズを準備する

 真夜中の2時に起きなければなりませんから,就寝時間はそれに合わせて早くなります。なかなか寝付けないこともあるでしょう。でも大丈夫。多少の睡眠不足はレースにさほど影響しませんし,レース後しっかり寝れば回復するものです。

レース編

各自でドリンクを用意
 実際のスタート会場は,たくさんのランナーであふれています。いよいよ,という雰囲気が漂いだし,緊張し,そして興奮に変わります。スタート時間まで,こうした変化が心の中で起こります。きっとのどが渇くに違いありません。
 スタート会場で何か飲み物を買おうにも,あるいは公園の水飲み場に行こうにも大変な苦労をしてしまいます。そこでおすすめなのは「マイ ドリンク」を持参することです。これも寝る前に用意し,確認しておきましょう。

マメ、脇ずれ、股ずれ対策
 ランナー誰しもマメができ痛い思いをしたことがあるかと思います。原因はシューズ内の熱がこもってしまうことです。つまり,火傷みたいなものなのです。対策として通気性の良い,足に合ったシューズを履くこと。
 脇ずれ,股ずれなどは,ワセリンやディクトンといったクリームを塗ることが効果的です。とくにディクトンはマメ対策にも効きます。
 男性だと,乳首が擦れてしまうこともあります。絆創膏をはればこれも解決できます。
ワセリンは薬局,ディクトンは薬局やスポーツ店で扱っています。

オーバーペーズに気を付ける
 レースが始まると,並んだ位置によっては,自分の考えていたペースで走るまで少し距離を走らなければいけないかも知れません。そこで注意したいのは,あわてないこと。スタート直後ゆっくりと走っていたからといって,それを取り戻そうとしてはいけません。はたまた,後半のペースダウンを見込んでその分前半速く走ろうというのもなりません。何しろ上手なレース展開は,イーブンペース。目標のゴールタイムは? ペースはどのくらいでいけばいいのか? しっかりと確認しておくことがレース成功の秘訣です。

水分をしっかり摂る
 42.195km。その長い距離を走れば,発汗量も相当なものです。レース中の給水,怠ってしまうと大変なことになります。これはふだんから飲み慣れているアミノバリュー。まさに鬼に金棒! です。
 給水の方法ですが,エイドステーションで毎回しっかりと摂っていきましょう。決してがぶ飲みするのではなく,少しずつ摂ることがよいでしょう。
 飲むわけではありませんが,水を体にかけることも暑さから身を守る方法です。熱を持ちやすい大腿部や,熱中症を予防する意味で首のまわり,気分を変えるために顔や腕に水をかけてみましょう。

食事編

 レースまであと一週間となりました。体調はいかがですか?ホノルルに行くために、今ハードに仕事をこなしている方、風邪をひいたり睡眠不足にならないように気をつけましょうね!手洗いやうがいも忘れずにしましょう。この一週間は走ってトレーニングすることより、疲れを取って体調を整えることやエネルギーを貯めることが大事になってきます。ここでは、レース一週間前からレース直前、レース中の食事、栄養補給について見ていきましょう。

カーボローディング

 グリコーゲンローディング、ともいいます。走る時のエネルギー源は糖質と脂肪(+ちょっとタンパク質)です。エネルギー源であるカーボ(糖質)を普段以上のレベルに体内にローディング(loading 負荷して蓄える)することがカーボローディングです。ちなみに、脂肪はどんなに体脂肪の少ない人でも何回もマラソンを完走できるくらいの量が身体に貯えられています。しかし糖質は脂肪ほどたくさん貯えられていません。これは、脂肪が貯蔵型のエネルギー、糖質が使いやすいエネルギーだからでもあります。だから、ご飯やパン、甘いものだって必要以上に食べればそれは脂肪になって身体に貯えられる(=太る)のですね…。話をマラソンに戻して、マラソンをうまく走り抜くには、身体に貯えられている脂肪をうまく使うことと糖質を十分に貯えてスタートすることが鍵になります。【『脂肪をうまく使う』については、脂肪が燃焼するような速度=有酸素運動、ということで、ここまでの練習会で自分の最適なペースがつかめてきているかと思いますし、他(以前の)の項を見て下さいね。】

具体的には、

1週間前〜4日前…普段通りの食事、トレーニングもいつも通り(だからといってやりすぎないように気をつけましょう!!)
3日前〜前日…糖質多め(3?4割増し)その分脂肪を控える。トレーニングは軽めに!

糖質3〜4割増し→
ごはんを茶碗1杯→1.5杯にする
・8枚切りのパン2枚→6枚切りのパン2枚にする
・食事では夕食だけご飯を増やして、午前午後にカステラや菓子パンなどの間食を食べる。
・食後のお茶を果汁100%ジュースにする。
などなど、です。

前日
…当日は朝が早いので、あまり食べられないかもしれません。前日にパスタやパン、ごはんなどをしっかり食べておきましょう。夕食の主食(糖質)は、普段の2倍くらい食べましょう。

当日…お弁当を食べて、いざスタート!
☆アミノバリュー(水分)はしっかり摂ってからスタートしましょう。
☆朝早くてお腹が空かないという方は、ゼリー飲料など食べられるものを口に入れましょう。
☆スタート1〜2時間前には食べ終わるようにしましょう。(走る直前に食べると、走っている時は体中に血液が回るため胃腸への血液循環が少なくなるので、消化不良を起こしやすくなります。)

その他
☆ビタミンB1…糖質をエネルギーとしてうまく燃やすには、ビタミンB1も必要です。こういう時はサプリメントを利用するのも一つの手ですね。
☆水分…糖質が身体に貯えられる時には、水分も一緒に貯えられます。カーボローディングを始めて体重が増えていても気にすることはありません。逆にうまく糖質が貯えられてきている証拠でもあります。
☆初めての人…『食べなきゃ!』なんて思うことはありません。胃腸を壊してしまっては元も子もありませんから、無理のない範囲で、上記を参考に自分のやりやすい方法でやってみましょう。
☆食物繊維…レース前日や当日は、ガスを発生しやすい食物繊維の多い野菜や芋類は避けましょう。

レース中…水分補給はしっかりと!のどが渇いたと感じる前にしっかり補給しましょう。(夏の練習会を思い出しましょう。)立ち止まってでいいので、十分に飲みましょう。
☆ポーチ…途中でお腹空くのでは?という不安がある方は、ポーチを持っていきましょう。ゼリー飲料や飴玉、足がつりやすい方は塩飴など、ポーチに入れて持って走れば安心です。今は、走る時に使えるポーチが出回っています(私も夏場に山を走る時は必需品です)。中には、ペットボトルが入るものもありますね。身体にフィットするようにできていますから、思ったほど負担にはなりません。ゼリー飲料1コと飴玉などちょっとしたものだったら、そんなに重く感じることもないかと思います。

 ここまでトレーニングしてきた力を存分に発揮できるように、スタートラインに着くまでにできることを一つ一つやってみましょう!