東京工芸大学工学部                                               []
基礎教育研究センター・物理教室
實方研究室(Sanekata Lab.)

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<よみもの抜粋録イン通勤図書館>
○『高村光太郎詩集』 高村光太郎著(2008年6月28日読了)
    「当然事」(猛獣篇より)

    あたりまへな事だから
    あたりまへな事をするのだ。
    空を見るとせいせいするから
    崖へ出て空を見るのだ。
    太陽を見るとうれしくなるから
    盥(たらい)のようなまつかな日輪を林中に見るのだ。
    山へ行くと清潔になるから
    山や谷の木魂(こだま)と口をきくのだ。
    海へ出ると永遠をまのあたり見るから
    船の上で巨大な星座に驚くのだ。
    河の流れは悠然としてゐるから
    岸辺に立っていつまでも見てゐるのだ。
    雷はとほうもない脅迫だから
    雷がなると小さくなるのだ。
    嵐がはれるといい匂だから
    雫(しづく)を浴びて青葉の下を逍遥するのだ。
    鳥が鳴くのはおのれ以上のおのれの声のやうだから
    桜の枝の頬白の高鳴きにきき惚れるのだ。
    死んだ母が恋しいから
    母のまぼろしを真昼の街にもよろこぶのだ。
    女は花よりもうるわしく温暖だから
    どんな女にも心を開いて傾倒するのだ。
    人間のからだはさんぜんとして魂を奪ふから
    裸という裸をむさぼって惑溺するのだ。
    人を危めるのがいやだから
    人殺しに手をかさないのだ。
    わたくし事はけちくさいから
    一生を棒にふつて道に向かふのだ。
    みんなと合図したいから
    手を上げるのだ。
    五臓六腑のどさくさとあこがれとが訴へたいから
    中身だけつまんで出せる詩を書くのだ。
    詩が生きた言葉を求めるから
    文ある借衣(かりぎ)を敬遠するのだ。
    愛はぢみな熱情だから
    ただ空気のやうに身に満てよと思ふのだ。
    正しさ、美しさに引かれるから
    磁石の針にも化身するのだ。
    あたりまへな事だから
    平気でやる事をやらうとするのだ。
読後感:このところ取りまとめること叶わない茫々たる読後録をかかえながらも、 久しくこの録をほったらかしにしておりました。 高村光太郎のこの詩に私のココロはぐゎしッと鷲づかみにされた感ありまして、久々にこの録を更新することにしてみました。
 最近、地球や自然環境のことも、人の関わるさまざまな出来事についても、 少し前まで当たり前であった多くのコトが急激に当たり前でなくなって来ているような気がしてなりません (脚下照顧、まずは自分自身が当たり前かどうかもあやし・・・)。 当たり前がずっと当たり前であり続ける(あり続けられる)ことのもの凄さを、 高村光太郎はありったけの力を振りしぼって人々に伝えようとしている。
歯が痛くなったときになってはじめて、いつも当たり前のように甘いお菓子を食べることができていたのをうらやましく思う。 風邪で高熱を出し前後不覚の状態で家で寝ているとき、 いつも当たり前のように外出してショッピングを楽しめていたことをうらやましく思う。 腰を痛めてはじめて、いつも当たり前のように不自由なく階段を上り下りできていたとことをうらやましく思う。 のどが渇いて自販機でミネラルウォーターを買おうとしてたまたま10円玉一枚の持ち合わせが足りなかったとき、 いつも当たり前のように自販機でミネラルウォーターを買えていたことをうらやましく思う。 私たちの共有する当たり前は、いつまで当たり前たりうるのだろうか?
まずは、ストレートにものを見てみる。 そうすれば、光太郎のように少しはその当たり前の本質に気づくこと、叶うのでしょうか。
○『東京ファイティングキッズ』 内田樹・平川克美著(2007年7月5日読了)
  • 「おばさん」的
  • 霜層の流れ
  • マザーシップ
  • 机上の議論で「不敗」の思想は、一歩表にでると「ボロ負け」の思想
  • 「そこそこ使い物になる」思想
  • 「雪かき仕事」のような即効性のうすい努力を、サボらず、意識せず、繰り返してゆくこと
  • 未知の考想
  • 知的無政府状態
  • 知的肺活量
  • 知的酸欠
  • 知性の腕力
  • 論理の背筋
  • <少年>としての他者
  • 爾後
  • ルンペン資本家
  • 消費、蕩尽、創造、生産、退蔵
  • 価値変動
  • 貧乏、飢餓感
  • アドレッセンス(青年期)
  • 触れてほしくない過去
  • 落語『水屋の富』
  • サラリーマン的エートス
  • 植木等『ニッポン無責任時代』
  • 出発点において、ぼくたちに「何ができないか」を知るほうが面白そうだ
  • 五十歳を過ぎてのバイクは予想外に面白くて、何のけれんも無くただただ、エンジンの軋む音と風と匂いを楽しんでいます。
  • ラカンの「前未来形で語られる過去」
  • 語り口のパフォーマティブ(行為逐行的)とコンスタティブ(事実確認的)
  • 記憶の二段階効果
  • アントン・チエホフ「胃が悪いということは、他の器官が健康であることをしめしている」
  • 「額に汗して働く」ことが「崇高」であると信じられた時代
  • 収穫逓減の法則
  • レバレッジドモデル(梃子のモデル)
  • チューリップバブル事件(17世紀オランダ、球根ひとつが労働者の平均収入の10倍になったといわれる)
  • 過去はまだ去っておらず、未来はもう来ている。これがぼくがフィジカルに感じ取っている「時間感覚」です。
  • コーナーリングの要諦
  • クリッピングポイント
  • 気の感応
  • 体術、杖術
  • 気の練磨
  • 身体のアラインメント(立て付け)
  • クラフトマン・シップ(職人の熟練)
  • 手沢(しゅたく)
  • ポストモダンは「プレ・モダン」への回帰というより、「太古的なもの」の甦りではないだろうか
  • 言葉―身体―貨幣
  • 「文学」、「武道」、「経済」
  • 独特だけどまとも
  • 頑固床屋政談
  • 居着き
  • 養老毅「逆さメガネ」
  • 大学とビジネス
  • アントレプレナー(起業家)
  • MBAホルダー、MOTホルダー
  • コストカットコンサルティング
  • 日本の教育機関や大学が作り出せる競争力のある差異とは何か
  • どう考えたって、世界の趨勢に従って実学優先なんていう結論にはならないでしょうが
  • 一発逆転
  • むかしもいまも、起業家は自立の物語の語り手で、修羅場とリスクが退屈しのぎになるよなメンタリティの持ち主に違いありません
  • リスクヘッジ(自らのポジションは安全なところに身を置きながら、得だけをとろうということ)
  • 人間の本源的なネーチャーと齟齬をきたす
  • つまり大切なのはゴールではなく、プロセスだと
  • ショートカットビジネス(これが金融の本質でしょ)
  • ショートカットするなよ、途中が面白いんだぜ
  • トランザクション(取引)サイクル
  • マインドセット
  • K−1の武蔵さんの即答「打たれたときは、それをもう忘れて、二つ先のパンチが相手にヒットしているときの感じ」を想定して、 それを「現在」だと思う
  • パブリック・スペースでほっこりくつろぐ
  • リナックス・カフェのスタッフたちは、許容度高くて、よかったですね
  • 独創性と学術性
  • 『ため倫』
  • 「オリジナルであること」、「説得力を持つこと」、「独特であること」、「他者の理解と承認を取りつけられること」
  • 考究
  • 論拠
  • 認識論的なフレームワーク(言語やイデオロギーや宗教やコスモロジー)
  • 「私の経験」や「私の確認」だけでは私の知見の汎通性は担保できないわけです
  • 知解可能性(真理)
  • 「追試可能」、「反証可能」
  • 可動域のひろい共同的な知
  • 科学的信認
  • 「学術的である」=「永久不変の真理の審級」
  • そのつど揺れ動き、時代とともに変化してゆく「共同的な知」のパラダイムに(それがマジョリティに支持されている「物語」で あることを知りつつ)あえて踏みとどまる「節度」のこと
  • 「マッド・サイエンティスト」
  • 自立している人(他の人たちから、ことあるごとに頼られたり、忠告を求められたり、決定権を委ねられたり、責任を背負わされる人)
  • 諄々と説く
  • 「腑に落とす」
  • その論文の理非にかかわる理解と承認
  • 自分が読者に想定されていないテクスト
  • 三行読んだだけでわかる
  • 文章の「息遣い」というか「温感」というか「肌理」
  • 「体感を信号的に送受信する」ということは、べつに相手の身体に触れていなくても可能だ、ということは武道の修行をながくやってくると だんだんわかってきます。
  • 「居着き」
  • 体術の場合、たいせつなのは技を「かけ終えた」ときの体感(骨や筋肉の状態、呼吸の伸び、気の通り、 相手が畳に身体を打ちつける受身の音まで)をリアルかつクリアカットに「想起」すること
  • 身体が「現在」に居着いていると者と、「未来」を先取りしている者とが接触
  • 活殺自在
  • この「時間的な居着き」を「未来の感覚」によってコントロールするということ
  • アポリア(難問)
  • 危機的状況に際会したとき、人間のとる行動は二つに分かれる。ひとつは「身体感受性を最小化して、身体を石化し、嵐が過ぎるのをやりすごす こと」、いわば「時間を止める」やりかた。ひとつは「身体感受性を最大化し、身体を液状化し、嵐に乗じること」、 言い換えれば「時計を先に進める」やりかた。
  • 正しい生存戦略
  • 「外傷的現在」、「まだ来ない未来」
  • 「変わらない自己」という物語
  • 「凡人とは、進歩するけれども、進歩する仕方がいつも同じ人」=「つねに同じ仕方で答える人間」
  • 「天才とは、進化する仕方そのものが進化する人」=「そのつど答え方が変わる人間」
  • 「自己同一性」の神話=「凡人でありたい」との言明
  • 一億人の「自分探し」=一億人の「凡庸」
  • 「危険」、「risk(統御できる危険、既知の危険)」「danger(統御できない危険、未知の危険)」
  • ある国の指導者たちがMBA的な知性によって占められ「デインジャー」に真剣に対処できる知性を涵養することの重要性を忘れつつある
  • 大学人で「実学」ということをお題目に掲げる人間には。「半ビジネスマン」みたいな感じの人間が多いのです
  • 半チクな説教
  • 大学が「実学」として教えるような知的リソースの大半はその定義からして現実に対する「絶対的な遅れ」をキャッチアップできず、 つねに「後手に回る」ほかないのです。
  • 大学が教えるべきなのは、目先の「実学」ではなく、ながいスパンでの「汎用性」だと僕は思っています。
  • 哲学だって、歴史学だって、文学だって、人間はそれなしでは生きてゆけない幻想と物語についての学なんですから、 最強の「知的ウェポン(武器)」だと思います。
  • でも、学生や親たちがとりあえず望んでいるのは、「実用的な専門知識」と「就職に役立つ資格」なんですよね。 悲しいけれど、それが日本人が大学に期待している「最大限」なんですよね。
  • ぼくは基本的に「戦略」的思考が嫌いなんです。なんか下品というか「美学」がないんだな。
  • 「ひんがしの のにかぎろいの たつみえて かえりみすれば つきかたぶきぬ」
  • 古代的なものの甦り
  • けだし、名言
  • 好天型の経済モデルは、雨天のときに役立たない
  • 必要は供給の培地
  • 欲望は他者の欲望を欲望する
  • 無間地獄的
  • 一万円は蕩尽のための「機会」の価格
  • 「欲望に点火するようなサプライサイド」=「お洒落なライフスタイル」、「究極の贅沢」、「できる男」、「自立した女」
  • 他者からのリスペクト
  • ステイタスの象徴
  • リスペクトのイコン
  • 羨望のイコン
  • 「敬意」の「力の象徴」による計測
  • 「競争」原理
  • ディベートで相手を論駁するのではなく、双方で譲るということを考えるというような「知」のあり方
  • 「貧の意地」(太宰治『新釈諸国噺』)
  • 未来を現在の中に絶えず繰り込んでゆく
  • 時間の外延を現在の中に持つ
  • バイパス形成能力
  • 消費主体の「数的拡大」による総需要の拡大
  • 平仄
  • お上、お頭、片腕、懐刀、腹心、股肱の臣、手下
  • 「頭が望むもの」と「手が望むもの」
  • 致命的な趨勢を糊塗する弥縫策にすぎません
  • 共−欲望
  • 共−身体
  • 袖触り合うも多生の縁
  • 縁は異なもの味なもの
  • 会社を「軍隊」のアナロジーで語り、「戦略」と「戦術」で競合を出し抜くといったゲームを好むものにとっては、 会社はひとつの収益機関であり、その機能の最大効率化だけが問題となります。
  • タブル・ミーニング(今わかっている意味以外の「もう一つの意味」を読み出そうとする志向)
  • ラカン「子どものディスクール(言説)」(「あなたはそう言うことによって、何を言いたいのか?」という「子どもの問い」を つねに他人に差し向けることを「知的なふるまい」だと思っている)
  • 相手を出し抜いたつもりの人間はつねに出し抜かれる
  • 「人間はつねに本当に言いたいこととは逆のことを言う」と思い込んでいるこの疑り深い「子ども」に多少でも知恵があれば、 彼に問われた相手が「本当のことを言って人を騙す可能性」にもただちに思い至るはず
  • 「子ども」とは、実は人間が「未知のもの」に向き合うときに踐むべき「適切な作法」のこと
  • パリ=ダカール・ラリーでミネラル・ウォーターにマジックで自分の名前を書いてしまう日本人
  • アメリカ発「デオドラント」運動
  • 「私有主義」イデオロギー
  • 排除のディスクール
  • 「脳を割る」
  • 「盲信」と「疑いながら信用すること」
  • われは傷口にしてナイフ(ボードレール)
  • アンビヴァレント(両義的)
  • オブセッション(とりつかれ)
  • 「まあ、かたいこといわんと、お茶でも飲もうや」
  • ローマクラブのレポート『成長の限界』
  • デルメディコのダブル・スタンダード(「知的訓練を受けた賢者」と「受けていない大衆」の峻別し、形而上学的な宗教批判は「知的訓練」を受けていない大衆に ゆるされない」)
  • 賢者の作法
  • 思考枠組みを固定化し、「オブセッションを強化するような『ディベート』やら『戦略』を語る人間のことを、ディメルコはきっぱりと 似而非哲学者」と呼んでいた
  • Crispな悪口
  • 賢者とは、「世界の無根拠性を看破した上で、それでもなお世界に意味があるとすれば、 それは私たちが創造しなければならない」と考える人のこと
  • 大衆とは、「世界には意味があり、それは自分ではない『誰か』が担保している」と考える人のこと
  • 似而非哲学者とは、「世界には根拠がなく、人間の行動を律するどのような超越的規範も存在しない」と考える人のこと
  • 有責性
  • 有責性の先取
  • 情理を尽くす
  • 人間の言葉とか知性といったものが鍛えられるのは、言葉が通じないという経験や、 知性が及ばない集団や共同体との交流ということの中にしかない
  • 「お金で買ったり」「力で強奪したり」「機略でだましたり」といったことがあまりに日常的になったために、 この基本的なマナー(「情理を尽くす」)が忘れ去られているように思える
  • 自らの太古的な身体が発している言葉を聞く能力が退化してきている
  • 「部分最適、全体不適合」
  • 「ベストプラクティス」なんていうのも、非常に部分的な知性の使い方
  • 居心地の悪さ
  • 「わたしの身体は、わたしの頭よりあたまがいい」(何の戦略も奇策もなく、ただただ生存への脅威となっているかもしれないものに対して、 身体の方がアラームを発する)
  • 行政改革の圧力という外圧
  • 大学のマーケットの急激な縮小という内圧
  • アメリカングローバリズムの急激な進展という風圧
  • こちら側の身体性になじまない
  • 大学あるいは教育機関の場というものは、経済合理性を超越した場でなければ、 経済合理性そのものを批判したり検証したりすることはついにできないだろうと考えられる
  • 11世紀ヨーロッパの大学の発生自体が、世俗法から免除された特権的なポジションで法を研究するものであったという歴史
  • とはいえ、大学もまた世俗の渡世を生き抜いていかなければなりません。まさに、自己責任で自助努力で世俗に生き延びながら 同時に世俗を超越するというアポリアを生きてゆかなければならないわけです。
  • 受験者パイの縮小、大学淘汰、大学生き残り、大学の変革
  • 大学とは、世俗と超世俗、経済合理性と超経済合理性、ビジネスと超ビジネスの境界に位置しているまさにアンビヴァレントな「場」
  • 大学独自の創発的な知
  • マーケティングなんてやったことのない大学が、まるで、落ち目の自動車教習所がやったような売れるサービス、商品の開発をあわててやろうと するもんだから、実学優先の学科が優遇されて、世間におもねるようなあたふたぶりをしめしている
  • いや、大学で実践的なものなんて本当は教えられないじゃないの、というのが僕の素直な最初の直感なのです。
  • 「プチ偉人」
  • 強い「反対給付義務感」
  • 反対給付(countre-prestation。人類学の概念のひとつ。 「何かを贈与されたら、それを別の誰かに贈与しないと、気持ちが片づかない」という感覚)
  • レヴィ=ストロースの反対給付の感覚の三つの水準(財貨・サービスの交換=経済、言葉の交換=言語、女の交換=親族)
  • 自分が何かを達成したときに、それを「獲得」であると感じず、「贈与」であると感じることができる能力、それをレヴィ=ストロース は「人間性」と名づけた
  • その意味ではいまのぼくたちの社会に蔓延している「サクセス志向のイデオロギー」というのは、人間がだんだん「人間でなくなる」プロセス と言えるのかも知れません
  • 一宿一飯の恩義
  • 古典派侠客
  • 不快な隣人
  • 不快な隣人と共生すること
  • だんだんといろいろなことが億劫になってきて、まあ自然に定まってくるような習慣にはそのまま乗っかるのが楽でよいね。
  • フラッパー(おてんば娘)
  • スチューデント・アパシー
  • 「知に働けば角が立ち、情に棹させば流される」
  • 当為
  • 大学の役割は「知を作る研究」と「知を伝える教育」と「知の活用の道を開く社会貢献」である(江崎玲於奈氏)
  • 「あたたかい風とあたたかい家はたいせつだ」(吉本隆明)
  • 「ひともいえもくらいうちはほろびはせぬ」(太宰が描いた実朝)
  • 「ここに難問あり」ということを示す“アンダーラインを引く”ということがほんらいの大学の責務ではないか
  • アジール(逃れの町)としての大学
  • 馴致
  • 疾風怒濤(シュトルム・ウント・ドランク)
  • 知とは本質的に自己否定な契機を内包している
  • 「自分のバカさの検出を、自分の正しさの証明よりも、優先的に配慮すること」が知性の個人的な定義ですが、
  • 「鉄棒曳き」的な嫌われ者セクション
  • 自己点検・自己評価というのは、いわば自動車の仕業点検のようなもの
  • いまの大学教員たちは、総じて、「知識」はあるけれど「知性」はないというきびしい社会的評価をもうむっています
  • 「三日やったらやめられない」大学教員の既得権にあぐらをかいて、
  • 査定と逸脱
  • ピア・レビュー(同業専門家による査定)
  • 真正性、引用の適切性
  • 査定可能な主題
  • ある時代の学術的パラダイムを転覆させるような革命的知見は、 つねにその時代の学術的パラダイムにおいては「査定不能」なかたちでしか登場しません。
  • 大学に残って好きな研究をするためには、とりあえず「査定可能な研究」をしなければならない。「査定不能」の研究主題に 取り組むためにのポストを得るためには、まず「査定可能」な研究主題で成果をあげなければならないんです。
  • この矛盾が研究者の「淘汰圧」として機能しています。
  • ユニークな研究者は構造的に研究の場にはなかなか残れません。
  • ほんとうに個性的な人というのは、たいていな場合、自分が「変わり者」であることにさえ気づいていないものですから。
  • ぼくが大学で教えていることのは、「まっとうに生きること」とか「分をわきまえること」とか「筋目を通すこと」とか 「ディセント(decent)であること」といった基本的なマナーだけです。
  • 岩井克人『貨幣論』、『ヴェニスの商人の資本論』
  • 起源にかかわる問い(「貨幣とはなにか?」、「資本となにか?」、「市場とはなにか?」、「交換とはなにか?」)
  • なぜアメリカは「反知性主義」の風土を作り上げてきたのか
  • 200X年劈頭から
  • 帯状疱疹
  • 「雨の日もあるさ」という認識があればこそ、「学ぶ」ということも、意味を持つのだということだと思うわけです。
  • 無聊をかこっている光景
  • 時間が止まったようなカフェ
  • 白皙の青年が嘆息し、
  • 町から退廃が消え、物語が消え、機能的なだけのオフィス
  • もはや大学には、無為と倦怠の中で思想や文学に惑溺する学生に場を与えてくれるなんていう猶予は許されない。
  • 荒っぽい言い方をすれば、現実的で、ショートタイムに結果を出せる、喫緊の課題に対して大学は成果を出さなくてはならない。 ひとつの「目的」を持ち、ひとつの「役割」を演ずることが要請されるようになった。
  • まあ、ひとことでいえば、ビジネス系、理科系、実学優先で行くぞ、「大学の自治」とか「学の独立」などというお題目の下で 遊んでいるひまはねーぞ、というビジネスの論理が大学に導入されたということだ。
  • アメリカン・グローバリズムが世界を席巻し、「知」の役割、「商」の倫理、「人」のふるまいを、世界レべルで比較可能、 交換可能なものに書き換えようとしている。
  • 「理解可能」、「比較可能」、「交換可能」
  • 「反知性主義」=「世界競争力」、「競争優位」、「産学の連携」など
  • 「知性」そのものが「知性」の脆弱性を超えてゆく、つまり知性の再定義が必要になる
  • 知識について関与せずに生き死にした市井の無数の人物よりも、知識に関与した人間には価値があり、なみはずれて関与したものは、 なみはずれて価値があるというようにひとびとが幻想することは、自然なことであるが、これはあくまでも幻想の領域に属していることだ。
  • 市井の片隅に生き死にした人間のほうが、判断の蓄積や体験の重さに関して単純でも劣っているわけでもない。千年に一度しか あらわれない巨匠と、市井の片隅で生き死にする無数の大衆のこの「等しさ」を歴史はひとつの時代性として描き出す。
  • 幻想論
  • 「たいしたもんだね」は、簡単に「偉そうなこと言ったて、それが何の役に立つんだ」といった知への侮蔑に転化する可能性を残している
  • どんな崇高なビジネス哲学も、結局は「で、儲かるの?」というような身もふたも無い結論に集約され、その結果に責任を持たなくては何も 発言することはできないのが、ビジネスの世界です。
  • 「自己否定の契機」、「自己の知性の限界への配慮」(「知性は、知性そのものの限界を知るという場所で最も指南力を発揮できる」 「現実は、その背後に起源に対する考察や、採用されなかった理論や、 運動を捉えようとする努力というものがただひとつの歴史として表出される他はない」)
  • 言葉というものは、言葉が通じないところでしか鍛えることができない
  • 知性が鍛えられるのは、知性を必要としない人々の間で孤立するしかないような場所であり、知性とは無縁の功利性や、 逐行性を問題にしなければならなら場所でしかない
  • 経済活動って、本質的にゼロサムなんじゃない
  • 誰かががんばって資産を形成するたびに、どこかで誰かがその分だけ貧弱化している。
  • 代償行為
  • 人間は変わります
  • 定点観測点
  • 「宝島」に出発する人間と、港で見送る人間
  • 人外魔境
  • 佳話
  • 「どこにも出発しない人間」たちの社会を「冷たい社会」と名づけた(レヴィー=ストロース)
  • 野生の思考
  • マルクスって「勉強する」ものじゃなくて、「思考に活気を与える」もの(レヴィー=ストロース)
  • 知的なtour de force(力業)
  • 「計量できる」とはどういうことか
  • 机上の思想は、一歩表にでると「ボロ負け」の思想
  • 街頭でも、「そこそこ使い物になる」ような思想
  • 学校という場所の本来の機能は、「家庭という想像界」と「市場社会という象徴界」のあいだを架橋する「中途半端な場所」
  • 対旋律
  • 美は乱調にあり
  • インプロゼーショナル(即興的)
  • 快刀乱麻を断つといった風情
  • 「髭を剃りなさい。男の本質はマザーシップだよ」(太宰治から吉本隆明への言)
  • 「無学の人」
  • アメリカ文化の特色は、きわだって「父性的」な社会であって、「マザーシップ」の価値が非常に低くしか評価されていない
  • 「マザーシップ」=「母船」
  • 「母性」=「マザーフッド」
  • ホスピタリティ(飢えている人に自分の口にあるパンを与え、渇いている人に自分がのみかけている水を与えること)
  • 底知れぬ「マザーシップの人」(男性的な哲学を語るレヴィナス老師と秋霜烈日のすさまじさを発する多田先生)
  • 90年代以降のハリウッド映画のヒーロー(「眉をひそめ、口をへの字にまげ、烈火のごとく怒り、ドアをばたんと閉め、 電話をがちゃんと切り、男をはり倒す」というふるまいを「自己表現」の仕方とする)
  • 「ゲイ」と「じいや」(アメリカでのマザーシップの担い手)
  • アメリカでは、「美術関係」と「現代詩関係」者はまず例外なく「ゲイ」だということになっている
  • 劣等男子
  • グローバリズムが「アメリカによるアメリカの否定」だと思うのは、アメリカの魅力は徹底的なローカリズムであったはずだから
  • 屹然
  • 管見の及ぶかぎり
  • 墨守
  • IT成金やVCの跋扈するメロンパーク
  • 欣喜雀躍
  • 久闊を叙した
  • 秩序紊乱
  • 困惑と逡巡
  • 多様性に対する不寛容、増殖する異教徒に対する不寛容の前景化
  • 「ルイジアナ」(ルイ14世に由来)
  • 南部に多い「なんとかヴィル」(フランス語のville(街))
  • 「ハリー・サナダ」「デューク・サナダ」「ヘンリー・サナダ」(真田広之のハリウッド名)
  • アメリカの上下院議員の14%しかパスポートを持っていない
  • 「外国になんか行かない」=(米国の)政治家としての見識の高さ
  • アメリカ諸国連合(アメリカ「合衆国(合州国)」は、誤訳)
  • 学齢期
  • ステートごとに法律が違い、ステートごとに軍隊を持つ
  • 「テキサス国軍」
  • 「掟破り」、「怖いもの知らず」、「われらが範とすべき偉大なる悪童の先輩」=養老毅
  • 成功体験
  • 読売ジャイアンツが「常勝」というオブリゲーションを背負い、 人事、戦略、戦術のすべてがこの「常識」というオブリゲーションに呪縛されている
  • 仰木監督「ゲームってのは、勝ったり負けたり、負けたり勝ったり、勝ったり、勝ったり、勝ったり、負けたり、負けたりでいいんだよ」
  • 仰木は、選手たちを勝ち負けという桎梏から開放し、居つかず、こだわらず、白球に向かう、という身体性に立ち戻ろうとした
  • あえて脱線
  • 人間は死ぬから「生きる」ということの意味やありがたみや愉悦がわかるわけです。
  • 人間が人間であるのは、人間の世界の「外側」を「知らない」からであり、「知らない」ということを「知っている」限りにおいてです。
  • 現代の日本も、アメリカも、けっこう「病んでいる」
  • アメリカン・グローバリズムに代表される「無時間モデル」の病症
  • 「資格志向」
  • 若い人たちがこういうデジタルに表示された資格や成績にこだわる最大の理由は、 「人事考課が機能しなくなっている」せいではないでしょうか
  • 暗黙の合意ができている場合は、学歴やら資格やら点数やらはもとより不要のものです
  • 誰にでもわかる「数値」を人間的価値の指標に取ることは推奨される時代というのは、人間の「中身」についての判定(それは久しく、 「その場にいる全員にとっての暗黙の了解」でした)が怪しくなってきた時代だということ
  • これまで、人間についての判断の根拠になってきたのは、「データ」ではなく、むしろ「逸話」です。
  • 善意の大量発生、異常発生は、人が生きてゆくために必要な基本的な汚れ、弱さ、悪意といったものを破壊してしまう可能性がある
  • 「アメリカ人のように流暢な英語」と「小学生のような作文」
  • 「戦略思考」と「ゴール思考」というふたつの合理的、機械的な考え方が一種の思考停止であることを解き明かそうとする
  • 耕さない田んぼが環境を変える
  • 不耕起栽培(稲を野生化させて栽培する技術)
  • 冬季湛水
  • コンテンツ重視
  • 夏目漱石「『方丈記』の英訳」
  • 「理解」より「恭順」
  • 「理解」に先立つ「諾」の返答
  • 最先端のビジネスロジックと血液型信仰はじつは双生児
  • かれら(オタク)にとっての価値、つまり差異は、イデオロギーや階級や貧富といった誰の目にもわかるような大きな差異ではなく、 非常に微細な差異を見分けること
  • 寸毫も信じる気持ちはない
  • アメリカナイズされたビジネスマンと話すと、必ずといってよいほど出てくる仮説→検証というロジックのことです。 ビジネスとは、まずビジネスモデルという仮説をたてて、それを検証してゆくことがビジネス遂行の意味というやつですね。
  • 欲望を充実させるためにお金があるのではありませんよね。お金が欲望を喚起するというのが本当のところだろうと思います。 かくて、お金のためだけに働くひとが職場に蔓延することになります。
  • 「よく分からない」というエージングプロセス(成熟過程)を許さない時代
  • 太古の問い
  • 人間の知性だけが持つ「何だか分からないもの」というカテゴリーを当の人間たちが廃棄しようとしている
  • これは、要するに「私はサルになりたい」と言っているのと同じじゃないか
  • 日本人の「常識」に登録された
  • 「こころ優しい日本人」
  • 自己責任論
  • 「エリートは偉い」という通俗的な価値観
  • 女性が「男性化」し、パワーエリートとして社会的なリソースを独占することを勧奨することのどこがすばらしい社会理論なのか、 ぼくには実はさっぱり腑に落ちないのです。
  • 権力とか威信とか名誉とか、そんなものにいかほどの価値があるんでしょう
  • ぼくが誇れるのはほぼ唯一の社会的リソースは「誰に向かっても、好きなだけ悪口を言う自由」ですけれど、 それを多くの男性は所有していません。
  • ボーヴォワールは、この社会のすべて価値あるものには「男性性の印が刻印されている」と言い切りました。
  • ぼくはこれが現代フェミニズムの「最初のボタンの掛け違い」じゃないかと思っています。
  • 女性には女性固有の「対抗文化」があり、それがこのばかばかしい男性中心主義社会のなかで人間たちが傷つき壊れてゆくのをなんとか 防止する人類学的に重要な役割を果たしているとぼくは考えています。
  • どんな組織においても、その組織の中で能力を認められ、出世を果たした人間は、その組織が「正しく機能していない」と言い切ることには 抵抗を覚えるはずです。
  • 「私を入会させるようなクラブには入りたくない」と言い切ったのはグルーチョ・マルクスですが、 こんなことを言えるのはグルーチョだけです。ふつうの人は「私を入会させるクラブこそが入るに値するクラブだ」というふうに考えてしまうものです。
  • 「お母さん」的なエートス
  • 性役割が「内面化する」
  • 学界的サクセスの欲望
  • 「おじいちゃん」化しちゃった女性
  • 「女性がみんな男性化しちゃった社会」なんか、ぼくには少しも愉しいものには思えません。
  • グローバリゼーションは、多様な文化、多様な価値観の一元化の流れのこと
  • 傍目八目
  • ワーディング(言葉づかい)
  • コミュニケーテュイブ(交話的)よりコンペティティブ(敵対的)
  • 「戦略なしで挑んでいては損をする、ババをつかむ、馬鹿をみる」という信憑がいつのまにかこの国の人々の精神の中に棲み付いた。
  • 戦略なんていらないよというビジネス論をぼくは寡聞にして知らない
  • バランスシート
  • アセット(信用)
  • インビジブルアセット(見えない資産)
  • いみじくも
  • 懇願、誇示、恫喝、詐術、呪詛、卑下、交換
  • 學而時習之、不亦説乎、有朋自遠方来、人亦楽乎、人不知而不チ、不亦君子乎
  • 虫の好かないやつだけれど、筆は立つ
  • 採算不芳部門
  • 諧謔性
  • たたかう優雅な野蛮人
  • 寿ぎたくなる
  • 武道に通じたご両人
  • 武道というものは、「一瞬」の激しさにおいて詩に通じる。
読後感:今期、一番時間をかけて読んだ本です(ちょろちょろ読んでは、ひと休み。またぞろ読んではひと休み、みたいにひと月ほど)。 非常に味わい深い本でした。本書は僕にとって、“ちょろちょろと味わいながら旅先で読んでみたい”一冊となりそうです。 このような本を発見できたことは、実に実にうれしい限りでございます。“巨人”たちって、まだまだいらっしゃるものですね。 また、近いうちに(今度の夏休みあたりにもう一度、)読み返してみようと思います。
○『ワープする宇宙』 リサ・ランドール著(2007年7月16日読了)
  • 余剰次元
  • パッセージ(経路)
  • 準結晶(高次元の結晶構造の射影)
  • モデル構築(コンセプトとアイデア)
  • クラインの説(余剰次元は円状に巻かれている)
  • トーラス
  • 逆二乗則と重力
  • マルチバース(多重宇宙)
  • 慣性質量と重力質量の等価原理
  • パリティ対称性(空間反転対称性、p対称性)
  • 「ひも理論」のプリンストン大と「モデル構築(素粒子理論)」のハーバード大
  • M理論
  • Dブレーン(D=数学者ぺーター・ディクレルにちなむ)
  • ADDモデル(アルカニ=ハメド、ディモポーロス、デゥヴァリ)
  • 大きさが(ほぼ)1ミリメートルもある次元
  • ADDブレーンワールド(φ0.1mmに巻き上げられた円筒世界)
  • ADDが論文を書いた1998年には、ニュートンの逆二乗則がおよそ1ミリメートルの距離までしか検証されていなかった。 つまり、実際に余剰次元に1ミリメートル近くの大きさがあったとしても、誰もその証拠を見つけることはなかったろう。
  • 1998年に時点では、1ミリメートルより短い距離で重力について何かを知ることは不可能だったわけだ。
  • 階層性問題
読後感:「1ミリメートル以下の距離で万有引力の逆二乗則が成り立つかどうか、分からない」っていうのは衝撃的なくだりでした。 そしてまた、「いまだに誰もそれを測定できていない」というのも、僕にとってひときわ新鮮な事実の発見でした。 「そんなん、まじかよ」、みたいな。 「AFMの動作原理を全く知らなくたって、その測定なら誰でも行える」というコンビーニエントな今の時代でも、ですよ?!・・・。 AFM法や光干渉法などを用いて、微小ギャップ間の万有引力を測れないものでしょうか?、うーむ。 門外漢なので真価は分かりませんが、ADDモデルの行く末、何だかおもしろそうだ。 うすっぺらな評論家より(7月16日放映『カンブリア宮殿』の東大総長・小宮山先生の言を戒めとして、拝借仕り候)
○『聖餐城』 皆川博子著(2007年7月15日読了)
  • 「オランダ共和国」と「スペイン領ネーデルランド」
  • コーへン(ユダヤ教司祭)
  • 督励
  • 隠しインキ
  • カネパリウス『インキについて』
  • 秘文字
  • 州数学監(ケプラー)
  • 地政学
  • 知遇を得る
  • 薔薇十字団(ローゼンクロイツ)
  • 拍車
  • 肯じない(がえんじない)
  • 閲する
  • 経世の理
読後感:神聖ローマ帝国、ハプスブルク家、ユダヤ資本家の勃興、興亡を描いた近世西洋史の大作でした。 コーヘン家が実在したユダヤ資本家かどうか、浅学の私は存じておりませんが、 アムステルダムやロンドン、ドイツ各都市等での金融(銀行)、証券取引(所)の形成に深く関わった一族なら、 赤い盾一族ことロスチャイルド家が、まず真っ先に頭に浮かびます(あるいは、ロスチャイルド家をモデルにしたのかな)。 経済においても、学術においても、エンターテインメントにおいても、 世界各地に、いかなる時代にも、かくも卓抜した人材をひとつの民族が輩出し続けるられるのか、 これもまた不思議であり、歴史ロマンを感じずにはおれません。
以前、インターシティのコンパートメントでたまたま同席したドイツ人夫妻と車内の会話がはずみ、 終着のハンブルグでホテルを探してもらったり、ブラームス・ケラー(ハンブルグ大学の横手にあったかな)で、 食事をご馳走してもらったりしたことがありました(確か、奥方がハンブルク大学で心理学を学ばれた心理学療法士で、 ご主人の方が手作り家具職人の方でした)。ご両人ともユダヤ系の方で、さまざまな歴史的なお話をお聞かせ下さり、 またハンブルグのシナゴーグ跡(第二次大戦時に焼失)を案内して頂いたりしました。杉原千畝の功績から、 一般のユダヤ系の方々が、日本人に対して非常に好感を抱いて下さっていることを、 このとき身をもって体験することができ、非常にうれしかったことを覚えています。
○『ゲーテの言葉』 一校舎比較文化研究会編(2007年7月12日読了)
  • 鉄の手のゲッツ・フォン・ベルリヒンゲン
  • シュトルム・ウント・ドランク(疾風怒濤)
  • ゲーテの描いた「色彩環」
  • 自分に命令しないものは、いつになっても、しもべにとどまる(『穏和なクセーニエ』より)
  • 自負しすぎない者は、自分で思っている以上の人間である(『格言と反省』より)
  • 井の中の蛙、大海を知らず
  • 豊かさは節度の中にだけある(「クリストフ・カイザーに宛てた手紙」より)
  • 知足
  • 不可能を欲する人間を私は愛する(『ファウスト』より)
  • 天才が天才としてなすことはすべて無意識になされる(「フリードリヒ・シラーに宛てた手紙」より)
  • 人間の過ちこそ人間をほんとうに愛すべきものにする(『格言と反省』より)
  • 重要なことはどこまでも、見知らぬもの、見知らぬ人に心をふれてみることだ(「アウグスト・フォン・ゲーテに宛てた手紙」より)
  • 同じ場所に三日以上は留まらない(『ヴィルヘルム・マイスターの遍歴時代』より)
  • 経験とは、人が経験することを望まないことを経験することにほかならない(『詩と真実』より)
  • ゲーテはどんな書物も学問の権威もまず疑ってかかり、知識を丸呑みすることはありませんでした
  • ファウストが命がけで得た答えは、「真実の瞬間は、知識でも支配でも成功でもなく、全力を傾けた“生”にこそある」
  • 「生きること」それ自体が何よりも美しい真実
  • 数人の人たちがそれぞれ満足している場合には、彼らが思い違いをしているのは間違いない(『格言と反省』より)
  • 人間を愛すべき存在にしているのは、その過ちや迷いである(『格言と反省』より)
  • 美しいものは、世界のなかで孤立していることがあるものだ(『格言と反省』より)
  • 無知な正直者が、しばしば、たくみなペテン師の悪事を見抜く(『格言と反省』より)
  • 自然のどんなに重大で顕著な現象でも、そこに立ち止まってはならない。それに執着してそれだけを眺めるのではなく、 自然全体を見回して、似たものや親近性のあるものがどこにあるかを問わなければならない。(『色彩論』より)
  • あらゆる技術をいかすのは最終的には精神だけだ(『色彩論』より)
  • 日々は迷いと失敗の連続だが、時間を積み重ねることが成果と成功をもらたす(『格言と反省』より)
  • 石の上にも三年(大きな目標は、そう簡単に達成できるものではない)
  • さしあたり必要なものが豊富にある地方では、今日あったものは明日もあるだろうとのんきに構え、のんびりと苦労もなくなっていけるような、 幸福な性格の人間を作る(『イタリア紀行』より)
  • 私たちに対して反論がなされるとき、その声の強さに圧倒されることを恐れる必要はない(『格言と反省』より)
  • 大声でものを言う人は中身が小さいのです
  • 世紀は進むが、人間は初めからやり直さなければならない(『格言と反省』より)
  • 外国語を知らない者は、自分の国の言葉についても何も知らない(『格言と反省』より)
  • 愚かな者も賢い者もどちらも害にはならない。半分ばかな者と半分賢い者がもっとも危険である。(『親和力』より)
  • 自分自身の心を支配できないものにかぎって、他人の意志を支配したがるものだ(『ファウスト』より)
  • すぐれた人格を感じ取り、それを尊敬するためには、自分自身もまた、それなりの者でなければならない(『ゲーテとの対話』より)
読後感:ゲーテ先生は、愛すべきお茶目な人だったみたい。完璧すぎず、堅物すぎず、されど「完全」となることを果敢に目指す、みたいな。 「カンペキー」なんて思った瞬間に、「はい、君は打ち止め」、みたいな。ご用心、ご用心。
○『隠れたがる自然』 シモン・マリン著(2007年7月11日読了)
  • ニュートンの「時計仕掛けの宇宙」
  • パラダイムシフト
  • シュレーディンガーの哲学的論考
  • 経験批判論
  • マッハの哲学体系
  • 一部が水中に入っている鉛筆を考えてみよう。折れているように見えるが、本当は真っ直ぐであることは、触ってみれば検証できる。 マッハはそうではないと言う。水中の鉛筆と水から出ている鉛筆は、二つの異なる事実である。水中の鉛筆は、見た目の事実に関する限り本当に折れ 曲がっているのであって、水中の鉛筆についてはそれがすべてである。
  • アインシュタイン「理論が、われわれが何を観測できるか決める!」
  • 彼(アインシュタイン)は、われわれの知覚している世界、現象化界がほとんどわれわれの心の産物であるという、 カントの発見を理解していた。
  • 実在論と局所性が結びついた「局所実在論」
  • 機械論的な世界像
  • ボーアの相補性
  • 重い物体がゆっくり動いている場合、その「運動量」は軽い物体が速く動いている場合と等しいことがありうる
  • 観測過程にある量子系と孤立した量子系の関係
  • 存在論的観点(在ることに関わる)と認識論的観点(知ることに関わる)の違い
  • 存在論的解釈では、「この電子は正確な位置と正確な運動量を同時にはもたない」となる。一方、認識論的解釈では、 「電子の位置と運動量の同時的な値を知ることはできない」ということになる。
  • 「量子領域と日常世界の境界領域」、「量子系」か「通常物体」か
  • もの性
  • シュレーディンガーが挙げた成果は、ニ、三週間にわたり極度の集中力を維持できるという能力の賜物だった。
  • 量子物理では、観測は創造的なのである。
  • ハイゼンベルグ「科学の根は会話にある」
  • アインシュタインを典型とする別のタイプ、孤高の物理学者もいる。この独立独行タイプの人は、創造活動する時間の多くを 言葉から遠ざかり、思考の深みへと進んでいくことに費やしているようだ。その本質は非言語的世界であって、 言葉はその創造過程を構成する要素になっていない。言葉が使われるのは、非言語的思考の成果を表現し、伝達するときだけである。
  • ポール・ディラックは、そうした孤高の人であった。
  • ディラック方程式とスピノル
  • 内なる声が私に、これ(量子力学)は本当のヤコブではないと告げる。(アインシュタイン)
  • 知的討論
  • 思想の深さ
  • ボーアとアインシュタインの論争の研究には、もう一つの特徴があった。すなわち、知的論争につきものの、あのエゴがぶつかり合って感情が むき出しになる見苦しい光景を我慢しなくてすむのである。
  • リアリティーの要素(アインシュタイン)
  • EPRの思考実験(アインシュタイン、ポドルスキー、ローゼン)
  • レオナルド・フィボナッチ(1202年にヨーロッパに十進表記法を持ち込む)
  • 隠れた変数の理論(フォン・ノイマン、デイヴィッド・ボーム)
  • 「ベルの定理」、「ベルの不等式」
  • 対立カップル症候群(あらゆる機会を捉えて相手の言うことを否定せずにはいられなくなっている状態)
  • 選好性
  • GHZの実験(グリーンバーガー、ホーン、ジーリンガー)
  • 量子状態の収縮
  • カバー・ストーリー
  • イメージが創られる脳の部位つまり視覚野を研究する神経学者たちは、感覚刺激から脳のこの部位にやってくるのは 情報のだいたい半分でしかないことを発見したのよ。後の半分は脳の他の部位からやってくるんだって!
  • 客体化のプロセス
  • 視覚的イメージの私的世界
  • 「われわれは認識の主体を、われわれが理解したいと切に願っている自然という領域から排除します」(シュレーディンガー)
  • 客体の構築と自己の排除
  • 心身問題
  • 量子素事象
  • 量子観測は潜勢態から現実態への移行を引き起こす。
  • 孤立した電子は「可能性の場」である
  • プラトン『ティマイオス』
  • 永遠的秩序と時間的秩序の関係、プラトンの「英知界」、イデアの世界における秩序
  • 不変的存在の世界、生成消滅の世界
  • 円環の創造
  • 収縮とは潜勢態から現実態への転移
  • アルフレッド・ノース・ホワイトヘッド『プロセス哲学』
  • 英知の形相、バカの形相
  • 四次元連続体
  • ソクラテスがなったという「放心」
  • 一日中推論的論証を続ける、もっと「放心したようになる」
  • ときどきボーアはまるで阿呆みたいになって、そこに坐っていた。彼の表情が消え、四肢はだらりと垂れ下がり、 この男の眼に何か映っているかさえ怪しいだろう。こいつは阿呆に違いないと思うだろう。生命のかけらも見当たらない。ところが突然、 彼の中に輝きが立ち上り、それが火花を放つと、彼はこう言うのだった。「よし、わかったぞ」
  • なぜ、収縮は起こるのか?
  • 自然が選択する
  • プロティノスの「自然は観想する」
  • 収縮のない世界に住んだらどういうことになるだろうか?
  • 収縮の目的は、(宇宙を)単純化することにある
  • ディラック・コスモロジー:Q「収縮はどのように起こるのでしょう?」、P.A.M.D.「自然が選択するのです」、 Q「自然はいつ選択するんでしょう?」、P.A.M.D.「干渉の可能性がもはや存在しないときでしょうね」
  • コヒーレントな干渉を不可能にするほどの複雑さを生じさせる過程(デコヒーレンスに導く過程)
  • (シュレーディンガーの)客体化原理の適用限界
  • 収縮は量子力学の定式化の一部としては解明されていない。なぜなら、自然は本質的に客体化しえないものなのだから
  • 記号的(シンボリック)知識と親密的(インティメント)知識
  • 「原始的」で「未開」な伝統
  • アインシュタインの六年生からの宗教に関する質問に答える手紙「科学の研究に真剣に取り組んでいる人々はみな、霊が宇宙の法則の内に 現れていることを確信するようになります。この霊は人間の霊をはるかに越えているために、それに直面すると自分たちの力はちっぽけなものに感じざるを えなくなるのです」
  • 決定されているのは、現実的事実に対する確率の分布
  • 収縮が持ち込む不連続性
  • ヌーメナル(真の存在)
  • 我有化(把捉、プリヘンション)
  • デカルトの二分法
  • 階層化されたリアリティー
  • 何十億の銀河、銀河の中の何十億の恒星、その中の太陽、太陽系の中の地球、地球上の人間。 宇宙の中の人間の地位は、ほとんどとるに足らないものである。
  • (逆に、)ひじょうに小さな腺が人を生かしたり殺したりする。また一つのウィルスが死をもたらしたり、 快方に向かわせたりすることができる。
  • 一般的に言って、一人の個人のような比較的小さな存在が、社会や文明や惑星といった大きな存在に対して影響を与えることができる というのは、意識という存在があってのことなのである。
  • ターナー講演
  • 自我(エゴ)を自己(セルフ)と混同する
  • 主観−客観モードの超越
  • シラー「全体性のみが明晰へと導き 真理は深淵にとどまる」
  • 相補性の枠組みは、量子系への単一の記述を適用することの不可能性の発見である
  • 「ダーウィンの航海で出会ったフエゴ人は、小さなボートには驚いたのだが、 大きな船のほうは『どうということのないこと』とされた」という
  • 大統一理論
  • 多世界解釈
  • 波動とは、微細な「量子力」の作用によって粒子を導く「きょう導波(パイロット・ウェーブ)の一種であり、 その微細な力は「量子ポテンシャル」によって生じるのである(D・ボーム)
  • 局所性の破れ(光速度を越える)
  • GRWのアプローチ(ジラルディ、リミニ、ウェーバー)
読後感:量子力学もここまでくると、浅学の僕にはもはやそれは哲学の領域に思えてしまうほどに。 「波動関数の収縮はなぜ起こるのか」、またそれは「どのように定式化されるのか」、未開拓で魅惑的な研究領域は数あれど、 理論に向かない自分の鈍ら頭と日々のぐだぐだなお仕事は、それにかかずらうのを許さず、か。 こんな研究を日々の生業とし、またそれに「放心」することを許される人が、 この世界のどこかにいらしゃるのだとしたら、それは真にうらやましい限りです。
○『日本刀』 小笠原信夫著(2007年7月9日読了)
  • 刀は武士の魂
  • 鎌倉時代の「兵の道」と江戸時代の「武士道」
  • 「夫兵法という事、武家の法なり」(五輪書)
  • 今の若士共は出会の咄、金銀の噂、損得や家計困窮、衣装、色欲の雑談ばかり、と嘆いている(『葉隠』)
  • 「勇」、「忠孝」、「質素」、「礼儀」、「清廉」、「忍耐」
  • 『米百俵』
  • 刀は伊達にささぬ
  • おんたましひ研所
  • 直刀と唐太刀
  • 『天逆鉾』
  • 『栄花物語』
  • 懐剣、隠剣
  • 『吾妻鏡』
  • 弓矢は京にて捌かせ、刀剣は本阿弥に究めさせ、馬は馬喰の言に任せ、甲冑は奈良岩井家に仕立てさせる事
  • 可然物(しかるべきもの)
  • 刀剣極め所(本阿弥二百七十石)
  • 阿弥衆
  • 蒔絵の幸阿弥、金工の正阿弥、申楽・田楽・能楽の喜阿弥、世阿弥、能阿弥、観阿弥
  • 近習
  • 金象嵌
  • 阿弥=時宗系の僧形の人
  • 本阿弥の元祖妙本は菅原姓で、松田名で相州鎌倉に住む
  • 刀剣の研磨「麁研麿一日。焼ならびに中麿一日。精麿一日。(火火宝)一日。」
  • 「寝刃を合す」、「寝刃を引く」(切れ味の鈍った刀剣を研磨して鋭利にすること)
  • 「梅花を付けたるごとく」(刃文、鍛え肌の美しさ)
  • 「春のゆきのやうにかすみのかかりたるごとく」(地刃の境)
  • 剣相
  • 蕨手刀、立鼓刀(蝦夷と呼ばれた人々の用いた刀)
  • 「断つ」から「切る」へ
  • 「古備前正恒」
  • 「備前国友成造」
  • 受領名
  • 「左衛門尉」「右兵衛尉」
  • 「正宗」(相州鎌倉、破天荒で魅力ある作風をもつ)
  • 「正宗抹殺論」(明治時代)
  • 「沸の美」「川のせせらぎの煌めき」「天空の星の輝き」
  • 天才の作は「一代限り」
  • 没骨法の表現法、曜変、油滴など天目茶碗の美、正宗の沸のはげしい作風
  • 北条時頼より、初め重光の名を賜った
  • 頓悟(修行の段階を経ずに一挙に悟りを開く)、漸悟(順序を追って修行し、悟りを開く)(禅の言葉)
  • 「雪のむらぎえ」「耳形刃の特色」
  • 松皮肌、板目肌
  • 藤原氏を藤、菅原氏を管、清原氏を清(清少納言)
  • 北国物
  • 刀鍛治とは別だった槍鍛治、野鍛治(鉈、鎌)、大工鍛治
  • 刀(tau、カタナ=片刃、偏刃から転ずる)
  • 剣(両刃)
  • 塚原ト伝、上泉伊勢守、伊藤一刀斎、柳生石舟斎
  • 刀狩り
  • 三所物(小柄、笄、目貫)
  • 鶺鴒差し、掴み差し、突っ込み差し、落とし差し、閂差し、からめ差し(戦さの時)
  • 長曽祢虎徹入道興里
  • 「よく斬れる刀」、「業物である」
  • 名刀の条件「折れず、曲がらず、よく切れる」
  • 「奈良刀」「奈良物」=「安物の鈍刀」
  • たたら製鉄
  • 本居宣長「敷島の 大和心を 人問わば 朝日に匂ふ 山桜花」
読後感:購入後、積読していたのを忘れていて、二冊買ってしまった(また、やってしまった)。 惹かれてしまう本には、やはり何かの縁があるものだ。 さてさて、古代より砂鉄多き日本の風土で培われた“たたら製鉄”。 「そこから産み出された鉄の純度は、近代西洋製鉄をはるかに凌ぐものであった」、 と以前放映されたNHKのスペシャル番組で観たことがある。 当然、たたらの鉄で鍛えられた日本刀の切れ味も人類史上最高の切れ味を誇る刃物であった(ある)、とのこと。 これもまた「縮み」文化を代表する日本の伝統工芸技術の一つです。 「工夫」、「改良」を重ねがさねる「踏襲」の上に、類まれなる「精緻」、「精巧」に至る。 「日本的」とは、まさに日本刀造りにみられること、そのものです。この本を読んで、 永らく忘れかけていたけれど、 真綿みたいなもの(「たんぽ」っていうらしい。つけてる白い粉は砥石の粉末らしい。)でぽんぽんと刀の手入れを大伯父がしていたことを、 子どもの頃に見たのを思い出しました。沸(にえ)の景色を、今度じっくりと拝ませてもらわなくては・・・。
○『地球持続学のすすめ』 武内和彦著(2007年7月8日読了)
  • 持続可能性(サスティナビリティ)
  • サスティナビリティ学連携研究機構
  • サスティナビリティ学(地球維持学)
  • 内田ゴシック
  • 多くの学生たちは教授を「専門バカ」と決めつけていた。「専門バカ」とは、自分の専門分野のことしか知らず、 他の学問や世の中のことには無知な大学教員を揶揄する言葉であった。
  • 巡検(フィールド実習)
  • 鈴木秀夫『森林の思考・砂漠の思考』(循環的な森林の思考は仏教に、直線的な砂漠の志向はキリスト教に。 仏教の「輪廻」とキリスト教の「終末」)
  • 論理の飛躍が大きすぎて非科学的だと厳しく批判された。しかし、先生は、こうした批判にはまったく臆することなく、泰然自若としていた。
  • 植生
  • 上総アカデミアパーク
  • 学際研究事始め
  • ヤマトンチュー(本土人)
  • パイロットスタディ
  • ストックホルム大学は、地球温暖化研究の元祖ともいうべき、スヴェンテ・A・アレニウス(1859-1927)が教鞭をとっていた大学である。
  • アレニウスは、人間活動によって大気中の二酸化炭素が増加し、その濃度が二倍になると、地球の平均気温は5−6℃上昇すると予測していた。 驚くべきことに、彼の予想値はスーパーコンピュータを用いた最先端の地球温暖化予測と非常に近い。
  • 地球シミュレータ
  • ほぼ確実(very likely)
  • 人為起源である確率が90%以上
  • フォアキャスト、バックキャスト
  • 私たちはすっかりそのころ(=オイルショック)の教訓を忘れてしまっている。
  • スカベンジャー(ごみあさりをする人)
  • 循環経済に基づく和諧社会づくり
  • 同床異夢
  • 医食同源、心身一如
  • 『Sustainability Science』(Springer)
読後感:『熱力学』の教科書の活性化エネルギーの項目のところで必ず出てくるアレニウスが、 100年近くも前に、既に今日の地球温暖化を予測していたとは、卓見無比でございます。 シュレーディンガーもまた『生命とは何か』でDNAの存在を予見していたし、 優れた科学者のポテンシャルは、自然を熟知しているがゆえに、計り知れず。 翻って現代の万能科学者や、いずこに。
○『<節度の経済学>の時代』 内橋克人著(2007年7月7日読了)
  • 利が利を生むことをもって至上とする
  • 「今日のシステムの犠牲者は、第三世界の人びとと自然に他ならなりません。このシステムが自ら機能するために、 今後もそれらの人びとと自然は容赦なく搾取されつづけるでしょう」(NHK番組『エンデの遺言』)
  • 世界市場化(グローバライゼーション)
  • 資本移動のモニタリング(監視)
  • ディスクロージャー(情報開示)
  • マッド・マネー
  • 「パン屋でパンを買う購入代金としてのお金と、株式取引所で扱われる資本としてのお金は、二つのまったく異なった種類のお金である」 (エンデの言葉)
  • 共生セクター、競争セクター
  • その日がくるまで他人事
  • 高度失業化社会
  • ジョブレス・マジョリティ(職なき多数派)
  • 労働の「吸収圧力」、その反対に、強い「排斥圧力」
  • 「人間をムダにする」社会
  • ハッピー・バランス(幸せな予定調和)
  • 「人間排除の経済」から「人間復興の経済」へ
  • 働くものは強し 蓄えるものは なお強し
  • 人間、働くことが値打ちやないか
  • 「なぜ城山さんの作品の主人公は男ばかりなのですか」、「女性はまあ大河の流れのようなものです。存在それ自体が救済です。 あえて私が慰めなくても。が、男は・・・、まあいってみればその流れに浮きつ沈みつしながら流されていく木の葉のようなものですから、ねぇ」
  • それほどに男は悲しい存在なのだ
  • 周章狼狽
  • 「虚の経済」、「実の経済」
  • 淵源はいっそう迂遠なところに
  • グローバル節
  • 彼我の違い
  • 会社を潰しても人間は潰れない社会
  • 人間はもはや搾取の対象でさえなくなった。いまや人間は排除の対象になった。
  • 天空回廊
  • 胴元
  • 跳梁跋扈
  • 時代遅れの守旧派
  • 既得権益にしがみつく愚者
  • 一辺倒論
  • 自己責任、事後チェック
  • 低位平準化
  • 水は「ゴールド・ウォーター(黄金の水)」と呼ばれる
  • 定昇圧縮
  • 神は細部に宿りたまう
  • ウィーナー・テークス・オール(一人勝ち世界)
  • プライバタイゼーション(私化、私物化)
  • プライベート・オートノミー(個人主義)
  • 官の無責任・民の狡猾
  • 高木仁三郎(市民科学者)
  • 細緻な後付けの論理構築
  • 真理追究と大衆認知
  • ポリシー・インテレクチュアル(政治知性)
  • 自覚的市民
  • ステークスホルダー(利害関係の当事者)
  • マネタリー・ディシプリン(金融節度)
  • 決定権、実行権
  • 節度ある競争
  • 大学の果たすべき使命は明らかであります。学問研究の自由を主張し、守るのとまったく同じ地平において、大学は地域自治の先頭に立ち、 そのためにも自覚市民を育て、支援の担い手となること。そのように期待されているのではないでしょうか。
  • 懐柔策、表面的意見聴取、情報提供、形式だけの参加
  • この指とまれ
  • 猖獗を極める
  • 量産効果追求
  • 積年の弊
  • 撃ちてし已まん
  • 市場競争原理至上主義
  • 参加、連帯、協同、営為、生業
  • 熱狂的等質化現象
  • 公私截然
  • 逆さ絵
  • 増徴
  • 『匠の時代』
  • 北欧の社会では「すべての国民は等しくネットの恩恵に浴す。それが国民の権利」
  • 技術の社会化
  • 「リナックス」(フィンランド)に象徴される北欧型技術の系譜
  • リナックスは技術の独占ではなく開放によって、世界の誰でも参加し、互いに知恵を出し合って技術のブラッシュ・アップ(磨き上げ)に貢献できる
  • グリーン調達
  • 線形思考からシステム構築へ
  • 蘇れ匠の時代
  • 既得権益への固執
  • すさんだ社会の様相
  • 節度、秩序、社会的貢献、制度
  • 節度(ディシプリン)、規範(ノルム)
  • 節度なき自由
  • 多数決独裁
  • 何でもあり
読後感:「資本移動のモニタリング(監視)」こそ、グーグル的な新しいビジネス・パターンではないでしょうか。 バージョンアップで利ざやを得ていたマイクロソフトのビジネス・パターンは、今ではなんとなく古い感じがします。 そんなグーグルもマイクロソフトも「グローバリズム」に根ざした典型的な米国型企業経営に変わりなく、 北欧の生んだリナックスにみるような「オープン・ソース」的なビジネス志向(かつてのUNIXS文化のような)とは対極をなしている。 いずれは、どちらかに軍配があがるのかな?・・・。 地球温暖化対策やビジネス・パターンなどなど、欧州と米国のふるまい方はあらゆる意味で対極的である。
○『先生とわたし』 四方田犬彦著(2007年7月4日読了)
  • 由良君美(東京大学名誉教授(教養学部)、英文学者)
  • 西洋人が長い間、高貴な未開人というロマンティックな考えに捕らわれていた
  • 赤塚不二夫の試験問題(赤塚不二夫の漫画がコピーされていて、この漫画のどこがどう面白いかを分析せよとだけ、簡潔に記載されていた)
  • 漫画学会の設立、サブカルチャー研究の市民権
  • 記号学を駆使した『漫画原論』
  • 先天知の系譜
  • タブラ・ラサ(無地の白紙のような人間の心)
  • 対応交渉
  • 小林秀雄は脈絡のない感想を特権的な場所から述べ立てている文壇人、吉本隆明は出鱈目な理論を好き勝手に援用している野人
  • 由良君美は万巻の書物をすでに読み終わったファウストのよう
  • 若い頃はまず誰だってロシア文学に夢中になる。次に来るのがフランス文学だ。けれども一番最後になって、 その面白さがわかるのはイギリス文学だね。
  • 通称イチケン(旧制第一高等学校以来の木造二階建ての研究棟)
  • 早稲田だったら日夏集耿之助、慶応は西脇順三郎
  • ひどく不愉快な体験
  • 東大中心主義
  • 大学院の二期校
  • 『雨月物語』にみる朝鮮民話
  • ソールズベリのストーンヘンジ
  • 柳宗悦
  • 学歴を見て知的な背景を簡単に辿れる人間ほどつまらぬ存在はない
  • 由良哲次(君美の父、西田幾多郎に教えを受けた哲学者)
  • 「君美(きんみ)」(新井白石の幼名)
  • 知的遍歴
  • 生れおちたら、僕のまわりには玩具もなく友もなく、ただただ本だらけだった。たまたま父とすることになった男が、貧乏学者だったためで ある。母も好学の人で、いつも暇さえあれば本を読んでいた
  • 成蹊中学
  • 「書豚」「書狼」「書痴」
  • 同臭の徒としてね、行きましょうや
  • 平岡公威(三島由紀夫)
  • 揶揄の口調で迎える
  • 不良ヒッピー外人の巣窟、言うならば好餌と化している
  • 本郷の文学部と駒場の教養学部の間には、長い間軽蔑と競争意識の入り混じった確執が横たわっていた
  • 駒場がもと第一高校であったことから、本郷には駒場を何かにつけて「高校あがりの癖して」と見下すところがあった
  • 駒場は戦後の新興勢力の強さから、つとめてリベラルで自由闊達な雰囲気を醸成しようとし、本郷の体質の古さを敬遠するところがあった。
  • 本郷はそうした駒場を苗床のように見なし、優秀な語学教師を文学教師として引き抜いて、本郷のスタッフに招き入れることで応じた。
  • 表象学科
  • 英語科(駒場)と英文科(本郷)
  • 高踏的過ぎて常軌を逸している
  • ある種の女子大生には、どこかで男性教師にむかい無意識のうちに媚態を示してしまう傾向がある。
  • 大森荘蔵
  • その押し出しの貫禄と冷静な判断力
  • 東大のなかでどこか正統的な教養に不満を抱いていたり、専攻という狭い枠のなかに思考を閉じ込めることを肯じない学生
  • 他のどのゼミにも納まりきらないタイプの学生たちが、なにか動物的直感に基づくかのように集まって来る
  • 由良君美の学風
  • 船曳建夫『大学のエスノグラフィティ』
  • 狷介な性格で、かつ破壊的なところがあり、それがお坊ちゃん気質とない交ぜ
  • 談論風発
  • 由良先生の棲む、鬱蒼たる知識の森
  • 悪無限の円環
  • 全方位的に発展
  • 無常といふこと
  • 「ルビの美学」
  • 江戸人
  • 三重県立第三中学(伊賀上野高校、一級下に横光利一)
  • 竹林の賢人
  • 由良哲次『古琉球語で解明する邪馬台国と大和』
  • 『雑書主義者の弁』
  • 明治男
  • 莫迦げた国家論の小型寵児
  • 男の夢を教え続ける不良
  • 松の実を摺ったお粥
  • 由良君美と江藤淳が慶応の西脇ゼミの兄弟弟子の間柄(一方はひどく可愛がられ、もう一方は蛇蝎のごとく嫌われた)
  • 脱領域的知性
  • 文学には先生も弟子もいない。ただ孤独であることだけが、文学の条件だ。
  • 居心地の悪さ
  • 神話原型論
  • フォルマリズム
  • ニューアカデミズム
  • 「すべてはデタラメ」
  • ボローニャ大学では、それは中世以来の文化伝統として、当然のごとく受け入れられていた。
  • 柳下去辞
  • 由良の脱領域ぶり、ダンディぶり、書物蒐集ぶり
  • 若い才能を触発する教育的才能
  • 死と再生の象徴法の隠喩的展開
  • 転回
  • 矢川澄子「ゆめをかたることは らくないとなみだろうか きびしさをかくごで みずからのみちをゆく  よのうきしずみをよそに しぶとくしかもしなやかに」
  • 絹のように繊細な心をもった人間
  • 人はなぜ教師となるのか。ある人間が他人を前にして、モノを教えたり、ある技術を授けたりするという行為とは、 いったい何なのか。それはどのような形で正当化されうるものなのか。
  • 原理的な問いかけ
  • いかなる人間も知的欲求から無縁でいることはできない。未知の事物について学ぶことは愉しいし、学習を通して自分の世界が拡大されて ゆくことを確かめることは、さらに幸福なことである。
  • 教師は当座に要求されている知識を切り売りするだけではなく、みずから知の範例を示すことを通して教育という行為を実践する
  • 彼らは師と呼ばれ弟子と呼ばれる
  • 弟子は長期にわたってそうした師の姿を眺めることを通し、容易に要約のできない体験をする。
  • 自分ではまったく失念していた授業中の発言を、相手が記憶に留めていたりすることを教えられる
  • 山折哲雄『教えること、裏切られること』
  • 人間を守る読書
  • 川端康成『名人』
  • ミッシェル・フーコー「教えるという行為が本質的に、人間が織り成す政治関係のなかの実践であると指摘している。 師は弟子とは比較にならならほど心理的、社会的、物理的権力をもった存在として、まず弟子の前に立ちはだかる。」
  • 権力形態のひとつ
  • ソクラテスとアルキビアデス、アベラールとエロイーズ
  • 師弟関係(老子の道、孔子の道、禅の道)
  • 親鸞は弟子一人ももたずさふらふ
  • 正岡子規と高浜虚子、親鸞と道元
  • 不気味な厭人癖
  • 親鸞の単独相続の野心
  • 有漏の迷情
  • 多人得道の縁
  • フライブルク大学(ハイデッカーとフッサール)
  • 衆愚に陥る
  • Paus de Maitres(先生なんてもういらない)
  • 嫉妬、虚栄、虚偽、背信
  • 少壮の学者
  • 哲学的地平
  • メフィストフェレスの形象

  • 自己防衛に由来する韜晦術
  • ルキアノスの戯作対話編
読後感:由良君美が置かれた状況、情景、よくわかります。 駒場(教養)、本郷(専門)みたいな、大学の内なる二軸の存在。 どこかの本に書いてあった「“ことば”の通じない渦中に身をおくことで、人は人知れずのうちに成長を遂げているものである」、 というのを、信じるしかないですね(絶海の大陸・オーストラリアで独自の進化をとげた有袋類、みたいに)。
で、師匠といえば、 工芸大に来るまでにこれまで僕が師事してきた師匠五名は、いずれ劣らず研究、科学に命を賭した猛者ばかりでした。 そして当時助教授だった先生も、教授だった先生も、みな偉い先生となった今も、現役バリバリの実験研究者ばかりです。 学会で、ドクターコースの時の指導教官の先生にお会いすると、いつも「いま夢中になっている実験」のお話を、 少年のような愉しげな面持ちで、お聞かせ下さります(なにせ、国立大学評議委員となられ多忙を極めた今でも、 正月休み中から自ら装置の火入れをして初実験を敢行されている、との話には脱帽するしかございません)。 こんな至らない僕を指導してくれた師匠たちのことを思うと、 いつまでも、こんなぐーたらな研究をしていては、罰が当たっちゃうなぁ・・・。どうにか、しないとね!
それと本書の中に書かれていたように、はるか昔に由良先生が東大で赤塚不二夫作品を題材として試験をされていたのは、びっくりしました。 実はちょうどここ半年ほど、『天才バカボン』を読みたい読みたいと思っていたので、 このこと知って誠にうれしい限りです(文庫版が見つからなくて、志は頓挫していますが・・・)。 先入観に囚われず、色眼鏡で(赤瀬川さんの表現を借りれば「ウロコのついた目」で)物ごとを見ない、とはどういうことか。 “タブラ・ラサ”であるには、人はどう振舞うべきか。子どもの時にTVアニメを見ていても、まったく気づかなかった偉大なるヒントが、 きっとそこには描かれているはずだ。早く、読んでみたい。
○『入門!システム思考』 枝廣淳子+内藤耕著(2007年7月3日読了)
  • 「システム思考」= 「目の前にある個別の要素ではなく、それぞれの要素とその「つながり」が持つシステムとして、その構造を理解することである」
  • 「システム思考」は、1950年代にMITで確立された
  • 常に不変であるものは、変化である
  • システム思考は五000年後も通用する
  • 人工物工学研究センター(東京大学柏キャンパス)
  • 日頃抱えている問題は、一つひとつの個別の状況や現象といった要素の中にあるのではなく、要素と要素の間や、 さまざまな要素の組み合わせの中にある
  • 「分析的思考」と「システム思考」
  • 人間はいつも考えている
  • あまり考えないのが実は「考える方法」についてである
  • 個別の要素に関心が向かう分析的思考の強い人
  • 全体のシステムを強く意識して行動している人
  • ひとつの視点から考えることは容易であるが、この世の中に存在しないものを作ろうとしたとき、または複雑な問題を解決しようとしたとき、 どのような種類の視点があり、視点をどのように組み合わせていったらよいのかを明らかにすることとは、思考方法が異なる
  • 一つひとつの要素を個別に見ていくか、それらの結びつきを総合的にみていくか
  • 視点が変われば見え方も変わる
  • そして、人間自身も変化している
  • 先入観が理解を妨げる
  • 時系列変化パターングラフ
  • ループ図
  • 因果応報
  • 状況→認知→行動→状況→行動→・・・
  • フィードバック・ループ
  • 「自己強化型ループ」と「バランス型ループ」
  • 「システム思考の知恵」=「人を責めない。自分を責めない」、「人が悪いのではなく、構造に問題がある」
  • レバレッジ・ポイント(小さな力で大きく構造を変えられる介入点)
  • システム思考で考える地球温暖化問題
  • 「システム思考の知恵」=「解決のツボは一見遠くにあることもある」<
  • 「システム原型の種類」=「遅れのある調整」「成長の限界」「問題のすり替わり」「外部者への依存」「ずる落ちる目標」 「エスカレート」「強者はますます強く」「共有地の悲劇」「うまくいかない解決策」「卵かニワトリか」
  • システム・トラップ(システムの罠)
  • 「評価軸を長く取れ」
  • 多くの大学や研究機関では、研究者は個室を持ち、その中でゆっくり考え、研究を行っている。静かな環境がなければ、 ゆっくり考えることができないのも事実である。
  • タコ壺型のオフィスデザイン
  • 個人でコーヒーメーカーを買わせないことを徹底する
  • そして、最後に行動してみる
  • ギルマンの方程式:(認知された新しい方法のメリット)−(認知された古い方法のメリット)>(認知された変化のコスト)
  • 持続可能な社会につながる新しい文化を創りだすこと
  • バベルの塔
  • テストも問題と答えが一対一で対応している。子どもたちは必ず存在する答えをひたすらに探すことに時間を費やす。 そうした絶対的な答えを前提とした教育をしているから、分析的思考が強くなってしまうかもしれない。
  • 新しいものを作っていく、何か新しいことをやろうとする場合、実は答えがない世界、または見ている視点を変えなければ 正しそうに見える答えがいくらでもある世界で考え、行動しなければならない。
  • 自分のメンタルモデル(思い込みや世界観)を認識し、「思い込み」と呼ばれる狭い見方を広げ、 新しい視点で全体像を見ることができるようになる。そして、お互いのメンタルモデルを理解して、全体像の理解を深め、 その結果、効果的な働きかけを一緒に考えることができ。
  • 「システム思考の七ヵ条」=「人や状況を責めない」「できごとではなく、パターンを見る」 「“このままの”パターンと“望ましい”パターンのギャップを見る」「パターンを引き起こしている構造(ループ)を見る」 「目の前だけでなく、全体像とつながりを見る」「働きかけられるポイントをいくつも考える」「システムの力を利用する」
読後感:この期に及んで“前例”のゴーストに縛られているような、「木をみて、森を見ない」を得意技とする人が、とかく世の中には多いですなぁ。 柔軟な組織づくり、いいチームづくりには、 「木も見て、森もちゃんと見る」ことができ、行き交う了見を横断できる高い見識の人の存在が、欠かせないでしょう。 それと、“コーヒー・メーカーを買わせない”工夫は、おもしろいアイデアです。 アイビーリーグの大学には、くつろいだり、議論したり、だべったりできるファカルティ・ラウンジやファカルティ・クラブが、 必ずあるでしょ。「スタバ」みたいな快適なファカルティ・ラウンジがあれば、最高なんだけどなぁ・・・。 でも、日本のタコ壺文化じゃ、自由闊達でおもしろいラウンジにはなかなかならないでしょうかねぇ。 それに、もしもあって利用できたとしても、せいぜい「サボってる」って思われるか、 おもしろい研究話よりも、ゴシップとか自慢話とか、つまらない話を聞かされるのが、やまやまか・・・。
○『日本男児』 赤瀬川原平著(2007年7月2日読了)
  • 「素の人」=「素人」
  • 素人はとにかく馬鹿にされるが、馬鹿にされて、人間の状態としてはちょうどいい。素でいられる。
  • 目にはウロコがつきやすい
  • 「自由の悪玉菌」=「左翼ウィルスの保菌者」
  • 怒るのが仕事だった男が、怒らなくなった
  • 怒る男、叱る男
  • 駄目な子を突き放す父性の力
  • 母性的優しさという日本的美徳であったものが、叱る男がいなくなった末に脱線して、そのまま暴走しつづけている。
  • 「優しさの暴走列車」(人から知識人といわれる人は、だいたいその傾向にある)
  • 黒い色が好き
  • その他ごちゃごちゃの挫折とか屈辱とか、そういう雑事の堆積時間があって、人生という言葉のおぼろげなシルエットが見えてくる
  • 頭を警戒すること
  • 若い頃の頭の考えは直線的に進みやすい
  • 左翼、反権力、反体制
  • 自我を支える体力が弱い
  • 世間全体の欲望
  • 典型とか標準に対する反発、常識への居直り
読後感:日本男児たるもの、「怒る」と「叱る」を違えちゃいけません。ましてや、最近の「キレる」と混同してしまうのは、もっとも悲しいこと。 叱られることに抵抗力のなくなった世の中、ちゃんと叱ることのできる人のいなくなった世の中では、 「キレる」との安易すぎる混同化が暴走的に進んでいるのでしょう。 おそらく理性の働かせ度合いは、「叱る」>>「怒る」>「キレる」の順であるのだから、「キレる」がそんなにも幅を利かせるということは、 世の中が理性的でなくなりつつある、ってことでいのかな。「おとなの社会」も「こどもの社会」も、やばいですぞ。
また、仕事の上でも、 欧米人のように一事一事についてロジカルに詰めて議論しながら進めることに適さない(または慣れていない、あるいは苦手な)日本では、 ロジックの代わりとして一定の成果やミスを防ぐために叱る/叱られる関係に基づいたテンションの存在が、至るところにあったような気がします (宮大工をはじめ世界に冠たる日本の職人技・芸の仕事ぶり(かつての徒弟制度も含め)を思えば、至極当然のことでしょ)。 そんな日本で「ちゃんづけ」仕事をしていては、いい意味でのテンションすら保てないでしょうなぁ・・・ (アメリカ人の場合は、はじめにロジックありきのコミュニケーションなので、映画やドラマのように上司と部下がファースト・ネームで呼びあっても、 十分に仕事は成立するのですよ)。
○TVドラマ版『バンビーノ(最終回)』 せきや てつじ原作(2007年6月28日放映@日本テレビ系)
  • 「目の前のことに一生懸命になれない奴に、夢を語る資格はない」:桑原(佐々木蔵之介)のお説教シーン
  • 「伴くん、愛だよ、愛」:与那嶺(北村一輝) の接客コメント
読後感:「原作をまだ読んでいない僕に『バンビーノ』を語る資格はない」のですが、いいドラマでした。 役者さんたちも、いい仕事をしてました。心に突き刺さるなぁ、上のセルフ。一生懸命(DTB)は、むつかしいですよ。 周りに向けてがんばっているふりをしていても、それもある種のDTB。 有形の見返りを期待した外向きのDTBもあって、無形の価値のためにする内向きのDTBもある。 どちらのDTBの姿勢が正しいのか、本当なのか、僕にはよく分からない(両方、正しいのでしょう)。 しかし、最近のアメリカン・ビジネス志向とそのグローバル化の猛威は、 日本古来の一所懸命の様相をも圧倒的多数で前者が占めるように影響を与えているような?、そんな気はしませんか。 「階層化均質性&安定性」、そしてちょっときつめの「自己合理性」、こんな言葉が頭をよぎります。
○『「縮み」志向の日本人』 李御寧著(2007年6月25日読了)
  • なにもなにも、ちひさきものはみなうつくし(『枕草子』)
  • 『菊と刀』『「甘え」の構造』『タテ社会の人間関係』
  • 「甘え」「甘えん坊」「甘える」「甘やかす」
  • 日本人が西洋ばかりでなく、日本の文化にもっと長い年月にわたって影響を与えた中国や韓国を通じて、 自己の特性を発見しようとつとめた例は、そう多くはありません
  • 日本的思惟方式
  • 百済観音
  • ロラン・バルト『表徴の帝国』
  • 「リンカーン、カント」と「世宗大王、李退渓」
  • 「大丈夫」=「男」(韓国語)
  • 一寸法師、桃太郎、金太郎、牛若丸
  • 接頭語の比較(日本語の「豆」「ひな」と韓国語の「ワン」=キングサイズのキング)
  • 倭国、倭人
  • 縮み志向
  • 「菫ほどの小さき人に生まれたし」(夏目漱石)
  • 「うつくしや障子の穴の天の川」(一茶)
  • 「うつくし」と「くはし」
  • くは(麗)し女
  • 目ぐはし
  • くはし花
  • 小さくなれ、もっと小さくなれ
  • 「小さいものが強いものである」という「極小主義」
  • 小咄
  • 日本人はそれを拾い上げるや、いち早くそれとそっくり同じものを作ってみるでしょう。それもただの原寸大に作るのでなく、トランジスタ化 して、もっと精巧に縮小し、手のひらに入るように作るはずです。
  • 「東海の小島の磯の白砂に われ泣きぬれて 蟹とたはむる」(石川啄木)
  • 「の」を重ねる不思議(「やまのてせん」、「きのくにや」など)
  • 高麗扇と日本扇
  • 「握りしめ文化」(「手ごたえ」、「手ごわい」、「手痛い」、「手にあまる」、「手に負えない」)
  • うつくしきもの、瓜にかきたるちごの顔。雀の子の、ねず鳴きするにをどり来る。二つ三つばかりなるちごの、いそぎてはひ来る道に、 いとちひさき塵のありけるを目ざとに見つけて、いとをかしげなるおよびにとらへて、大人などに見せたる、いとうつくし。・・・雛の調度。 蓮の浮葉のいとちひさきを、池よりとりあげたる。葵のいとちひさき。なにもなにも、ちひさきものはみなうつくし。(『枕草子』151)
  • 「美」=腹いっぱい食べることのできる大きな羊→大きくて豊満なもの(中国の美意識)
  • 「どうも」文化
  • 日本式縮小語(イメチェン、イケメンなど)
  • 髪の作り方(前髪、両鬢、髱、髷、島田、桃割れ、勝山おぼこ、だるま返し)
  • 「侍の二刀(本刀と脇差し)」と「二膳(本膳と弁当)」
  • 「汁のない」日本食文化
  • 「詰められないもの」=つまらないもの
  • 和字(国字)と国訓(凪、俤、働、偲、躾)
  • 「利休ねずみ」(赤・緑・黄・青の混色)
  • わびの美学
  • 華厳思想、新羅元暁の円融会通
  • 文庫本
  • 豆本図書館(静岡、青森)
  • 「手ごろ、多軽主義」
  • ストップ・モーションの波「北斎・富嶽三十六景『神奈川沖波裏』」
  • 歌舞伎の「見栄」(ストップ・モーション効果)
  • 「構え」
  • 「米国では多くのバッターはフォームやスタイルなどは気にせず、いい結果を生むことだけを念頭に おくのに、日本では良き野球選手とは自分自身の身体の動きをいつも正しいフォームに合致させる者をいう」(ホワイティング『菊とバット』)
  • 刀の文化(「裏切り」、「切味」、「切身」、「切目」、「切盛」、「助太刀」、「真剣」、「東大生を斬る」)
  • ソンビ(文士)文化(韓国)
  • 「構え」とは剣術のすべての動きと精神をコンパクトに縮めた形
  • 構えをみても、その人の剣道の腕前と品位を知ることができる
  • 日本の仮面の特色は、狭く小さい面になっていきながら、完成されてゆく
  • シテ(主人公)
  • 曇ル(哀しみの表情)、照ル
  • よくみれば薺花さく垣根かな(芭蕉)
  • 「俳句」と「時調」(韓国の詩)
  • 「よくみれば」=「じっと見る」=「見詰める」=「見る構え」=「眼張る」=「がんばる」
  • 家紋の起源(山鹿素行『武家事紀』、新井白石『紳書』)
  • 族譜文化と本貫(先祖の出身地であらわす家系のはじまり)
  • 太閤の桐、徳川家の三葉葵、皇室の十六葉八重表菊
  • 「半てん」(マントのような上っ張りを意味するポルトガル語)、「のれん」と紋章
  • 「名刺」と「めし(飯)」
  • 「名刺の肩」と「肩書き」
  • 「甘え」、「哀れ」、「わび」、「さび」、「義理」、「恥」、「武士道」、「和」、「まこと」、「タテ社会」、 「農耕文化」、「武家社会」
  • 静態的
  • 「込める」、「折畳む」、「引き寄せる」、「握る」、「削る」、「取る」、「詰める」、「構える」、「凝らせる」
  • 「多胡の嶺に寄せ綱延へて寄すれどもあに来や沈石その顔よきに」(万葉集東歌)
  • 日本の「庭文化」(それは人間の手の内に収まった自然)
  • 韓国の禅僧は、世俗の地を離れるところかたその修行をはじめる
  • 日本の禅僧は、世俗の巷のなかにありながら、自然を自分のところの縁側のそばに呼んで来たのです。それが、禅寺の方丈の庭なのです
  • 日本の美的原型
  • 石の立て方(『前栽秘抄』、『作庭記』)
  • 枯山水
  • 日本人は滝から枯滝をつくり、ヨーロッパ人は滝から逆さに上がる噴水を作った(噴水=水でつくった木)
  • 武士が刀をかたときも離さなかったように、日本人はほうきをかたときも離さなかった
  • 掃き、払い、洗い、磨く日本の生活はゴミとの戦いだった
  • Plantation(植木=植民)
  • 盆栽町
  • 盆栽協会
  • 盆栽・盆石
  • たてはな、りっか、なげいればな、いけばな
  • 池坊、小原、草月
  • 華道に共通する法則「自然の花を縮めて部屋のうちに移す」
  • いけ花の美学はまず切ることから始まる
  • 木を切る。草を切る。枝を切る。葉を切る。花を切る。(早川尚洞『尚洞華心抄』)
  • 桜町中納言
  • 曾呂利新左衛門の「いけ花」
  • 「大海の様、大河の様、山河の様、沼地の様、葦手の様」(橘俊綱の石立て)
  • 「沢辺、河、入江などの風情も立つべし。是れ水辺のものを立て、野は野のものを立て、山は山のものを立つる、それぞれのごとくなるべし」 (華道の秘伝書『仙伝抄』)
  • 「石を見るな、石組みを見よ」(『池坊専応口伝』)
  • 「花の美しさを見るな、花の組み方を見よ」
  • 須弥山(仏教における理想世界)
  • 「おもしろくさきたる桜をながく折りて、おほきなる瓶にさしたるこそをかしけれ」(『枕草子』)
  • 日本人は自然ばかりでなく、神との関係においても、人間が神に向かっていくのではなく、神を人間のほうに引き寄せようとした傾向 が強い
  • 「市中の山居」「市中隠」(賢い便宜主義、現実主義の勝利)
  • 日本の隠者それ自体が、中国、韓国のそれと違って、世捨人といいながらも当時の権力者と仲がいい
  • 日本人の無原理主義
  • 帰去来の辞
  • こぢんまり
  • 家は狭かれ心は広かれ
  • タタミゼ(フランス人がいう「日本化」)
  • ギリシャ文化とアゴラ
  • アゴラが満つるとき(午前)、アゴラが解けるとき(午後)
  • 寄付き、くぐり、つくばい、にじり、這い入り
  • 動物には形態はあっても姿勢というものはない
  • 立式文化圏と坐式文化圏
  • 「頑張れ」「気をつけて」の日本と「心を放して」の韓国
  • 「身は刀の日本」と「身は琴の韓国」
  • 不動姿勢のテンション文化と明治維新
  • 正坐の不動姿勢
  • 縮(武士が戦をするときによろいかぶとをの武具を身につけるときにいう)
  • ハチマキ、タスキ、フンドシと「縮」
  • 折畳み傘、ワンタッチ式傘と「縮」
  • 我一世一度の会也
  • 一期一会
  • 茶を飲むことは、どの国の文化でも遊びごとです。しかし、それを一期一会、つまり一生に一度のこととと考えれば、 ただの遊びごととは違って、何か真面目なものになってくる。人と人との出会いにも、一挙一動の行為にも、いいかげんにはなれない。
  • 深切実意
  • 「み渡せば花ももみぢもなかりけり浦の苫屋の秋の夕ぐれ」(藤原定家)
  • 茶の心、花の心、芸の心
  • 咲く花より散る花を愛する
  • 花は桜木、人は武士
  • 戦国の世に生きた金春禅鳳の「能」は兵法に近いもの
  • すこしでも油断すれば、斬られる。ですから、渾身の力をこめ、いささかのスキもなく、絶体絶命の芸を完成させていけるのです。
  • そこに「時分の花」でなく、「まことの花」が開くのです
  • 朝に夕に死を思う人は美しいのです。美に悲しみがあるのも、そのためです。 死を裏返しした生、それが武士の生であり、芸人の生なのです。
  • 「一生(所)懸命」(一所(領地)を命がけで守る)
  • 縮み文化の究極にあるのは、ほかならないあの「死」であったのです
  • 西洋人はバイブルに手をおき神かけて誓う、日本人は生命をかけて誓う
  • 「死ぬ気になればなんでもできる」
  • 「寄せ」、「婆沙羅」、「闘茶」
  • 「正坐の文化」=「寄合文化」=「触れ合い文化」
  • イデオロギーのちがいより、肌ちがいのほうが、より恐ろしいもの
  • 「触れ合い」、「愛情」、「情愛」、「話し合い」
  • 「和」という神秘な集団主義
  • 「黄禍論」(中国人の人口と日本の団結力を根拠とする)
  • 日本株式会社論
  • 有職料理
  • 居候、三杯目にはそっと出し
  • 主客一体化
  • 大星由良助
  • 執筆(しゅひつ)の任務
  • 村の「講」、「結」、「祭り」、社会集団の「座」、「組」
  • 「数寄」
  • rich dubbers(富める鈍者)
  • 井戸茶碗「喜左衛門」
  • 唐物茶入「初花」
  • 韓国では田舎の農夫がメシや汁を盛った器が、わび茶を学んだ大名らには、一国一城と換える貴重な宝物であった
  • 秀吉がいちばん大切にした茶碗・朝鮮磁器「筒井筒」
  • 古田織部
  • 物に対する日本人のこの奇妙な愛着心
  • 茶杓
  • 古田織部が戦の真っ最中に削りつくった茶杓「玉アラレ」
  • (どんな)ビギナーでも、まず物が揃っていなければだめ
  • 「物足りない」
  • 文学全集にみる「セット販売」と「セット文化」
  • なんでも揃っていなければ、気がすまない。物足りない。
  • 三種の神器
  • 買う買う買いまくる。貯金をし、また買う日本の消費者のような人間は世界にはいない
  • 和魂
  • 「Sony」(「Sonny」小さいものの意味の、子どもの呼び名から「n」をとって短く縮めた)
  • 「ソニー・スピリット」=「縮めていく」
  • トランジスタ、小型ラジオ、ウォークマン
  • 「引き寄せ」の文化
  • 軽くなれ! 薄くなれ! 短くなれ! 小さくなれ!
  • 「花道」式マネジメント
  • 産業用ロボットの名前(百恵ちゃん、タロウ、サクラ、アヤメなど)
  • 米国のエレクトロニクス産業は、ディフェンス(国防)とスペ−ス(宇宙)の開発によって動いている
  • 磁器と鉄砲にみる日本の開発力(鍋島藩の磁器輸出量は穀物を上回り、1543年の二丁の鉄砲伝来は、半年で600丁、十数年後には30万丁の世界最高の生産量)
  • 「なるほど!」の研究で磨き上げられて、「出藍の誉れ」高き商品を生み、逆輸出へ
  • 「二番手をいく」(松下電器の戦略)
  • 「ほととぎす なくやさ月のあやめぐさ あやめもしらぬこひみする哉」(『古今集』)
  • 「時鳥 啼くや 五尺のあやめ草」(芭蕉)
  • スモール・イズ・ビューティフル
  • 「国引き」の神話(『出雲国風土記』)
  • 「日本の文化史」=外国文化の「勉強史」
  • 中華思想は習うより教える文化
  • 「ベンキョウになりました」
  • 「内」と「外」
  • ウチとソトで同じ意味で違う言葉(「シマ」の対馬と「トウ」の済州島、日本船の「丸」と外国船の「号」)
  • 身ウチ
  • 垣内
  • 「変わり者」(フランスでは天才という称讃、日本では村八分された者の意味)
  • 「窓際族」「肩たたき」
  • 日本人の3S(黙り込むsilence、ニヤニヤ笑いsmile、居眠りsleep)
  • 聖徳太子「和を以て貴しとす」
  • 「和」とはソトに対する「閉鎖性」
  • 「世界八分」
  • カブトと日本刀を差したサムライがホンダのオートバイに乗って驀進してくるマンガ
  • 「日本の海外セールスマン」と「倭寇」
  • 「豊臣秀吉の文禄・慶長の役の失敗」と「縮みの天才と英雄にして、拡がりの愚者」
  • 芥川龍之介『トロッコ』
  • 細石の巌となりて
  • 「美は真であり、真は美ではない」(キーツ)
  • 枯野の船
  • 世阿弥、観阿弥のような「アミ」たちの縮み文化
読後感:ここ一、二週間、気管支炎のような鼻風邪のような、で体調不良が続き、体力・気力・集中力の充実を得ず。 よって朝の通勤図書館も、通勤“居眠り・ぐだぐだ”図書館と化す(なんたる体たらく。調子に乗れれば往復路で3冊ほど読むときも、あるにはあるのですが・・・)。 話し戻って、この本もまた、非常に勉強となった(←本書によればこの表現も「縮み」らしい!)。 なぜ、かようにも日本は半導体等の超微細加工技術や大量生産技術に強いのか。 近くて遠い国・韓国の教養文化人の李先生が説かれる比較文化論的日本史観によって、その深奥に邂逅できたような気がする。 物ごとの本質を見抜くには、一元的尺度で眺めるより、ときに二元的に眺めた方が相対化の尺度を得て有利にはたらくことを、 本書がよく示してくれている。この読後感は、 以前、梅原猛先生の本を読んでいて日本の奈良の読み「なら」が韓国語の「国」(よって韓国は「ハンナラ」、たしか百済は「クンナラ(大国の意)」) を意味するのを知ってそれまで抱いていた私のニッポン・アイデンティティがゆらぐのを覚えたとき、とまた、 なぜ学校の歴史の時間ではその歴史的本質、客観的史実にふれようとしないのだろうか?という不思議を感じたとき、によく似ている (やはりそれは、学校で習うのが「歴史」であり、客観性を重視する「歴史学」ではないから、でしょうか?)。
ともあれ、日本の諸道に見られる「礼儀」も、「型」も、「構え」も、「正坐」も、あるいは漢字から仮名を編み出したことも、 伝統工芸にみる職人技も、そして最近のマンガ、アニメ、ゲーム等のJサブカル系のネオ職人技も、おまけ付きお菓子の文化も、 携帯電話の新機種にみる続々リリースも、小型車・低燃費車のエコ自動車の開発も、さらに専門職科学技術研究たるナノテクも、 ぜーんぶ日本人が得意とする「縮み」文化の現れし一端なのだ、とね。よーく、納得できました。 「縮み」は、時間空間的な「短小短縮化」、「効率化」、「高密度化」、「高精度化」、に等しきなり。 スモール・イズ・ビューティフル。ちひさきものはいとうつくしきもの、かな。奈乃阿弥より
○『生物と無生物のあいだ』 福岡伸一著(2007年6月19日読了)
  • 人は瞬時に生物と無生物を見分ける
  • 何かを定義するとき、属性を挙げて対象を記述することは比較的たやすい
  • 生命とは何か? それは自己複製を行うシステムである。
  • 「DNA」と「構造のゆるぎない美しさ」、「構造がその機能性をも明示する」
  • ナチュラリスト(ファーブルや今西錦司)
  • ノックアウトマウス(ひとつの部品情報が叩き壊されている)
  • 遺伝子ノックアウト技術によって、パーツを一種類、ピースをひとつ、完全に取り除いても、何らかの方法でその欠落が埋められ、 バックアップが働き、全体が組みあがってみると何ら機能不全がない
  • ボロー(区)
  • Rockfeller University −pro bono humani generis−(ロックフェラー大学 人類の向上のために)
  • 静謐な図書館
  • ロックフェラー大学図書館の胸像Hideyo Noguchi
  • 野口の研究は単なる錯誤だったのか
  • 過大な気負いに常にさいなまれていた
  • 渡辺淳一『遠き落日』
  • ディスポーサブル(使い捨て)
  • 交差汚染
  • 大きな陥穽
  • ステップスフォーワード
  • 日和見感染体
  • 「ウイルス」=「エッシャーの描く造形のように、優れて幾何学的な美しさ」、「生物ではなく限りなく物質に近い存在」、 「栄養を摂取することもない。呼吸もしない。二酸化炭素を出すことも老廃物を排泄することもない。」、「一切の代謝を行っていない」、 「結晶化」、「鉱物に似たまぎれもない物質」、「ウイルスをして単なる物質から一線を画している唯一の、そして最大の特性、・・・自己複製能力」
  • アンサング・ヒーロー(an unsung hero、縁の下の力持ち)
  • サング・ヒローズ(sung heroes)
  • DNAイコール遺伝子だと世界で最初に気づいたオズワルド・エイブリー
  • フォー・レター・ワード
  • 「教養がじゃまする」(教養課程の単位不足という意味である)
  • 今から思えばこのようなモザイク性こそ大学の面白さ
  • DNA文字、4×4×4の64通り
  • テラ・インコグニタ(未知の大地)
  • DNAの相補的対構造
  • 二本のDNA鎖のうちどちらかが部分的に失われても、他方をもとに容易に修復することが可能
  • PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)
  • サーファー・ゲッツ・ノーベルプライズとキャリー・マリス博士
  • 博士号とかけて足の裏についた米粒と解く そのこころはとらないとけったくそ悪いが、とっても喰えない
  • アカデミアの塔
  • アカデミアは外からは輝ける塔に見えるかもしれないが、実際は暗く隠微なたこつぼ以外のなにものでもない
  • 古い大学の教授室はどこも似たような、死んだ鳥のにおいがする
  • 死んだ鳥症候群
  • やがて長けてくるのは、いかに仕事を精力的に行っているかを世間に示すすべである。 仕事は円熟期を迎える。皆が賞賛を惜しまない。鳥は実に優雅に羽ばたいているように見える。しかしそのとき、鳥はすでに死んでいるのだ。 鳥の中で情熱はすっかり燃え尽きているのである。
  • 同じ場所に長く留まれば必然的に物々は煮詰まり、事々は倦む
  • スカ・ビート(ska)
  • 「ボスになること」、「限りなく分断された時間と消耗の繰り返し」、「死んだ鳥への危うい接近」
  • オネスト・サイエンティスト
  • ダークサイド・オブ・DNA
  • 「ピア・レビュー」と「ビア」(透かし見)
  • ロザリンド・フランクリン
  • プリペアード・マインド(準備された心)
  • ギリシャの壺のオード
  • レイバック(余生)を楽しむ
  • ソーク生物学研究所(私立)
  • 脳のバインディング問題
  • 生命現象における同調の問題(シンクロニシティ)
  • DNAの結晶構造はC2空間群
  • エルヴィン・シュレーディンガー『生命とは何か(What is Life?)』
  • ブラウン運動
  • 生命現象に参加する粒子の数が少なければ、平均的なふるまいから外れる粒子の寄与、つまり誤差確率が高くなる。粒子の数が増えれば 増えるほど平方根の法則によって誤差率は急激に低下させうる。生命現象に必要な秩序の精度を上げるためにこそ、「原子はそんなに小さい」、 つまり「生物はこんなに大きい」必要があるのだ。
  • 系(システム)
  • エントロピー増大の法則
  • シュレーディンガーは、生命が、エントロピー増大の法則に抗して、秩序を構築できる方法のひとつとして、 「負のエントロピー」という概念を提示した。
  • サンド・キャッスル(砂上の楼閣)
  • 久闊を叙する
  • ダイナミック・イクイリブリウム(動的平衡:秩序は守られるために絶え間なく壊されなければならない)
  • 生命とは動的平衡にある流れである(ルドルフ・シェーンハイマー)
  • 最大手ジグソーパズルメーカー「やのまん」
  • 神の視座
  • かたちの相補性
  • 生命の可変性
  • 生物学的数字
  • ポスドクは、研究室の奴隷(ラブ・スレイブ)
  • トポロジー(ものごとを立体的に考えるセンス)
  • トポロジーの変位
  • 内部の内部は外部
  • ニューヨークの振動(街をくまなく覆うエーテルのような振動)
  • ローラー作戦
  • 僥倖が働く
  • エッジ・エフェクト
読後感:マックス・プランク固体物理学研究所のT.P.マーチン先生が以前、 幾何学的に対称性の高いパッキングを示すウイルスと単純金属クラスター (←原子核構造とのアナロジーもいけちゃう、いわばメゾフェーズ物理学の優等生的なモデル物質) のマジックナンバーの比較をされていたことを思い出します。 自然界のつくる幾何学的対称性の美しさは、何らかの機能がそこに付随することを示すものである (量子力学的エネルギーの縮退を解くヤーン・テーラー効果のように、自然界はわざわざ高い対称性を低下させる場合もあるが・・・)。 そしてそれは、物質も生命体も同等。機能と構造の問題は、とにかく深遠である。 ウィルスの形は、高い対称性による等方的なサイト数の確保と感染確率の増大に対する自然淘汰の結果によるものなのだろうか・・・。
○『錯覚する脳』 前野隆司著(2007年6月18日読了)
  • クオリア(心の質感)の謎
  • コネクショニスト(神経回路網の接続により心が作られると考える者)
  • 意識はイリュージョン(幻想、幻影、錯覚)
  • 人間中心主義
  • 「心の哲学者」は、機能としての意識と現実的な意識を厳密に区別
  • 脳の中の意識というモジュールは、ある現象に注目し、その結論を脳の中に表示する機能
  • 「現象」=意識に現れ出るもの
  • トートーロジー(恒真式)
  • 形而上学(科学では解明できない、さらに上のレベルの問いについての議論)
  • 証明は科学の道具であり、科学は仮定の上に成り立っており、仮定した枠内のことしか対象としない
  • 心身一元論、心身二元論
  • 意識は、脳の中の物理現象とは独立な何かだという・・・、そうだとする解決されるまでに百年かかるような<難しい問題>だといえる
  • 進化とは、金づちでトントンたたいて無理やり形を変えたり、無理やりたこ足配線することによって突貫工事する準最適化だ。 たまたま環境に適応した者だけが生き残る。
  • 映画『マトリックス』の世界
  • 私たちの脳という機械につながれていて、実はその機械が作り出したウソの世界を見ているに過ぎないのだ、という感じ
  • 心理学者マズローの「欲求の階層説」(生理的欲求、安全欲求、所属・愛情欲求、承認欲求または尊重欲求、自己実現欲求、自己超越欲求)
  • 「低次欲求が満たされてはじめて、人間は次の欲求を感じるのだ」(マズロー)
  • エピソード記憶
  • 痛みは死んだ皮膚で感じる
  • 痛みは脳の大発明
  • 把持力
  • 「甘さのクオリア」というイリュージョンと「安全欲求」
  • ボディーソニック(身体音波)
  • 「サブリミナルな聴覚」と「三角波のフーリエ級数」
  • メロディーのクオリアと周波数比4:5:6、1:2:3
  • 私たちは、目の盲点に焦点を結ぶものは見えないことを、日常的にはまったく意識できない
  • 感覚遮断タンク
  • 「タンクにしばらく入っていると、自分の自己意識の中心が1センチだけずれた」(ファインマン)
  • シンクロニシティー
  • 0.35秒(無意識(運動準備電位)と意識(動かそうとする瞬間)の時間のずれ)
  • 「イリュージョン」=「空」
  • 五蘊非我
  • ニヒリズムの思想
  • 本能的反射
  • 幸福というイリュージョン(他人よりもうまくいっていると幸せに感じる傾向)
  • 時間間隔が無限大になる瞬間
  • 「足るを知る」(満足)
読後感:「意識」の発生起源。その解明は、現代科学の最難関にして最後のフロンティア。考えてみれば、 今からちょうど100年ぐらい前に「量子力学」が誕生し、今日のナノテクノロジーにみられる物質科学の百花繚乱期を迎える。 100年前にだれが、この発展(と少し(?)の弊害)をリアルに想像できたであろうか。 そして、これからの100年の科学やいかに。「脳科学」は「意識」の謎を解き明かせるのだろうか。 そのような時代の到来を、この目で是非見てみたいものである。たとえ、それが世界を、 映画『マトリクス』に近い世界へと招くことになろうとも(ヒトの好奇心は自制心にたびたび勝ってしまうものだから・・・)。 それと、ロジャー・ペンローズ先生が提唱したマイクロチューブル説(脳内チューブ状タンパク質の波動関数収縮による意識発生メカニズム)は、 今一体どのような“扱い”となってしまっているのでしょう? 気になるところです・・・。
追記:波動関数収縮を観測する簡単な実験方法は、日経サイエンス(2007.8月号)の記事『“量子消しゴム”実験』をご覧あれ。 また、波動関数収縮と観測問題ついては、デイヴィッド・ボームの量子論に関する著書に詳しい。(2007年7月4日おつけ)
追々記:先日、卒研生の平澤君と水島さんと同じ実験を試してみたところ、(なかなか難しい実験ですが)スクリーンの手前に目の焦点を合わせて、 じっと目を凝らして見れば、3枚目の偏光板の0⇔π/4⇔π/2回転にともなって細かな干渉縞が現れたり消えたりしているように見えました (見えたような気がする・・・)。(2007年7月11日おつけ)
追々々記:気になっていたので、また性懲りもなくやってみたところ、3枚目偏光板透過軸のΔθ=π/4で、 重なり部分の干渉縞は非常にきれいに見ることができました。実験条件は、以下のとおり。 赤色レーザーポインター(LR)のビーム孔径:φ1mm、ビームセパレータ(BS)(クリップ使用):φ1mm、LR-BS間距離:50mm、 スクリーン(SC)に紙を置いて、LR-SC間距離:200mm、 経路リペラー(2枚目の偏光板)を透過した2ビームの重なりでできるゾウリムシ型スポットのサイズ(p.82の実験2):20mm×5mm、以上。 興味のある方は、さっそく試してみよう!しかし、こんなにもきれいに量子干渉縞ができるのなら、何か自分の研究にも応用できないのだろうか?!  (2007年7月13日おつけ)
○『工手学校』 茅原健著(2007年6月10日読了)
  • 菊は栄える、葵は枯れる
  • 幕臣の紐帯
  • 中堅技術者の教育機関「工手学校」(工学院大学の前身)
  • 沼津兵学校(初代校長・西周)
  • 東洋英和学校と麻布中学
  • 田口卯吉と明治女学校
  • 西周の独逸学協会学校(独協大学の前身)
  • 成瀬隆蔵と商法講習所(一橋大学の前身)
  • 山本覚馬(会津藩)と同志社英学校(同志社大学の前身)
  • 押川方義と仙台神学校(東北学院大の前身)
  • 静岡学問所
  • 私学三大校(中村正直・同人社、福沢諭吉・慶応義塾、近藤真琴・攻玉社)
  • 工部権頭兼製作頭・大鳥圭介(学習院院長、工部大学校校長)
  • 工部省
  • 工学寮
  • 工部大学校(東京大学工学部の前身)
  • 東京職工学校(東京工業大学の前身、九鬼隆一、浜尾新、手島精一、正木退蔵、山岡次郎)
  • 渡邊洪基(38歳で帝国大学初代総長)
  • 帝国大学工科大学
  • 工学会(日本工学会)
  • 技術者を補助する「工手」
  • 攻玉社工学校
  • 東京物理学講習所(東京理科大学の前身)
  • 東京商工徒弟講習所
  • 官立電信修技学校(幸田露伴は卒業生のひとり)
  • 大学南校(旧幕府蕃書調所、洋書調所を前身として法・文・理をもった欧米型総合大学)
  • 工部大学校(工部省工学寮工学校を前身とする)
  • 大倉商業学校(東京経済大学の前身)
  • 工手学校の設立は、旧幕臣たちの技術教育立国に連なる系譜にある
  • 宮武外骨
  • 渋沢栄一(武州血洗島出身)と工手学校
  • 徳川育英会育英黌農業科(東京農業大学の前身)
  • 舎蜜学(化学)
  • foreman(工手)「職長」、「班長」
  • 国木田独歩『非凡なる凡人』
  • 磁気学大意、電気学大意、基礎大意、物理学初歩、舎密学初歩
  • 東京工科学校(日本工業大学の前身)
  • 電気学校(東京電機大学の前身)
  • 早稲田工手学校
  • 「夢」(渡邊洪基の墓標)
  • 一所懸命
  • 杉浦重剛と日本中学校
  • 東京開成学校
  • 私立工学校協和会(攻玉社工学校、工手学校、岩倉鉄道学校、東京工業専修学校、東京商工学校、電機学校、 東京工科学校、中央工業学校、早稲田工手学校、東京工学校、川崎工手学校、東京鉄道学校)
  • ものづくりの旗手たち
  • ひたむきに生きる
  • 工手学校のスピリット=七転び八起きの根性
  • 未来は如何にあるべきか。自らの得意になる勿れ。自らの棄るに勿れ。黙々として牛の如くせよ。 孜々として鶏の如くせよ。内を虚にして大呼する勿れ。真面目に考えよ。誠実に語れ。摯実に行え。汝の現今に播く種はやがて汝の収むべき 未来となって現るべし。(夏目漱石の日記(明治三四・三・三))
  • 松本医科専門学校(信州大学医学部の前身)
  • 実地を重んじた校風
  • 速やかに校名を変更する(日本高等工学院→東京高等学院→東京工学校→築地工学校→工学院(institute=「院」))
  • 利用為大作(用って大作を為すに利し)
  • 大作(大きな夢)
  • 金科玉条
読後感:こういう著書を読んでみると、明瞭な建学理念と直結した企業立学校も既にあったようだし、 明治期の学制の方が学校の目指すべき個性や専門性をはっきり示すことができていたような気がする。 紋切り型のミニ東大を目指すばかりの現状に比べれば・・・、ね。
○『間の取れる人 間抜けな人』 森田雄三著(2007年6月9日読了)
  • 「間」のない人の話は、息苦しい
  • コミュニケーションの強迫観念
  • 聞き手は、「話の内容」より「話し手の状態」を見る
  • 自分を立派だと思っている(弱みを見せたくない)人の話は、コミュニケーションとうより「自慢話」となり、「説教」となる
  • 「困る」自分を受け入れ、相手の優しい眼差しを感じ取ることができてこそ、心の交流は生まれるのだ
  • 育ちのよい人には「嫌いな人がいない」と思う習慣(躾)がある
  • 丁々発止
  • 仏頂面
  • 愚の骨頂
  • 「言葉」より「身体」が大事
  • あきらめが肝心
  • 小いばりの世界
  • 自尊心の世界
  • 一目置かれていると思っている(思われたい)
  • 大いばりの世界
  • 「自分の分」を忘れてしまった日本人
  • スタバ女
  • 言い訳の蔓延
  • これまでは一部の文学者を除いて、だれも「自分の心」になぞに興味を抱かなかったのだ
読後感:教員も「話」をする職業にある以上、学生との「間」の取り方は重要。一般的に「頭がいい」と思われている大学教員の中にも、 一方的に自分の思いを晴らすでしかお話をされない先生も多いので、 恐らく話の「間」のとり方というのは、いわゆる「頭」のよしあしとは異なる能力のひとつなのでしょう。 本書が指摘するように、話の「間」の取り方の上手でない人に限って「小いばり世界」系の人であるっていうのは、至極納得です。 そんなに“小いばりたい”なら、もっとよそに行ってやってくれば、って感じでしょ。 その点、間の取り方を心得た大物さんが語る「大いばり」の話は、痛快で聞いている方もまた、非常に愉快な気分にさせられるものです。
剣道でもこの「間」のとり方、すなわち「間合い」は技を決めるための大切な奥義となりうるもの。 なぜなら、もしも戦場(いくさば)で、この「間合い」を読み違えて対戦でもしようものなら、 確実に一刀の下に切り捨てられてしまうのだから・・・・。 剛の者かどうかを読みきれずに、「間」違った「間合い」をとってしまうのは、愚か者。すなわち、これを「間抜け」と申すのでしょう。 人間関係において、「間合い」が近すぎるのも馴れ馴れしいし、 また「間合い」が遠すぎるのも臆病なのか猜疑的なのか、人に取りつく島を与えないし・・・。 要は、「間」のとり方っていうのは脳の高次機能をフル回転させなくては得られない難しい判断のひとつ、と思っていれば、 まずはよろしいでしょうか。確か、かのハーバード大学では、ハーバードの卒業生に要求される全人的な資質として、 最も大切なことは「どのような相手とも、適切な会話をできること」、もっとも恥ずべきことは「その場に、不適切なことを問うてしまうこと」、 とされていると、どこかで読んだことを記憶しています(つまり、自分の狭い土俵の上でしか話のできない奴に用はない、ってことですか)。 そう考えると、まさにハーバード大学の教育は、幅広い教養によって裏づけられる「間合い」取りのための教育といっても、過言ではないのでしょうか。
○『自由と繁栄の弧』 麻生太郎著(2007年6月8日読了)
  • 中国の華夷秩序
  • 日本も「いい歳」なんですから、鏡に映した我と我が身にもじもじするような、そんな態度はもうやめましょう
  • 尊大にも、卑屈にもならないのが一人前の態度
  • 法の支配、契約の遵守、十七条の憲法、貞永式目
  • 「貸本屋」と「封切り」
  • 読書階級
  • 民主主義のマラソン
  • 新機軸
  • 北斎漫画
  • 東は西へ、西は東へ
  • ワンサイズ・フィッツ・オールの処方箋はありません
  • 服部禮次郎氏
  • 「人は石垣、人は城」(武田信玄)
  • 欲求不満集団
  • 着眼大局・着手小局
  • 麻生(家)の気風、「宮様からヤクザまで」
  • ナショナル・ナイト ジャパン・ナイト
  • ポッシュな(取り澄ました)
  • 振幅の激しい精神遍歴、憧憬と劣等感
  • 「カワイイ」、「カッコイイ」
  • to think the unthinkable(考えられないことを、考える)
  • 従者の発想
  • ネトウヨ(ネット右翼)
  • とこしえの恩義
  • 歴史の「生まれ出ずる現場」
  • ソートリーダー(実践的先駆者)、ビルトイン・スタビライザー、ピア・ツー・ピア(P2P、仲間対仲間)
  • 世界の中を階統秩序(ハイアラーキー)では見ない
  • アジア人とは「楽観論者の別名」
  • 「おしん」の人生観(未来の明るさを信じる前向きの生活信条と、そのために今日、足元の苦労を厭わず、 骨惜しみしないで働く労働倫理)
  • アジア楽観主義
  • 欣快
  • 無辜の民
  • 国対国の関係に、上下概念を持ち込まない
  • 援助漬け
  • 万古不易
  • ヴィート・パワー(拒否勢力)
  • 日本よ、かくあれかし
  • 責任あるステークホルダー(企業、行政、NPOなどにおいて利害と行動に直接・間接的な利害関係を有する者)
  • 人はパンのみに生くるものにあらず
  • 「ニッポン」というブランド
  • 日中共益
  • お互いが裨益しあう関係
  • 3J(Jアニメ(ジャパアニメーション)、Jポップ、Jファッション)
  • 椎名林檎
  • 谷村新司「昴」
  • 日中韓賢人会議
  • 量子の飛躍(quantum leap)
  • rags to riches
  • 進まぬ改革、老い早く
  • 世界は孤立、個人は孤独
  • 陰の極
  • アジアンドリーム
  • 弱い環、不安定な弧
  • 理外の理
  • 経路依存性(path dependency)
  • 経綸と経験
  • 「なせばなる」という気概
  • 「ODA 情けは他人のためならず」
  • 仕事に打ち込む賢明さ。骨惜しみしない努力。それを率先垂範。
  • ハードハット(ヘルメット)
  • 日本人の美質
  • 魚は自分で釣ってくれ
  • 「友情・努力・勝利」(「週刊少年ジャンプ」の編集方針)
  • ポップカルチャー
  • 日本人の常識は世界の非常識などと言うが、日本人がアフリカでもっと働くようになると、日本の常識は素晴らしいと言われるようになる
  • 援助哲学
  • 志操(無言であっても極めて雄弁な、日本人の思想)
  • ハードパワー(軍事力、経済力)とソフトパワー(価値観、文化、政策)
  • WTO(世界貿易機関)
  • EPA(経済連携協定)
  • オールジャパン
  • どこで譲ってどこで勝ったといった星取表を覚えこんでいる海千山千ばかり
  • 「ガット屋さん」と「ガッチャマン」
  • GATT(関税と貿易に関する一般協定)
  • FTA(自由貿易協定)
  • なかんずく
  • 「オーナーシップ」と「パートナーシップ」
  • 「モーニング」、「ビックコミックオリジナル」、「イブニング」、「少年ジャンプ」、「アフタヌーン」
  • 『ドラえもん』、『ポケットモンスター』、『ジパング』、『太陽の黙示録』、『インパクト』、『ふたり鷹』、『銀河英雄伝説』、 『エリア88』、『ゴルゴ13』、『こちら葛飾区亀有公園前派出所』、『浮浪雲』、『弐十手物語』。『テニスの王子様』、『巌窟王』、 『蟲師』、『ヴィンランド・サガ』、『キャプテン翼』。『ポパイ』、『加治隆介の議』、『警視正椎名啓介』、『課長島耕作』、『のらくろ』、 『三国志』、『項羽と劉邦』、『イーグル』、『忍者武芸帳』、『サスケ』、『宇宙戦艦ヤマト』、『バツ&テリー』、『俺は俺』、『犬夜叉』、 『ローゼンメイデン』、『ブロンディ』
  • 白洲次郎
  • 英雄待望論
  • 役所なんかにいて、東大で一番、国家公務員I種試験で一番、財務省入省試験で一番なんていう若い奴らがごまんといる。でもそういう奴は 絶対次官にならないもんな。むしろなる人はビリだったような人が多い。
  • ピースメーカーの『寺子屋』
  • スマイル作戦
  • リード国
  • 刀狩
  • ポップな「ニッポン」印
  • 文化外交
  • 東京・デジタルハリウッド大学
  • 無形文化財
  • 人形浄瑠璃
  • 備前焼
  • 「伝統」と「わざ」
  • ロボータ(チェコ語労働)
  • 「禅」の文化
  • 「桜の花咲く」
  • 枕詞
  • ポップには大衆浸透力がある
  • アニメ人気と日本語ブーム
  • アニメ文化大使
  • 「キャプつば」印
  • 広島大学連携融合事業「平和構築と社会的能力の形成(HiPeC)」
  • 尊敬措くに能わざるもの
  • 如上の目的に資すべく
  • 他策なかりしを信ぜんと欲す
  • 陸奥宗光伯
  • 苦汁を忍ぶ
  • 偉大な先達
  • 「博士の愛した数式」
  • 「下妻物語」
  • 忝し
  • 外交で使う「武器」は、一にも二にも「言葉」
  • 屈強なマリーン
  • 大平正芳「環太平洋連帯構想」
  • 瞑目
  • 朝に希望、昼に勤勉、夜の感謝
  • 基礎に戻って大局をみる
  • −神よ、変えることのできるものについては、それを変える勇気と力を与えたまえ。変えることのできないものについては、 それを謙虚に受けいれる心を与えたまえ。そして願わくば、変えるべきものと、変えるべきでないものとを 見分ける知恵を与えたまえ。 (神学者ラインホルド・ニーバー)
読後感:一般大衆への政治家的なアピールを差し引いて考えたとしても、稀代のポップ系大臣であることは問うに及ばず、です。 時代は急激に様変わりしています。「絶対に、かくかくしかじか」、みたいなモノやコトが通用しなくなってしまった現代社会。 指導的立場にある人々の保とうとするべき威厳や権威も、またしかり。矜持と打算と妥協のせめぎあいの中で、それをどう保つべきか。 しかしそれは、時代の流れをストレートに読み解くことのできる人には、何の苦もなく見えている。 よって、古びたプライドに縛られることもなし、世界に対して臆することもなし、か。
最近、僕は(愛好家とはいえないまでも)かなりの種類のマンガを“読む”ようになりましたが、 この著書の中で麻生大臣が紹介しているマンガには、僕自身まだ読んだことのないものも多く、 今回自分の不勉強さを改めて痛感した次第です。 望むべきは、Jサブカル系の学系を有し、そのメディ教育を標榜し邁進する工芸大にこそ、 麻生大臣のような方に一度是非ご来学頂き「外交からジャパニメーションまで」を全学特別講義としてレクチャーして頂きたいものです。 そのときは是非、ひとりの学生となって、聴講させて頂きたいと思います。 麻生大臣の文化外交の今後のご活躍を楽しみにさせて頂くとともに、 ジャパンカルチャーを理解し、愛することのできる粋な平成の白洲おじ様、 また文化形成・文化運動の推進役を務められる現代の本阿弥光悦様としても応援しておりますので、がんばってください。
○『とてつもない日本』 麻生太郎著(2007年6月6日読了)
  • 「ノーキ」を守る勤勉さは、私たちが思っている以上に、素晴らしい美徳なのである
  • 日本の底力
  • 日本はとてつもない国なのだ(吉田茂)
  • ソート・リーダー(実践的先駆者)
  • ビルトイン・スタビライザー(財政安定化装置)
  • ピア・ツー・ピア(P2P)
  • 援助漬け
  • 正論 異論
  • 若旦那
  • 動機づけの手当
  • 十把一絡げ
  • 「ロボット」と「ロボッタ」(チェコ語強制労働)
  • 過去現在因果経
  • 絵因果経
  • 『偐紫田舎源氏』
  • 藤原隆能『源氏物語絵巻』
  • 同じ父母の間に生まれ、同じ屋根の下に育てられても、人間は平等には育たない
  • 躾教育
  • 選択の自由
  • 平準化教育
  • 気持ちのいい人、波長の合う人
  • 若さ至上主義と少子高齢化
  • 老中、若年寄
  • 「お子様ランチ」、「シルバーランチ」
  • 平等信仰者
  • 「結果」の平等の建前から、「機会」の平等へシフト
  • 格差社会
  • 規制緩和悪玉説
  • 戦前の「エリートコース」(役人ならば東大、学者は京大、政治家なら早稲田、先生なら師範学校、 商社に入るなら高等商業、軍人なら陸士・海兵・・・)
  • 川筋者、川筋男
  • 麻生太吉、太賀吉、太郎
  • 九州工業大学情報工学部の創設
  • 一割経済
  • 廃藩置県
  • 三割自治
  • 喧嘩の強いA君(アメリカ)、腕力はそれほどでもないがカッコよくて頭のいい一目置かれるB君(フランス)、 腕力もなく身につけている服や持ち物は個性的で良質なのにカッコよくないけどお金持ちのC君(日本)
  • ヴィートー・パワー(拒否権)
  • 「去年今年 貫く棒の如きもの」(高浜虚子)
  • ターンアラウンド(事業再生)
  • 「自由と繁栄の弧」
  • ポーランド日本情報工科大学
  • Manggha(マンガ)
  • グレート・ゲーム(覇権争い)
  • ビジョンとは大風呂敷である
読後感:こんなにもマンガやアニメのことを臆面もなく語っちゃう政治家のおじ様は、はじめてじゃないですか。 イデオロギーとか抜きにして、一人の人として、 変な西欧コンプレックスを持ち得ない麻生大臣は掛け値なく、明るく屈託のない御仁であります。 この快哉さは、やはり祖父・吉田茂宰相ゆずりなのだろうか・・・。
○『破天荒力』 松沢成文著(2007年6月5日読了)
  • 公魚(わかさぎ)
  • 塔之沢「福寿楼」
  • 宮ノ下「富士屋ホテル」
  • 花御殿
  • 唐破風、入母屋
  • サムライ・スピリッツ=“私”を薄くして、“公”のために尽くそうという気高き心、誇りある心のあり方≠武士道
  • サムライ・スピリッツ≠武士道
  • ノーメンクラーツ(共産貴族)
  • 貪官汚吏
  • 清廉な魂
  • 経済道徳合一説(渋沢栄一)
  • 「国権」の暴走
  • 拝金主義
  • 企業は社会の公器
  • 破天荒な「奇妙人」
  • 自分の利益のためでもなく、誰かに強制されたわけでもなく、とにかくコツコツと工夫するのが好きな人
  • 工夫して得た成果を、無償あるいは無償に近いかたちで公開し、誰かがそれを活用する姿を眺めるのを無上の楽しみとする人
  • 箱根人
  • 箱根の奇跡
  • 山口仙之助
  • 高橋是清(仙台藩出身、米国奴隷生活、ダルマ宰相、二・二六事件)
  • 駒場勧業寮(東京大学農学部の前身)
  • 邏卒
  • 塾員
  • 温泉旅館「藤屋」(小田原北条攻めで豊臣秀吉も宿泊、のち冨士屋ホテルへ改称)
  • ハーミテイジ(隠者の庵)
  • 義挙
  • 峻険
  • 共存共栄
  • 冨士屋vs.奈良屋
  • 『慶應義塾出身名流列傳』
  • 経済人は国家や地域のために資する者でなければならない
  • 彼のあまりの一徹さに微苦笑を禁じえない
  • 冨士屋は英語、奈良屋は日本語でしか広告を出してはいけない
  • 明治人の気骨
  • 収集精査
  • 戸数わずか100戸の横浜村
  • 緒方洪庵の適々斎塾(通称「適塾」)
  • 幕末の志士・橋本左内、近代軍制の創始者・大村益次郎
  • 飛竜
  • 朝野の別なく
  • ひたすら学べ。諸君らの戦場はここにある。
  • 『学問ノスヽメ』
  • 「分限」を知る
  • 「自由」と「我儘」の混同
  • 福沢小学校、福沢神社(南足柄市)
  • 学問は実学であるべし
  • 壮士やエセ知識人
  • 刎頚の交わり
  • 頑固親爺
  • 国学一等助教(小田原藩の藩学と「共同学校」)
  • 武士(もののふ)、壮士(ますらお)
  • 小田原電気鉄道株式会社
  • 徳は孤もならず
  • 二律背反
  • 衆愚政治
  • 欣喜雀躍
  • 経済を伴わない道徳は戯言である。しかし、道徳を伴わない経済は罪悪である。(二宮尊徳)
  • 金儲けがうまい人
  • 拝金主義が跋扈する現代
  • 沈思黙考、刻苦勉励の「土手坊主」
  • 金太郎伝説
  • 尾崎咢堂(行雄、津久井町出身)
  • 「天地の真理は不書の経文にあらざれば、見えざるものなり」(『二宮翁夜話』)
  • 「この不書の経文を見るには、肉眼をもって一度見渡し、しかしてのち肉眼を閉じ、心眼を開きてよく見るべし」(『二宮翁夜話』)
  • 小田原藩家老・服部十郎兵衛
  • 以徳報徳
  • 「無難」「中難」「極難」
  • 人心掌握術
  • 二宮尊徳の報徳仕法(至誠、勤勉、分度、推譲、積小為大、一円融合)
  • 修身斉家治国平天下
  • 寄付文化 ロータリー・クラブ ライオンズ・クラブ
  • 分度をわきまえて身の丈に合った生活
  • 日本のマニュファクチュア(家内制手工業)
  • 口入れ業者
  • labor(神から与えられた罰としての労役)
  • 不忠の臣
  • 盗人猛々しい
  • 勤勉=人間は勤労を通じてこそ知恵を磨き、自己を向上させることができる
  • 二宮尊徳研究センター(大連民族学院(大学))
  • 薫陶
  • 魂と志の連鎖
  • 二宮尊徳、福沢諭吉、福住正兄、山口仙之助
  • 箱根組子細工とロシア民芸品マトリョーシカ
  • 箱根庭園
  • 銀行家・平松甚四郎が堂ヶ島、大蔵財閥・大倉粂馬が塔ノ沢、三菱財閥・岩崎弥之助が湯本に別荘を設ける
  • 箱根七湯
  • 箱根離宮
  • 「自動車」と「自働車」
  • 無聊をお慰め
  • 負けじ魂
  • 立教大学観光学科の設立と山口(金屋)正造
  • 萬国髭倶楽部
  • くちひげ(髭)、あごひげ(鬚)、ほおひげ(髯)
  • 富士屋ホテル=髭
  • 涅槃経(色は匂へど 散りぬるを わが世誰ぞ 常ならむ 有為の奥山 今日越えて 浅き夢見し 酔もせず)
  • 人民は謙虚、勤勉、敦厚にして、その拠れる地は天恵に富めり
  • 「Iの時代」から「Weの時代」へ
  • 先進力+協働力=神奈川力
  • 「奇妙人」の「破天荒力」は「神奈川力」の源泉
読後感:箱根の開発の歴史は、近代神奈川の歴史ということがよく分かりました。富士屋ホテルかぁ、敷居が高いなぁ。 でも、いつかは「いざ、富士屋ホテルへ」みたいな。 そのためには僕も、もっと「奇妙人」に、もっと「破天荒」にかぁ。・・・・がんばろ。
○『武士道』 津本陽著(2007年5月28日読了)
  • 岩尾の身
  • 武士は二君に見えず
  • 武勇と臆病
  • 戦国期の武士は、主人をとれだけ変えても批難されなかった
  • 大名が家来を選ぶのは当然
  • 家来が大名を選ぶのも当然
  • 恩の死はせねど、情の死はする
  • 首級
  • 武辺者
  • 古つわもの
  • 体力、知力、胆力
  • 高位の人物
  • 色代(挨拶)
  • 推参者
  • 花房助兵衛
  • 当時の気骨ある侍は、日本の専制君主の威光さえはばからず、信条に従った判断を公然と口にした
  • 首をとられ、全身の血が流れ出て、子供のように縮んでしまった将士の屍骸
  • 武士道を「死ぬことをみつけたり」などどと軽々しくいわない
  • 麾下
  • 歴戦の猛者
  • 修羅の境地から逃れられない侍の意地をつらぬき通す唯一の道
  • 先手衆
  • 扶桑唯一
  • 我攻め
  • 万死に一生を期す
  • 葉武者
  • 戦って益なし
  • 生者必滅、会者定離
  • 奇矯な死
  • 羽柴=柴田+丹羽
  • 彼らは感情を外に表さず、憤怒をおさえており、怒りに駆られた行動はとらない
  • 人をおとずれたとき相手に不愉快なことをいうべきではないと考えているので、自分の苦労、不幸、悲嘆を口にしない。 逆境にあってもつよい勇気をあらわすべきであると思っている
  • それでどんな苦境にあっても他人に一言も語らないか、あるいはそれをものともしない表情で、笑い話にしてしまうのである。 一切の悪口、批判を語るのを嫌悪するので、重要な問題については書信によるか、第三者を通じておこなうのが、日本での一般習慣である(であった)
  • たがいに敬意を失うことはない
  • 日本人の三つの心=偽りの心、友人にのみみせる心、わが体内に深く隠し、誰にも秘密とする心
  • 優勝劣敗の心
  • 武士道徳
  • 武勇と廉恥、弱者へのいたわり
  • 綸旨
  • 信長の「天下」という軍事政権
  • 猜疑心と攻撃性(信長の特徴)
  • 織田家と敬神の心
  • 貴様(きせん)
  • 掉尾の精華
  • 調略
  • 真田幸隆、昌幸、幸村
  • 男は一度光りゃいい
  • 沈香も焚かず屁もひらず
  • 寝刃
  • 評定
  • 真言を唱うれば後向きにも勝てる(柳生石舟斎)
  • 不世出
  • 『徳川実記』
  • 今生の暇乞い
  • 侍の花
  • ノブレス・オブリージュ(高位の人の義務)
  • 仮にも不義にして悪しきことなきよう
  • 人の可塑性(ドリシティー)
  • 「鳥飼い」という精神教育(新陰流、流儀の太刀をまちがいなく正しく遣えば、相手の太刀先がわが身に絶対に 当たらないという自信を植えつけること)
  • 人の脳の成長:出生時400グラム、五歳1360グラム(成人の97%)、二十歳前後1400グラム
  • 二つ頭(びんた)
  • 大学、中庸、論語、孟子の四書、五経(易経、詩経、書経、春秋、礼記)
  • 素読と習字
  • 逡巡、うろたえは日頃の心胆の練りが足りないから
  • 「飛ぼかい泣こない」「泣くよかひっ飛べ」
  • 稚児の九ヶ条
  • 一.忠孝を旨とし、文武の鍛錬をはげめ。
  • 一.礼儀をわきまえ、郷中の団結を心がけよ。
  • 一.山坂達者をはげめ。
  • 一.何事にも詮議をつくし、方針が決まったのちは異論をたてず、いいわけをするな。
  • 一.嘘をつくな。弱音を吐いてはならない。卑劣なふるまいはするな。短気をおこすな。
  • 一.弱いもをいじめるな。
  • 一.目上を重んじ、親に反抗するな。
  • 一.無刀で門外に出てはならない。脇差一本を身につけて、町の辻角をまわるな。
  • 一.いかなるときでも刀を抜いてはならない。抜けば、ただでは鞘に納めるな。
  • 薩摩兵児の士風、「やっせんぼ(役立たず)」と「ぼっけもん(快男児)」、「きれいご免さあ」
  • 常在戦場の心構え
  • 一の太刀は疑わず、二の太刀は負け
  • 私心を捨て、一身をなげうつ
  • 文明とは、道徳が広く実践されることをいうもので、官庁の荘厳、衣服の美麗、外観の見事さをいうのではない
  • 英雄豪傑
  • 天品と人品
  • 恥を知らぬが畜生なり、武士は死しても名を残す
  • 臍を噛む
  • 生死一如
  • 体は借り物であり、たとえ体が滅びつぶれても、自分は滅びない(臨済宗)
  • 武士は食わねど高楊枝
  • 至誠欺かず
  • 懸待表裏一偶を守らず(新陰流の理、上泉伊勢守)
  • 無形の位
  • 水月の間合い(五間約9.1メートル)
  • 攻撃精神の純粋持続
  • 無心の先、先という気持ちがつづいて、おのずからそういう技が出るのです。相手をだまして勝つようなのは、次元の低い技なんです
  • 魂を忘れ、自らを失ったような人間
  • 指弾
  • 勇のこと(柳生石舟斎『截相口伝書』)
  • 「キリムスブ カタナノシタコソ ジゴクナレ ミヲステテコソ ウカブセモアレ」
  • 真正の才知とは、豪毅の精神である
  • 道徳律
  • 日本刀の破邪顕正の剣
読後感:常日頃、瞬きの間のびした生活をしている僕は、武士道の本など読むとき、非常に力んでしまいます。 あまりの対極な世界観ゆえ、恐らく一種の「怖いもの見たさ」の感覚で、買い読みしてしまうのでしょう。
○『正義のミカタ』 本多孝好著(2007年6月4日読了)
  • なぜ季節は春からはじまるのか。
  • 名前を書けば受かるあんたの大学と違うのよ
  • 僕は、決意した、強く、深く、決意した
  • いじめっ子が一割、いじめっ子の友達が二割、無関心派が六割、いじめられっ子が一割
  • 正義の見方研究部
  • 親の年収を答えられるって、それだけでもう貧乏なんだよ
  • 「欲がある。それは悪いことじゃない。人間なら、誰にでも欲望がある。それが、ただその人の中にとどまっている分には何も問題がない。 その欲望を正当な手段によって満たそうとすることにも問題はない。欲望というのはね、正当な手段、つまりその人自身の汗と、少しばかりの運によって 満たされるべきものだ・・・」
  • たかだかこんな時計ひとつで、人は人を見誤る
  • 「やり直しがきく。どこかでそう思っているのさ。大学生って生き物はね。」
  • スカ大
  • 僕よりいい大学を出た人が、会社では僕より上にいて、それでも別に仕事ができるわけではないその人は、 誰にも認めてなんてもらえないから、ただ僕に向かって威張り散らしてその憂いさを晴らすのだ・・・
  • 馬鹿馬鹿しいけれど、それが僕の住む世界なのだ
  • このままじゃいけない。
  • 正義に打ち勝てるのは、恐怖しかないのだろうか?
読後感:今も昔も学生って、こういうシビアな生存競争の矢面に立たせれて生きている。 頭のいい人とわるい人、いじめられっ子といじめっ子、運動神経のあるヤツとそうでないヤツ、 かっこいい人とかっこわるい人、きれいな子・かわいい子とそうでない子、 もてる奴ともてない奴、お金持ちとそうでない人。 持つ者と持たざる者に二分される世界。“若さ”とはうらやましくもあり、残酷でもあり。 グレーゾーン(妥協、諦観、寛容)のまだ狭いそんな世界のあったことを、 しばらく忘れかけていたけれど、でもそれはある意味、その後の社会も同じかな。 強固な「本音」と「建前」の牙城は、世の中にしっかり健在。授業中、学生に言っていることと、授業外、学生以外の人に言っていることが、 矛盾していることなんて、日常茶飯事。でもそこで、本当の一致のある人、内省の中に生きることができる人こそ、 信頼に足りうる高潔漢なのでしょう。到底無理かなぁ、今の僕には・・・。
○『地球温暖化/人類滅亡のシナリオは回避できるか』 田中優著(2007年6月1日読了)
  • 日本人の同質依存性
  • ポジティブ・フィードバック(「雪だるま」式、悪循環or好循環)
  • 温暖化の原因は人為的なもの
  • 熱塩大循環
  • カネと権力を背景とした陰謀
  • 島嶼国
  • 温暖化=地球汚染
  • 「温暖化より大事な問題がある」というのはまさに人間的
  • ノー・リグレット・ポリシー(後悔しない政策)
  • シベリアのメタン噴出と日本の木材輸入
  • 温暖化と木の成長速度、森の立ち枯れ
  • 燃えるシャーベット(メタンハイドレート)
  • 全球蒸発
  • 「太陽光を反射する」氷河が溶け、「熱を吸収する」水へ
  • 恐ろしい未来予想
  • 地球温暖化の進行の脅威は、テロの比ではない
  • 「2012年までに45億人が死ぬ」説
  • 温暖化を原因として戦争が起こる
  • ガイア仮説(ジェームス・ラブロック博士)
  • 「この10年に大きな変化を起こさなければ、人類は滅亡しかけない」(ジェームズ・ハンセンNASAゴタード宇宙研究所長)
  • 氷河湖決壊洪水
  • 「地球温暖化は進んでいない」(ブッシュ大統領)
  • 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第4次報告書
  • 2.4度上昇で20−40億人が水不足
  • 「ピークオイル問題」が2010年頃にくる
  • 油田だけが絶対に儲かる⇔戦争
  • ヨーロッパは既に自然エネルギーに移行しつつある
  • 悲しい「自殺の惑星」
  • 温暖化と軍備・戦争
  • 代替フロン「134A」(ニ酸化炭素の3400倍の温室効果)
  • オール電化
  • 緑のカーテンとよしず
  • 人間が快適と感じているときは、体から発する熱量が最低になっている
  • ap bank(桜井和寿さん、小林武史さん、坂本龍一さん)
  • オ−ストリアの自然エネルギー70%
  • 欲と二人連れ(ヨーロッパ人の賢さ)
  • キャパシタ「ECaSS」(木炭、アルミ、水)
  • サンヨー「エネループ」
  • 電気を貯める
  • 電気局
  • アメリカの風力発電建設ラッシュ
  • 仕組まれた合理性
  • 往復8kmの道のりを自動車から自転車に替えると、1800gの二酸化炭素を減らせる
  • 国際連帯税
  • 炭素税
  • 非電化冷蔵庫・クーラー
  • 対流熱、伝導熱、輻射熱
  • 放射冷却
  • 未来バンク
  • 100年後を見据えた政策
  • バック・キャスティング(ヨーロッパのような、100年後の将来から逆算する考え方)
  • フォワード・キャスティング(日本のように、今の時点から進める考え方)
  • 人類滅亡の危機を救うのは一人ひとりの「可能性」
  • 地球温暖化のポジティブ・フィードバック
  • 「僕は人並みには苦労したと思うし、人並みには努力したと思う。でも、人並みにはずれた収入を得てしまって、 このままではいつか罰が当たると思っていた。その頃病気になって『そらみたことか、やっぱり罰が当たったんだ』と思った」(桜井和寿)、 私にはとてもそうとは思えません。彼は率直だし、正直だし、謙虚を絵に描いたような人ですから。
  • 歴史に例のない「未来を決めてしまう10年」
読後感:70年代、オイルショックに見られたパニック群集心理。安定と安心への希望未来予想が脅かされたときの、人間と社会の脆さ。 また同時期に経験したオイル加工工業の発展にともなう化学汚染・環境汚染。それらによる食物汚染や環境病から経験した身体的生物的な脆さ。 このとき人は、我々自身が食べ物や病気といった基本欲求や生存にかかわる部分に直接痛みや脅威を感じるまで、 本腰を入れてなかなか動けない生き物であることを、 学んだはずである。で、実際にそのときそれらを、人は知恵を持って克服することができた。
では今回の地球温暖化は、どうなのだろう。その脅威のスケールや、いかに。 オイルショックや化学汚染の程度であってくれれば、よいのですが・・・・・・・・・・
○『異次元は存在する』 リサ・ランドール + 若田光一 著(2007年5月31日読了)
  • わたしたちの暮らす3次元世界は、人間の目には見えない5次元世界に組み込まれている。
  • わたしたちの住むこの宇宙は、3次元の膜(メンブレーン)のようなものの上に貼り付けられている。
  • スライスしたパンのひとつひとつがわたしたちの住む3次元世界。ほかのパン、すなわち他の3次元世界が存在する可能性もある。
  • 英数学者エドウィン・A・アボット『フラットランド』
  • 平面の国
  • この間(3次元時空同士の間)を行き来しているエネルギーが重力
  • 衝突で粉々になった粒子は、ある確率で姿を消すことが予想されている。本来消えるはずのない粒子が姿を消すことが確認された場合、 粒子が姿を消した先が見えない5次元時空であると考えられる。
  • 微小重力環境
  • 宇宙の始まりに蓄えられていた巨大なエネルギー
  • ダークエネルギー70%、ダークマター25%
  • 研究に没頭していると、あまりに課題に集中しすぎて、今、自分が何をしようとしているのか、ということを見失いがちです。
  • もっとフラットな目で自分の取り組んでいることを見つめてみる
  • curiosity(探究心)、understanding(理解力)、friendship(友情)
  • 余剰次元とコンパクト化
読後感:リサ・ランドール先生は、ハーバード大で教授を務められる若くてきれいな新進気鋭の理論物理学者。 新しいモデルをつくる仕事(研究)は、そのモデルが単純であればあるほどに、美しく。 一生懸命、金属を変えたり、置換基を代えてみたり・・・・、 泥くさ〜い銅鉄主義で日々に埋没する研究者にとっては、手の届かない憧れの研究領域、エレガントな世界。ですなぁ・・・。
○『合理的とはどういうことか』 岡部勉著(2007年5月30日読了)
  • 合理・不合理
  • 私は大学の教員ですが、うっかるすると、学生は皆同じように見えたりします。それは要するに、関心を持って見ていないということだけのことです。
  • 合理的能=計画性と社会性を高度に実験する能力
  • 成長遅延
  • 人間の愚かさと弱さ
  • 理性的存在
  • 嫌悪とか恨みのような感情はいくらでもふくらませることができる。欲求や欲望も同じ。
  • 自発的
  • 人間の不合理性、愚かさ、弱さの由来
  • reason(s)(理性、理由)
  • reasoning(推論)
  • reasonable(合理的)
  • rational(理性的)
  • unreasonable、irational(不合理)
  • intelligence(知性・知能)
  • 意志の弱さと愚かさ
  • 意志の弱さと不合理
  • 「自己決定」ということばへの違和感
  • アクラシア(akrasia 意志の弱さ(アリストテレス))
  • 生命の仕組=機械的な「選択」の仕組
  • 偶然のたまもの
  • 行為の選択装置=「こころ」
  • 感情と理性の対立図式
  • シンボル(象徴)
  • 象徴爆発
  • 身体的能力の可塑性
  • 象徴能力
  • 未来を処理するための理性的な能力
  • 備わる人には備わる
  • 抑制可能・制御可能なもの
  • 行為の成立要件
  • ヒト(ホモ・サミエンス・サピエンス)
  • 人間と動物の連続と不連続
  • 理性的存在=自然的な推論能力、≠自然的な能力
  • 嘘をつく能力 ごまかす能力 嘘とごまかしを見抜く能力 他人のこころと顔色を読む能力 他人を出し抜く能力
  • 抜け目なさ ずる賢さ 小利口さ
  • 歌舞伎「黙阿弥」の髪結新三
  • 自虐的な笑い
  • 小悪党の世界の反社会性、反社会的な文脈
  • 賞賛の虚構性
  • 知能が高い子供ほど上手に嘘をつく
  • なぜ人はBBQが好きか
  • ピジン語
  • クレオール(語)
  • 集団維持システム
  • 「潔さ」=合理性を重んじること
  • しつこく侮辱する
  • 公正さの要求
  • 哲学的ラディカリズム(徹底した哲学的反省)
  • ソクラテスのジレンマ
  • 真実に到達できる人
  • 思慮・思案のある人
  • 認知主義者
  • 放埓放縦
  • 自然の制約(自然的生存戦略)の相対化
  • 縄張りを主張している争いごとを繰り返すばかりで、結局は何の進歩もない
  • 大学の教員であることの特権は、私たちに替わって将来を担うことになる、若い世代の人たちと親しくつきあえることと、 どれほど忙しくなったとはいえ、やはり考える時間があること
  • 反省的思考
  • 合理性の要求は社会的なもの
  • カントテレス的な玄人風モデル
  • ソクラテス的な素人風モデル
  • 自然・不自然・不合理
  • 自然本位
  • 自己目的化
  • 心的レベルの話と身体的レベルの話の間にある「不連続」
  • 愚かさと弱さ
  • 不合理と不条理
  • 行為の選択
  • 反実在論
  • ジレンマ
  • モラル
  • 理由・根拠・論拠
  • 「君は自由だ。自分で選べ。自分で作れ」(サルトル)
  • 社会全体が未成熟だと、未成熟な若者がそうであるように、目指すところがぶれる
  • 成熟の途上
読後感:いつも合理的でありたい、と願う。でも実際は、不合理な行動をとってしまう。 心・頭の不一致。この、なんとも不条理な生き物である、わたくし。
○『ざっくばらん 「ブラウンさん、バイオ燃料は「救世主」ですか?」』 朝日新聞記事(2007年5月29日読了)
  • 乗用車の25ガロン(約95リットル)のタンクをバイオエタノールで満杯にするには、1人が1年間に食べる量の穀物が必要だ
  • 08年末には米国の穀物の3割が燃料に振り向けられる見通し
  • 原料のトウモロコシの先物価格は昨年比で約2倍になった
  • 隣国メキシコでも、主食トルティーヤの原料になるトウモロコシが値上がりし、低所得者が抗議デモを起こした
  • 食糧とエネルギーの境界がなくなり、石油価格が穀物価格を左右するようになった
  • 8億人の車所有者と20億人の貧困層が同じ食糧を巡って争う構図
読後感:地球温暖化→渇水、旱魃、乾燥、砂漠化。と同時に、食物の収穫減→食糧危機、食糧とエネルギーの収穫棲み分けの深刻化。 と同時に、エネルギー・食糧・水の確保とその争奪、あるいは地域格差の問題。 アジるつもりはさらさらないし、また一般メディアからの情報しか持たない程度の僕が、どれほど“本当のこと”知っているのか、 または知らされているのかは、大きな“?”です。が、この問題は知性や理性(僕にそれがあるかもまた、かなりの“?”ですが) というより、むしろ本能の部分で、何か悪い「虫の知らせ」や「胸騒ぎ」のようなものを覚えずにはいられない、自分があります。 恵まれた国の人が自動車を乗れば、貧しい国の人がその分の食べ物を奪われ飢える。 しかしそんな不条理な状況は国の貧富を問わずしても、既に一部の先進国には表れはじめています。例えば昨年11月18日、 当紙記事『乾く豪大陸』の雨量3分の1、小麦収穫6割減(当時予測)には、かなり衝撃を覚えたことを記憶しています。 だってですよ。もしも、(輸出量分や備蓄量分をないと仮定し)自国で収穫された小麦でパンを作り三食を食しているとすると、 収穫6割減ということは、「朝昼のパンは、なしね。パンを食べていいのは夕だけ。がまん、がまん」みたいな状況に、 ほぼ等しい訳です。ことの事態は、やはり重大かつ深刻です。もし、これらの状況を心情的に追体験するなら、こういうシナリオはいかが。 「日本のお米の収穫が6割減となる。さらにその一部は収穫できたとしても食卓に並ぶことは許されず、 他国の自動車燃料に回される運命に」としたら。朝は、ご飯、お御御つけ、青海苔たる純和風な俺は、絶対怒っちゃうぜ。 一寸先は闇、日本だっていつそういう事態に見舞われるかは分からないわけで、豪州には今期の雨量回復を祈るばかりです。
何か、日本も取り組みをできないものでしょうか。例えば、交通渋滞。交通機関や物流の車輌ならともかく、 平日人ひとりを乗せて走る車輌は、エネルギー消費効率や二酸化炭素排出量から考えていかがなものでしょうか。 人ひとりの車輌がなくなるだけで、交通渋滞も二酸化炭素排出量も相当に緩和されるのではないでしょうか (元来、モータースポーツ好きの僕がいうのもなんですが・・・。といって、東本昌平さんが『CB感』で描く近未来統制下環境社会、 っていうのもちょっと困りものです・・・)。
○『非言語コミュニケーション』 マジョリー・F・ヴァーガス著(石丸正訳)(2007年5月23日読了)
  • ノンバーバル(非言語)
  • 非言語メッセージ(ジェスチャー、目の使い方、身体接触、沈黙、空間、時間、色彩)
  • ノンバーバル・コミュニケーション
  • 異文化形質
  • 対人理解能力
  • ピープル・ウォッチング
  • 世界がますます「縮まりつつある」
  • ことばならざることば
  • アブソラーノ
  • 対人的空間(スペース・バブル)
  • 隠すより現る
  • 知恵遅れの子どもと匂い
  • 知恵遅れの原因となる代謝障害性のPKF(フェニルケトン尿)
  • 肌が異常に塩辛い
  • 動作学
  • 接近空間学
  • W.H.シェルドン博士の分類(内胚葉型・中胚葉型・外胚葉型、内蔵(ゼゼロトニア)型・筋骨(ツマトトニア)型・頭脳(セレブロトニア)型)
  • パダウン族とろくろ首(虎の襲撃から身を守るため)
  • アンシビライズド(未開な)
  • バーバリック(野蛮な)
  • ペインフル(つらい)
  • ドラスティック(ひどい)
  • マイオーピア(近視眼)
  • 内なる美
  • 人体動作の五分類(表象動作、例示動作、感情表出動作、言語調整動作、適応動作)
  • アップ・ヨワーズ(「くそっくらえ(の指立て動作)」、二千年近く使われているサイン)
  • スマイルの頻度
  • シフティ・アイズ(落ち着きのない目)
  • スティーリー・アイズ(冷徹な目)
  • ベッドルーム・アイズ(閨房向きの目)
  • バグ・アイズ(びっくり目玉)
  • ノウィング・アイズ(知ったかぶりの目)
  • ピアシング・アイズ(突き刺すような目)
  • アン・イーブル・アイ(邪悪な目)
  • ア・ダーティー・ルック(さげすむような目つき)
  • ア・ハート・ルック(むっとした目つき)
  • ア・バーニング・グランス(燃えるようなまなざし)
  • ア・サイドウェイ・グランス(ちらっと流し目)
  • アン・アイシー・ステア(冷たい凝視)
  • ルック・ライト・スルー(まるでお見とおし)
  • メルト・インツー・ジ・アイズ(目の中に融け込む、やさしいまなざし)
  • ミューチュアル・ゲイズ(相互注視)
  • ルッキング(視ること)とシーイング(眺めること)
  • 眺めるべし、視るべからず
  • 礼儀正しい無視
  • メイキング・アイズ(色目を使う)
  • ヴォーカリックス(声調)
  • 「口ごもり」と「間」
  • 相手を無生物のように扱う偏狭の固まりのような人間
  • 「ザ・サイレンス」
  • タセシックス(接触学)
  • コンタクト(触れ合い)
  • ボォンディング(密着)
  • ラフハウス(中学生の馬鹿騒ぎ)
  • テリトリアリティー(なわばり習性)
  • デズモンド・モリス『毛のない猿』(ザ・ネーキッド・エイプ)
  • テーブル着席のルール
  • 創造的集団思考(ブレーン・ストーミング)
  • さまざまな時間(「時は川」「時はただの約束ごと」「時は金」「人生は時の道化師」「時は待つこと」「時は直線」「時は死に神」 「人生のリズムが時」「時は都会人のためのもの」「時は逆説」「時はわが人生」「人生を時は語る」)
  • 春の熱病(スプリング・フィーバー)
  • 冬の狂気(ウィンター・マッドネス)
  • ブルー(憂鬱)
  • ピンク(元気いっぱい)
  • 古代紫(パープル)
  • コンプルメンタリー(補色)がコンプリメンタリー(似合う)である
  • 色彩残像
  • フェロモンとアンドロステロン
  • シンクロニー(同時行動)
  • ペトログラフ(岩石線画)
  • グラフォロジー(筆跡学)
  • 間断なく果てしなく
読後感:もし、インターネット上でのバーバル・コミュニケーションが発展して、あるいはそれを社会が偏重して、 人間本来の野生たるノンバーバル・コミュニケーションの能力が衰えてしまったら、一体そこはどんな社会になるのだろう。 左脳偏重主義で場の空気の読めない人たちのはびこる社会、すべてのトラブルが○○ハラスメントでしか処理されない社会、 「阿吽」の呼吸を使える人々が絶えた社会。僕はそこで、絶対に生きていけない自信があります。それならいっそ、 (日本人ばなれたこの天然チリチリ頭だけではなく、ネアンデルタール人ばりにシニオンが後頭部に突き出ている)僕は、 こん棒をかついだ“はじめ人間”をやる方が、絶対性分に合うはず。うんうん、きっとそうだ。
○『「天才」の育て方』 五島節著(2007年5月22日読了)
  • くそったれ天才
  • アホンダラ神童
  • 天賦の才能(天才)
  • 「天才」と「成果」
  • 破天荒な理論
  • 将来リーダーになるそり犬の子犬は、目が違う。目の輝きが違う。
  • 栴檀は双葉より芳し
  • 天才的ヒーローは世の中を明るくする
  • 自分の中に潜在的に持っているもの
  • 大切なのは「子供への敬意」
  • 「いじめをなくそう」ではなく、「子供が熱中できることを大人が与える」
  • ヴァイオリンよりも大切なこと
  • サル真似のススメ
  • まなぶ まねぶ まねる
  • 孟母三遷
  • 「疑問を持ち、考えること」が大切
  • フルーティスト時代の佐渡裕さんの根っからの「あがり症」
  • 何事にも忍耐力が欠かせない
  • 胆力 眼力 心力 膂力(きょうりょく)
  • 思考力 精神力 決断力 忍耐力
  • ミッション(任務、使命、天職、布教)
  • 目の前のことに一生懸命に取り組む
  • 結果は重要なことではない
  • 技術はあっても心に響かない演奏
  • 心を込める
  • 継続は力なり
  • 自分自身を「押し出す」雰囲気
  • expression
  • あの人物は押し出しがよい
  • 過保護と甘やかすことは違う
  • 過保護なくて親離れはない
読後感:五島龍君のことをもう少し知りたくて、この本を読んでみました。 神童と呼ばれた天才バイオリニスト、現ハーバード大生、高い数学力、エレキギタリスト、黒帯の空手家(←演奏者としての「指」は大丈夫なのだろうか?)。 どうして、こんなにもマルチな才能を有する人が、同じ人間として存在しているのだろうか。 一芸とてままならない僕は、不思議で仕方がありません。 集中力、努力、根性、体力、どれをとってしても凡庸な僕とは次元のちがう人類、って感じます。 それと最近感じたのですが、「次元がちがう」人って、「志」の置き方、高さ、大きさが違う人、っていうことでいいのかな。 こんな言い換えは、ありですか?
○『秘花』 瀬戸内寂聴著(2007年5月21日読了)
  • 鵺(ぬえ)
  • 能聖(世阿弥)
  • 観阿弥清次
  • 一日として身から離れたことのない芸の稽古の習慣
  • 常往坐臥
  • いつの間にか吸う息、吐く息さえ自分から謡の調子に乗せていた
  • 申楽浸しの脇目も振らぬ一筋の道
  • 金春禅竹
  • 峻烈過酷
  • 御賞翫遊ばされる
  • 婆沙羅の佐々木道誉
  • あらゆる芸は勝負
  • 究極は勝たねばならぬ。秘技を盗んででも勝たねばならぬ。
  • この世の時には、男時と女時がある
  • 不如意になる時
  • 女時の最中は焦ってはならぬ。自然の勢いには逆らえぬ
  • 花の御所
  • 念ずれば花開く
  • 三管領(斯波、細川、畠山)
  • 美しきは武器
  • 有職故実
  • 漢籍
  • 離見の見(二回目)
  • 秘すれば花なり。秘さずば花なるべからず。
  • 無限と呼ばれる人間の煩悩
  • 恥ずかしさに全身が熱くなる
  • 『莵玖波集』
  • 舟歌「舟は波まかせ 舟は風まかせ 舟頭は竿まかせ 恋は主まかせ はぁ、えいとろえい えいとろえいとは」
  • 邯鄲の憂(盧生)
  • 秦河勝(世阿弥の祖)
  • 万民快楽(けらく)
  • 花鳥風月
  • 奏聞
  • 異形の降人
  • うつほ舟
  • 秦氏七千三十戸(日本書紀)
  • 世間虚仮
  • 直面
  • まことの花
  • 人気は移り気
  • 儚いから貴い
  • 人外の大いなるものの意志
  • 男時に栄えに驕らず 女時の非運にくじけることなく、己が本分を切に尽すこと
  • 我が風体の師也
  • 人間の心の鬼
  • 冷え寂びた
  • 「俊寛」の能
  • 稜羅綿紗
  • 恋も秘すれば花
  • そもそもかゝる霊国 かりそめながら身を置くも いつの他生の縁ならん
  • 山はをのづから高く 海はをのづから深し 語り尽くす山海海雲の心
  • 「花」=「色気」
  • 「幽玄」=「洗練された心と品のある色気」
  • 命には終わりあり、能には果てあるべからず
読後感:昨日、久方ぶりで剣道部の稽古に参加するも、やはり駄目駄目。体、動かず。 かかり稽古では、高校で関東大会大将を務めた猛者・新井君にひっくり返されてしまう(我輩、飛び込みにてんで腰が入っておらんのでした・・)。 で、剣道の稽古等々でアップの方も、最近ちょっとため気味に(小刻みな時間を有効に使って、急ぎアップせねば、ね)。
つい最近、ここで世阿弥のことを書いていたこともあり、この新刊本が出るのを知り、即刻読んでみました。 ここで描かれた世阿弥の「能」を、「研究」や「剣道」に置き換えも、あるいは他の職業のプロとしての職能に置き換えても、 「技」を求道する者の立場や心構えは、すべてに同じ。世阿弥の『花伝書』(正しくは『風姿花伝』)をもう一度、 今の自分の時分に照らし合わせて、読み直そうと思いました。
○『フューチャリスト宣言』 梅田望夫・茂木健一郎著(2007年5月17日読了)
  • フューチャリスト(未来学者)
  • 未来感覚 明日は今日の延長
  • 十分に遠くを見る眼、疾走する脚力、そしてほんの少しの勇気
  • 楽天的であることは一つの意志
  • 未来に明るさを託す
  • 世界の最高学府は「東京大学」でも「ハーバード大学」でもない。それはネット上に存在する。
  • グーグル的なデザインの持つメッセージ性
  • オープン・ソース
  • ネットがセレンデュピティーを促進する
  • 偶有性
  • スモールワールド・ネットワーク性
  • トラックバック
  • 脳の報酬系の活性化
  • 脳内報酬物質
  • 強化学習
  • シリコンバレー精神=フロンティア精神+テクノロジー志向+反権威+反中央+反体制+ヒッピー文化+カウンター・カルチャ−
  • エンパワー
  • ディタッチメント(イギリス人の自分自身の立場を離れ公平客観的にものをみつめるという姿勢)
  • 制度設計
  • ヒューマン・ネイチャー
  • あるべき論
  • 人事権と学位授与権
  • マドル・スルー
  • MITのテニュア(終身教授資格)の審査基準「それまで誰も手をつけていない分野を切り拓いたかどうか」
  • MITでの競争原理のあり様は、ほかの人といかに違うことをやるか、ということ
  • 日本は敷かれたレールの上での点数争いにすぎない。
  • MITに見られるようなコンセプト・メイキングを大切にする風土、   粗削りでも新しいコンセプトを出すということに最大の価値をおくという文化
  • 「マイ・ライフ・ビッツ」プロジェクト(人間が生まれてから死ぬまで「見たもの」「聞いたもの」「書いたこと」を全部記録)
  • Wisdom of Crowds(群衆の叡智)
  • 総表現社会の到来
  • 吉本隆明「大学の先生が何かエラそうに講釈をたれる時代は終わった」
  • ドッグイヤー(7倍速)
  • 負のモチベーション
  • 欠点を含む小さな芽に対して「良き大人の態度」
  • いまの日本社会は。新しく生まれた大きな存在に対して、「気に入らない」と言っていると何とかなってくれるんじゃないかと思っている。
  • 新しく出てきたものは毒性が強い
  • ネット脳内空間
  • ウェッブ2.0生活
  • フェイス・トゥー・フェイス
  • ネット・アスリート
  • はてなグループ
  • マイクロソフト帝国の終わりの始まり
  • ポスト・グーグル
  • サーチ(検索)とチョイス(選択)と直感力
  • 運営側の「シメシメ」
  • グーグルに搾取されている
  • ネットとのつき合い方=個性
  • 村上春樹「正しき理解というのは誤解の総体」
  • 大学で教えるエネルギーをブログにかけたい
  • 大学はもう終わっている
  • 脱エスタブリッシュメント
  • たった一人の狂気で世界が動く
  • 行け行けどんどん
  • 無尽蔵な世界
  • 連想記憶と志向性
  • システムの一人勝ち
  • 羽生善治「学習の高速道路理論」
  • コモディティになる(差別化要素がなくなって陳腐化すること)
  • 「突然異変」と「自然選択」
  • 楽しくてしょうがない人しか勝てない
  • 好きということのすさまじさ
  • 懸隔
  • 青天井の知
  • アフェリスト(連携)
  • 知の総力戦
  • アンダードッグ(負け犬)
  • マヴェリック(一匹狼)
  • 「怒り」のエネルギー
  • 思考の補助線
  • 自らが補助線となる
  • 文理両方
  • 同好の士
  • 心脳問題
  • 相転移
  • ロングテール
  • 人格の陶冶
  • 「本」とは錨をおろすポイント
  • インターネットは「言語以来」最大の地殻変動
  • Insanely Great(めちゃめちゃすごい)
  • 学ぶ喜び
  • オープンエンド
  • 知の世界のカンブリア爆発
  • 人間は快楽主義
  • 大学の既得権益保持
  • ビジョナリー性
  • ネットでの「学ぶ喜び」=「脳の喜び」
  • 日本企業は「下宿の女子学生を採用しない」
  • 日本は談合社会ですね。「こうあるべし」という人間の型を決めて、そこから外れた者に冷たい。
  • 談合社会の中に入って仲間になれという圧力
  • 「フューチャリスト同盟」「人体実験同盟」「談合社会相対化同盟」
  • 大学を相対化する
  • すべての人に知の喜びを
  • 「可能無限」と「空白」
  • ネット上の以前・以後は「相転移」
  • ネット上の人格の時価総額
  • ネット上のプレゼンス
  • リアルとネットの「合わせ技」
  • イナーシャ
  • 生命原理
  • 機械論的な世界観
  • もうひとつの地球
  • 6 degrees of separetion(6次のへだたり)
  • 「未来予想」≠「未来創造」
  • 「好きなこと」を見つけて貫くこと
  • 「ギャップイヤー」と「自分は何であるか」
  • 履歴書に一日穴があくと真人間じゃなくなっちゃう(日本の常識、世界の非常識)
  • アーネスト・ヘミングウェイ『誰がために鐘はなる』、『老人と海』 (金子君へ 地元を離れる前日の夕方、僕にくれた『誰がために鐘はなる(上・下)』の文庫本は 今でも大切に持っているよ。あの頃からちっとも僕は成長できていないけれど・・・・。 さねまんより)
  • アフェリエーションとアグリーメント(組織と自分の関係)
読後感:“今後の社会”を考えるためのヒントが満載で、まさに満腹という表現がぴったりな読後感です。 非常に勉強になりました(という他に言葉も出ないぐらい、汗だくだくで読ませて頂きました)。 これからの知のシステム、知のあり方、そしてそれを包含する社会のシステム、社会のあり方、一体どのように変貌をとげるのでしょうか。 SNSぐらいからすでに電脳空間落伍者の僕は、そんな近未来ネット社会についていけるかな???
○『象の背中』 秋元康著(2007年5月13日読了)
  • 人は本当に一人きりになりたいと思った時、誰も居ない場所へ行くのではなく、人込みを選ぶものだ

  • 世界で一番の孤独は、誰にも孤独だと気づかれないことだ
  • グラウンドとルールがあってこその“勇敢な男”
  • その辺りの頃合を読む
  • 恐い先生の前では従順なのに、やさしい先生には付け上がる、あの計算
  • 「大人になる」 「負けるが勝ち」 「損して得取れ」
  • 蝋梅
  • 人の行く 裏に道あり 花の山
  • 小物ほど、よく吠える
  • 蕎麦掻き
  • 人間というのは、結局どちらかの派の属さないといられなくなる
  • 後だしジャンケン
  • 人のよさというのは、猜疑心の大きさで決まる
  • ただの偶然も意味のある符合の一致に見えてくる
  • この世は何が虚で何が実かわからない
  • しあわせな一日は、退屈な一年に相当する
  • 強羅花壇
  • 建築家・竹山聖
  • 月光浴
  • 戦力外は、すでに“外の人”
  • 散る桜 残る桜も 散る桜(二回目)
  • ホテルオークラ「オーキッドバー」
  • 贅沢とは、分不相応なこと
  • 贅沢とは、“後ろめたさ”のこと
  • 割り下
  • 浅草『今半』
  • 人間は弱い生き物だ。だから、いつも、自分より弱い人間を探す。
  • 時の流れのように 川の流れのように
  • 焼酎『森伊蔵』
  • 何でも話すことが誠意じゃない
  • 世の中のすべてに答えがあるわけじゃない
  • 心の痛み
  • 天職に出会えた人間のみが持つ独特の自信のようなもの
  • hospes(客人)
  • “悲しい”という感情は、“優越感”の上に成り立つもの
  • 自然の決め事
  • 「そうだ。自分を押し殺すな。協調性よりも大切なことがあることを忘れるな。嫌われる勇気を持つんだ」
  • 自分の気持ちに素直になれ
  • 手鏡をするようになったら死期が近い
読後感:これまでほとんど読むことのなかったフィクションものを、最近少し読むようになった。なぜだろう???  それとここ数冊、なぜか「死」をモチーフにした本が続いたような気がする(書評欄など見て、ちょー適当に選書しているのですが・・・)。 「ノブレス・オブリージュ(貴きものの負うべき義務)」と同様に私の好きなヨーロッパ騎士道精神の一つに「メメント・モリ(死を想え)」があります。 日本でもちょっと前まで国内に広く生息していた日本男児は「必死」とか「覚悟」とか、武士道精神に根ざした言葉をよく発していたような気がしますが・・・。 人はその「死」をリアリティを持って想うことではじめてあざやかな「生」を実感する、というのは古(今?)東西を問わずむつかしくも正しいひとつの誠。 私のように毎日をのほほ〜んと生きいるものに、その意識の持続はなかなか至難でございますが、 「無駄に生きないこと」は同時に「無駄死にしないこと」でもあり、 また「死」を意識しつつ「生」を尽くすというのは、人がより善く生きるための作法であり極意であるようです。 ですから、再びメフィストフェーレにご登場頂き、「さて、おまえはいつまで生きたいのじゃ。希望を叶えてやろうぞ。」と問われたならば、 「死ぬまで生きたいと思います」と答えるのが、よろしいかと存じます。
それにしても、作詞、脚本、小説、エッセイ等々で遺憾なく才能を発揮され、 人たらし道(もちろん賞賛・畏敬の念をもって、ですよ)を極めたる秋元先生ゆえの、 人生の機微に正鵠を射た言葉は、いずれも圧巻でした。 どうやら「天」は気に入った御仁には、一物もニ物もお与え召されるのでしょう。 それが世の中、それこそが収穫逓増、かな。
○『アースダイバー』 中沢新一著(2007年5月12日読了)
  • 縄文海進期の東京
  • 洪積層と沖積層
  • 無の場所=神社=海に突き出た岬ないし半島の突端部
  • 『ラスト サムライ』と『ラスト・オブ・モヒカン』
  • 東日本のサムライ(縄文狩猟民的)
  • 西日本のサムライ(大陸、半島的)
  • 人間の尊厳
  • 生きること死ぬことの意味
  • 巻狩り
  • 縄文時代の円環(ドーナツ)状の村構造
  • 「汎環太平洋」的な円環構造
  • 垂直的な知性の冒険
  • 木を見て森を見ず
  • 長期的なサイクルを持った変化
  • 「オザキ」=「ミサキ」=「サカイ」=「サキッポ」=「サッ」
  • 「キャピタ」=「頭のさきっぽ」=「キャップ」
  • 野生の思考
  • 豊島と多摩の間
  • 「中の野原」
  • 中野長者伝説(鈴木九郎)と新宿の起源
  • みたらし池(蛇池)
  • 「乾いた」面と「湿った」面
  • 湿った文化=縄文
  • 乾いた文化=弥生
  • 富士講
  • 小さな死
  • 薄っぺらな記号
  • 神泉のカフェ・ド・フォンティーヌ
  • 地下世界
  • 隠花植物
  • 新宿御苑の玉藻池
  • 暗渠
  • 地下のカタコンベに棲んでいたキリスト教徒
  • サステイナブル
  • 御幸(天皇が数日間、森に御籠りになられること)
  • ハレ
  • 鎮守の森
  • 山田風太郎『?人』
  • 風穴(人穴)
  • 「橋」=「端」
  • タナトス(死の衝動)
  • 鯰絵
  • 世直し大明神
  • 「芝」の半島と「サッ」
  • 超越性の思考
  • 麻布一番温泉
  • 龍を退治する聖ジョージ
  • 自然の理法
  • 赤坂(赤土の多い坂道)
  • つり掘「衆楽園」(麻布)
  • 市庭
  • 浮き世
  • ブリコラージュ(日曜大工的仕事)
  • 自由と私有
  • オマージュ(賛辞)
  • 金魚的怪物
  • 盆栽芸術
  • ティラー(沖縄方言)と寺
  • 稲荷
  • アジール(聖域、逃げ込み寺)
  • 死のことを意識しない知性には深さも重みもない
  • 大学の自由
  • 婆沙羅
  • コロボックル
  • シャクジン(石神)
  • 江戸前島
  • 老月村
  • ひりだしたもの
  • 黄金
  • 灰=サンドル=シンデレラ
  • 山東京伝
  • 金春芸者
  • コーチン芸者(新橋芸者)
  • 「オキャーセ」、「オキャタラン」
  • 檜熊浜成、竹成と土師真中知(7世紀浅草)
  • 観音様
  • 仏教的な「無」のからくり
  • 悪場所
  • 秋葉原(「アキバハラ」と発音)
  • 際物
  • 交換の原理
  • 贈与の原理
  • メチエ(職人仕事)
  • 立石様
  • 要石(鹿島神宮)
  • 自然感覚、宇宙感覚
  • リトリート(隠退)
  • 双系原理
  • ルイ・アラゴン『パリの農夫』
  • 農夫=詩人
  • 縄文地図
  • ひがひがしさ
読後感:難しいことは覚悟の上、再び中沢先生の本にチャレンジ(先回読んだ本に引用されていた書籍です)。 近代都市・東京を古層からこんな風に眺めるという中沢先生のアイデアは、 江戸、江戸以前というまったく違う世界へ我々を誘ってくれます。 タイムマシンで古代に行ってみたいという夢を子供時分に抱いておりましたが(もし、 理系に進んでいなければ間違いなく考古学や古代史、史学を専攻して、 発掘調査なんかをするような分野に行っていたと思います・・・)、少しだけそんな夢が叶ったような気がします。 とにかく、この本の「今」と「昔」を、その「空間」と「時間」というニ軸で遡るという発想は、 書物的タイムマシン法?とでもいう新しい執筆手法ではないでしょうか。
○『神はテーブルクロス』 須藤元気著(2007年5月11日読了)
  • サイン
  • 高次意識
  • アウェーの戦い
  • 死のリアリティ
  • 気づき
  • 「世間からみた失敗は、僕にとっての大切な贈り物へ変わる」
  • ゴシップを言わない
  • ラテラル・シンキング
  • 自分を裁かず、他人を裁かない
  • 他人の知覚は批判しない
  • 幸運は準備を整えた人に微笑む
  • この世界は自分の鏡
  • 難しいと考えた瞬間
  • ただ歩く
  • 自尊心と履歴をなくす
  • ビジネスに失敗する人=「考えて実践しなかった人」と「実践したけれど考えなかった人」
  • ただ波を見極めるだけの世界
  • サーフィンは瞑想
  • カレント
  • 「愛とは駆け引きしない」ということ
  • 内なる平和
  • 合理的知性だけでではたどり着けない領域
  • 一歩、前へ
  • 読み終わったら書き写す
  • 明確な目的意識を持って読む
  • 同じジャンルの本を違う著者で何冊か読む
  • 何かの物や人に執着しすぎると、人生は楽しくなくなる
  • 今、この瞬間を生きる
  • 才能は静寂の中で
  • 一人で過ごす
  • 沈黙の力を感じれば、沈黙からの答えが生まれてくる
  • 短所は大きな長所に変化する
  • 「格闘技的戦略」=「ニッチ戦略」、「ドミナント戦略」、「鶴翼の陣」
  • 「元気 イイヤツ」、「元気 ヤサシイ」、「元気 ウソツカナイ」
  • 「知覚の果てしない解釈」
  • 「この世界が単なるひとつの見解に過ぎないということ」
  • カルロス・カスタネダ『呪術師と私』
  • この素晴らしき世界
  • 魅力のある人物は、たいてい失敗してもへこたれず、成功しても驕らない
  • 本質は千年たっても変わらない
  • 河合継之介(越後藩家老)
  • 「これでおしまい」(勝海舟の最期の言)
  • シンクロニシティ(偶然の一致、共時性)
  • 環境(エコ)問題は物質至上主義と結びついて大きくなった「エゴ」が原因ではないだろうか
  • 現代の人間の特徴である自我に対する過剰な関心
  • カルロス・カスタネダ『沈黙の力』
  • 内的対話
  • 変性意識状態(瞑想状態)
読後感:元格闘家の須藤さんは、いろいろな本を読んで、いろいろなことを考えるのが本当に好きなのですね。 最近数冊の本を出されていますが(全部読ませて頂いております)、 まさに思想を模索し、自分なりの思想をつくろうと孤軍奮闘されているように、僕には映ります。 しかしその営みは、まったく苦悩感とは無縁な、飛び切り楽しそうな感じに映って見えます。須藤ワールドは!
須藤さんは僕の中の、“一緒に飲みに行って、オールで語り明かしてみたい”有名芸能人No.1ですので、機会があれば、是非よろしく。 今後とも須藤さんのいいところは、どしどしと吸収させて頂きます。 僕も須藤さんの真似をして、もしも大学からサバティカルをもらったら、お遍路さんしよっかなぁー(ちょっと、難しいか・・・)。
○『Opinion 宮本哲也』 朝日新聞記事(2007年5月10日読了)
  • 「見守る教育」試してみよう
  • ゆとり教育
  • つめこみ教育
  • 人が人を伸ばすことはできない
  • 一つの問題に対して10分間、集中して頭を使い続ける姿勢を身につける
  • わからなくても、解けなくてもひたすら考える、これこそが学問の王道
  • 解けた問題の数だけ学力が上がるわけではない
  • 頭を使った分だけ賢くなる
  • 見張る教育
  • 信じて待つ
読後感:非常に、共感できます。 すぐ答え(のみ)を知りたがる傾向、 解答をひねりだすことを楽しむより、暗記できる解答に安心感を覚える傾向。 どうすれば授業で、同じ楽しみを共有できるのでしょう?
  人が育つには時間のかかることを、時間をかけなければならないことを、 社会が善しと認められるかどうか、でしょうか。
追記:こういう世情の中で教える者のあはれ、いかにか。 「そこここの はるかひそかな ことわりを きめならふとは いとどかなしき」三郎太郎磯右衛門眞臣作(2007年6月14日おつけ)
○『セミたちと温暖化』 日高敏隆著(2007年5月9日読了)
  • 動物の「自意識」
  • チビシデムシ
  • 松村松年『日本千虫図解』
  • 「日本産数種チビシデムシの生態学ノート」(日高先生の初学術論文(大学3年次))
  • オスの性フェロモン
  • 牧野四子吉『原色動物大図鑑』
  • コムギ起源と遺伝学者・木原均
  • 常識的手法
  • 皆殺し農薬
  • 性フェロモン・トラップと害虫の大量誘殺法
  • フェロモンの「有効圏」(100mから10km)
  • セミの数の減少(東京)
  • 「地域を無視した奇妙なグローバルな発想は、問題の本質を見誤らせるおそれがある」
  • アカトンボ(「ア」にアクセント)
  • 「とにかく実物を見せろ」
  • 野生の健康
  • 雪虫(ワラアブラムシ)
  • 有翅個体
  • 「赤の女王」説
  • トドマツとヤチダモ間の飛行
  • 人の腸内の細菌と酵母は平均1.2キログラムぐらいある
  • 腸内生態学
  • 100種類の腸内微生物
  • 日和見主義
  • 反芻
  • 「里山」はけっして「自然」ではない
  • ローレンツの本
  • 動かない翼の理論
  • A.・S・ダニレフスキー『昆虫の光周性』
  • カモノハシ
  • 後足のけづめと毒腺
  • シジミチョウ
  • ミカンの葉70枚(アゲハチョウの成長に要する葉っぱ)
  • 「丸にかたばみ」紋
  • カララララミーンミーン
  • ミョーキン、ミョーキンと僧侶明欽
  • 動物はいかにして季節を知るか
  • 半乾燥地(トルコ)
  • 走光性
  • ファーブル「本能の知恵」、「本能の愚かさ」
  • ボウフラの「二重保証」
  • マイナスの走光性とプラスの走地性
  • 白酒(パイチュウ、新疆)
  • 概年時計(circadian clock)
  • 粘菌
  • 概日リズム(circadian rhythm)
  • 時差ボケ
  • 鶴岡致道大学
  • 致道館(庄内藩校)
  • 冬越しの営み
  • 強力な不凍液(グリコーゲンとグリセリン、ソルビトール)
  • ギフチョウ
  • 加茂葵
  • 葵の上
  • 葵巴
  • 『春の数えかた』
  • 「総合的」とはなんだろうか
  • 「文理融合」の「総合的」態勢
  • 「総合的」認識
  • 五目チャーハン
読後感:昆虫は生きのびるために巧妙な戦略をもっている。人間が知覚できない微妙な経年変化を、昆虫は知っている。 その寿命の短さを生かした高い世代蓄積性により、おそらく昆虫のある種は来たるべき環境変化に備え、 既に“人知れず”DNAレベルでの自己改造を着々と実行しているのかもしれない。 それぞれの種に「生存」への知性があるとしたら、ゴキブリに“知性”がないと人間は胸を張っていえるだろうか。 「かしこい」のか、「さかしら」なのか。どうする?、ライフカード。
○『脱温暖化社会へ 3』 朝日新聞記事(2007年5月7日読了)
  • オフセット(相殺)
  • カーボンニュートラル都市(英・ニューカッスル市)
  • 2003から05年度の間での排出CO2約180万トンをゼロと(相殺)する目標設定
  • 普通乗用車(1400cc)の年間CO2排出量=3.7トン
読後感:地域社会的な、実験社会科学的な取り組みの迅速さは、何をやらせても欧州がいつも抜きん出ているような気がします。 やはり、徹底したシステム化合理精神のなせる業なのだろうか。日本も、欧州をうならせるような取り組みを、何かできないものでしょうか。 例えば、自動車で通勤する人の通勤手当をCO2排出量(あるいは、F×排気量×距離)に応じてマイナス支給額にし、公共交通機関の利用者は相殺、 徒歩や自転車を利用する人はプラス支給額とういうのは、いかに。朝の交通渋滞は解消されるけれど、逆に通勤電車のラッシュは・・・、ジゴク。 嗚呼、所詮我凡庸を逃れがたし。
○『星新一 1001話をつくった人』 最相葉月著(2007年5月7日読了)
  • 命短し、襷長し
  • 弘法も木から落ちる
  • 債鬼に追われる
  • くすりはホシ
  • 大谷重工業とホテル・ニューオータニ
  • 意中生羽翼 筆下起風雲(『羽下登仙』宋の蘇軾)
  • 御三家(武田薬品、田辺製薬、星製薬)
  • 強盗慶太
  • 親切第一、協力第一
  • 強制和議
  • 星薬科大学
  • 「あそばせ」学校
  • 「猛勉強しても駄目な人、たいして勉強しないのに成績がそこそこの人がいて、星は後者でした」
  • 「子の思想幼稚なり」、「多くの書物を読め、思想をつくれ」(高等師範中学校の作文添削)
  • 高師中(イートン校がモデル)
  • 権威主義に屈しない、リベラルな精神
  • 桐蔭会
  • 臣道実践、上位下達、下情上通
  • 第一高等学校、東京高等学校(東京大学教養学部の前身)
  • 東高では、半数が理系志望
  • ジュラルミン派
  • ジュラルミン高校
  • 田舎者的精神
  • アルカロイド
  • ホシチェーン薬局
  • ダス・ゲマイネ(ドイツ語「俗物」)
  • んだすけまいね(津軽弁「だから駄目なんだ」)
  • 一張羅
  • 寝業師
  • くもり ソーカイ アーソーカイ
  • 科学小説
  • 日本空飛ぶ円盤協会
  • チューリングテスト
  • 『生命のふしぎ』
  • 思索販売業
  • 尾篭な話
  • 戸越銀座
  • 原思想者
  • 『人民は弱し、官吏は強し』
  • 頸肩腕症候群
  • ショートショート1001編
読後感:中学2年生のときに突如として両眼1.5の視力が0.7に落ちてしまった原因が、 吉川英治の『宮本武蔵』と星新一のショートショートの耽読にあったのを思い出します。 高師中とはいえ旧制中学の作文指導のレベルの高さには、大変驚きました。 後半のSF小説史よりも、前半の旧制中学、旧制高校のお話が非常に興味深かく、かつ参考になりました。
○『情熱大陸 二宮和也』(2007年5月6日放映)
  • 「ゲームをやっている時の方が、外からの刺激がすっと頭に入りやすいんです」
所感:嵐の二宮君は第一線のアイドルで活躍するだけあって、素の姿もまた骨のある若者でした。それにチャンスを逃さず、 クリント・イーストウッド監督のもと『硫黄島からの手紙』の名演で世界に名を馳せるところもまた、実力のなせる業以外なにものでもございません。 自分の頭・心・身を如何にコントロールすればよい結果につながるのかを熟知しているから、このようなコメントを出せるのでしょう。 彼にとっては、頭の回路をオープン・チャンネルに保つためのひとつの生活の工夫なのでしょう(普通の社会人には、同じことは絶対に無理ですが)。 そういえば、忙しいときにちょっとした小刻みな時間を利用して読書したり音楽を聴くことで、 逆にメインの仕事がはかどることが多々あるような気がしますが・・・、気のせいだろうか。
○『算数少女』 遠藤寛子著(2007年5月6日読了)
  • たらちを 過にしころ ものがたりしたまいけるは
  • 和算
  • 一十百千万億兆京垓(禾弟)穣溝澗正載極(恒河沙、阿僧祇、那由他、不可思議、無量大数)
  • 算額
  • 算法
  • 関流の宗統
  • 甘茶
  • 公儀直参
  • 天元術
  • 宗匠
  • 談林流
  • 矢立
  • 拍子木
  • 壺中の天
  • 壺中隠者先生
  • 算盤
  • お首尾(合格)
  • 気風
  • 関孝和
  • 印加免許
  • 吉岡流、百川流、横川流(以上、上方流派)、関流、建部流、中根流
  • 吉田光由『塵劫記』
  • 差配
  • 絵草紙屋
  • 上方算法
  • 和多都美(=わたつみ、万葉かな)
  • 十六(=しし、万葉かな)
  • 辻占売り
  • れんじ窓(格子窓)
  • 江戸におおいもの― 伊勢屋、稲荷、犬のくそ
  • 聖賢の教え(儒教)
  • π≒3.16(『割算書』1622年)、≒3.14(村松茂清、1663年)
  • 勾股弦の原理
  • 茶菓
  • 点竄術
  • 『宅間流円理』
  • 『拾(王幾)算法』
  • カピタン
  • 秘伝
  • 『舎蜜開宗』
  • 『気海観澗広義』
読後感:実際、江戸時代には理数系的な女の子(千葉あき)がいて、数学の本『算法少女』を著していたのですね。 和算の世界を数学の授業で、紹介することって可能なのだろうか?
○『夢をかなえる勝負力!』 瀬川晶司著(2007年5月3日読了)
  • いまに集中する
  • 勝手読み
  • 知覚的自由度
  • 自我関与
  • 最終プラトー
  • 四割打者「羽生善治」
  • 美しく勝つ
  • ツキの法則
  • 牌が透けてみえる
  • 「勝負力」より「人間力」
  • たたら製鉄
  • 玉鋼
  • 刀匠
  • ヤマ勘
  • 耀変
  • 奇手
  • よい失敗
読後感:瀬川プロからサイン入りの謹呈本を頂戴しました。「夢」と一字の大きな書が裏表紙に書かれていました。 瀬川さんの活躍は、僕を含めて後手をいくものへの大きな励みとなります。がんばってください。 今後のご活躍を心より、応援申し上げます。ありがとうございました。
○『ノーベル・ドラマ賞(『化学と工業』5月号 p.543)』 多羅尾番外著(2007年5月2日読了)
  • 「研究費をとるためにする仕事、資格取得のためにする仕事、仕事だからやる仕事。 みんな面白くないかも。勝つための野球が面白くないのと同じことです。 三振でもいいから思いっきりバットを振っていた衣笠やオズマ。素晴らしい印象がいつまでも残っています。 やはり、「記録より記憶」なのかもしれません・・・・」
読後感:本日届いた『化学と工業』5月号。いつもはほとんど読まないのだけれど、ちらっと読んだら、 「誰だ、この多羅尾さんて?!」「やらた熱ちーぜ、この御仁!」、みたいな。 メーキング・ドラマ最高&ドゥーイング・サイエンス最高!(多羅尾さんの熱さで 、つい日本語が乱れてしまい相すみませんでした) しかし、みんなでそんな“仕事”をしないと世の中が回らない。悲しいかな、それも現実です・・・。
○『剣と禅のこころ』 佐江衆一著(2007年5月2日読了)
  • 兀兀(=ごつごつ、一心に努めるさま) 静かに尋思す(良寛)
  • 優游(=ゆうゆう、やわらいで、ゆったりとしているさま)
  • 騰々(=とうとう、なにものにもとらわれず、うっとりとしているさま)
  • The Books of Five Rings
  • 道の器用
  • 天の理
  • 朝鍛夕錬
  • 「下天のうちをくらぶれば、夢幻のごとくなり」(幸若舞『敦盛』)
  • 無位の真人
  • 小器用
  • 下手は上手の基
  • 一芸に長ずれば、多芸に長ず
  • 万事において、我に師匠なし
  • 弱くなれ
  • 応じ技(すり上げ面、切り落とし面、すり上げ小手、応じ胴)
  • 剣道と剣術
  • 勝つための剣
  • 観の目
  • 目付
  • 観見の目付
  • 先をとる
  • 先々をとる
  • 先々の先をとる
  • 後の先
  • 驚懼疑惑
  • 無明住地煩悩
  • 無心の技
  • 心がとまる
  • 珍獣さとり
  • 活人剣
  • 春風を斬る


  • 懸待表裏(懸待一致)
  • 遠山の目付(嶺の目付)
  • 表裏をしかける
  • 空の剣
  • 和の剣
  • 剣の道
  • 剣禅一如
  • 生命は一呼吸の間
  • 礼に始まり、礼に終わる
  • 照顧却下
  • 木鶏
  • 自己を習う
  • 只管打坐
  • 自己を習い、自己を忘れよ
  • 沙門問う「人命いくばくの間にか在る」。対へていはく「呼吸の間なり」。仏いはく「善いかな、汝、道を知れり」
  • その一瞬一瞬の今を臨終と心得よ(一遍上人)
  • 生死大事
  • 身心脱落
  • 雲遊萍寄(=うんゆうひょうき、雲のごとく漂い、浮き草のごとく寄る)
  • 兵法は東国より
  • 一の太刀(塚原卜伝)
  • 秘太刀
  • 新当流(新当=心を新たに事に当たる)
  • 無刀取り
  • 相抜け
  • 払捨刀
  • 無想剣
  • 鬼鉄(山岡鉄舟(鉄太郎))
  • 江戸の三舟(勝海舟(麟太郎)、山岡鉄舟、高橋泥舟)
  • 火裏の蓮
  • 沈思精考
  • 無刀流
  • 百尺竿頭の一歩
  • 衝天の気あり
  • 段を欲しがる人間に良い剣道はなし
  • 天真に任す
  • 公案
  • 優游 また優游 いささか言(ここ)に 今晨(こんしん)なり(良寛)
  • 痩せ我慢
  • 惻隠の情
  • 他者を思いやる心
  • 弱者、劣者、敗者に対する仁愛を武士の美徳とする
  • 我慢と共生
  • 生も死も一時の位
  • 力も入れず、心も費やさず
  • 淡々と
読後感:垂涎のタイトルを見つけた途端、その疾きことパブロフの犬の如く有隣堂のカウンターの前にならびて・・・。 この本もまた私の中のスーパーヒーローである山岡鉄舟、宮本武蔵らが登場。しかし、山岡鉄舟が身の丈六尺二寸(約186cm)で二十八貫目(約105kg) の巨躯巨漢だったとは。黒く日焼けした痩身痩躯の眼光鋭い侍をイメージしていたので、意外でした。まさに、心身ともに埒外のスケールのデカさと、 破格ってこういうことなんだ、って感じ入ります。 「晴れてよし 曇りてもよし 富士の山 もとの姿は変らざりけり」かぁ。凄腕のまま仕官できず、失意にくれる浪人もいたでしょう。また、 浪人であることをよしとした鉄舟さんのような筋金入りの人もいました。しかしこんな忙しさ極まる世の中だからこそ、 「本質を見抜く眼が大事だよ」と天の雲間から鉄舟さんが言っているような気がします・・・。半可通の自分には耳が、痛てててて、です。
○『百年の孤独』 G・ガルシア=マルケス著(2007年5月2日読了)
  • 「男の人って変ね」
  • エル・カルチョ(石あたま)
読後感:万城目さんはこの本を読んで作家としての信念が開花した、ということですので僕もあやかりたく読んでみました。 が・・・、この本を原点として万城目さんのあの面白さが発露するとは・・・。うーん正直、難解。ストーリーは、 ウルスラさんという105〜122歳の長寿を全うしたおばあさんの目を通して見た、おばあさんの一族の四代の長きに渡るお話です。 人に歴史あり、か。自分、両親、祖父母、曽祖父母、・・・・、生きた時代の違いこそあれ、営々と続く人の生き様に、 何か共通した気質のようなものがあるのだろうかなぁ。 最近すっかりご無沙汰している明治生まれで今年白寿を迎える祖母の顔を、なんだか見たくなりました。
○『鹿男あをによし』 万城目学著(2007年5月1日読了)
  • 「あをによし 奈良の都は 咲く花の 薫ふがごとく 今盛りなり」(小野老)
  • 研究に一生懸命になるのもいい。でも、それだけじゃ駄目だよ。
  • 「びいと啼く 尻鹿悲し 夜乃鹿」(芭蕉)
  • 教師という仕事は我慢比べ
  • 大阪の食い倒れ、京都の着倒れ、奈良の寝倒れ
  • 大仰
  • 眉唾
  • 一眼ニ足三胆四力
  • すわ遅刻か
  • 奈良の鹿、京都の狐、大阪の鼠
  • 後顧の憂い
  • 六十干支
  • 十干十二支
  • 庚牛年籍、庚寅年籍
  • あまし小手
  • 太刀筋
  • 星勘定
  • 猿石、鬼の雪隠、鬼の俎、亀石
  • 快哉の気持ち
  • 巴戦
  • 清冽
  • 亳もなし
  • 自分の剣道
  • 二人の剣道はどこまでも真摯で、どこまでも誠実だった
  • 純化された勝負の世界
  • 魂消た
  • 眷属
  • ぬの字鼠
  • 天地人と生け花
  • 自分たちの世界は自分たちで救え
  • 三角縁神獣鏡(三角縁三神三獣鏡)
  • 卑弥呼「鬼道を事とし、能く衆を惑わす」(魏志倭人伝)
  • 比売命(ヒメミコ)
  • 伝言ゲーム
  • マイシカ
  • 寄越
  • 四十日理論
読後感:本日の授業の予習も終わり、ちょいとアップ。前作、京大生を描いた万城目さんの作品『鴨川ホルモー』も非常に面白かったので、 新作を書店で目にした途端に、すわッお財布が開いてしまった・・・。 面白さは、抜群でした。万城目さん、さすがです。京大法学部出身にして、そしてあのユニークな卒業式で知られる元京大生だけあって、 精緻に仕組まれたストーリーの中に馨るそこはかとしたユーモアのセンス、そして時空・悠久の歴史を越えたロマン。 ゴールデンウェークの、このなんとなくくつろいだ時期に万城目さんの新作を読めたのは ラッキーこの上なし、でございます。しかし、主人公・鹿男の境遇は、なんだか自分と良く似ていました・・・。 高校三年間の剣道、物理と化学の教師(以前、別の大学で化学の授業を受け持ったことも・・・)、 剣道部の顧問、三校定期戦、勾玉(僕はその根付を持っています)。また、 鹿とおしゃべりはできませんが物心ついたときは『鹿の遠音』を子守唄代わりに育っていましたし・・・。 もとい。とにかく、この作品は『今昔物語』や『竹取物語』に通じる現代の御伽草子・御伽話といっても過言でないのでは・・・。 万葉ロマン、古代史スペクタクル、宇宙観、自然観。 たとえば、「天の海に 雲の波立ち 月の船 星の林に 漕ぎ隠れ見ゆ」(柿本人麻呂)。うーん、こんな感じで。
○『藤沢周平に学ぶ』 月刊『望星』編集部・編(2007年4月27日読了)
    ●山折哲雄&小浜逸郎(序章)●
  • 優しい力
  • 人が人であること
  • あらまほしき人のありよう
  • ままならなさ
  • 忍従の人生
  • 義理人情
  • 咄嗟の振る舞い
  • 「個」と「ひとり」
  • ありうべき日本人の品性
  • 俗物性
  • 海坂藩
  • 足るを知る
  • 世間論
  • 移ろい
  • 無常感
  • 諦観
  • 「本音」と「建前」
  • ルサンチマン
  • 普通のあり方

    ●山田洋次(一部)●
  • 豹変ぶり
  • キラキラと輝く瞬間
  • 体面
  • 社会未成熟
  • 競争一辺倒の安っぽい価値観
  • バランスのとれた良識
  • ややこしい存在

    ●常盤新平(一部)●
  • 莫連
  • 男前
  • 「ちくと一杯」傾ける
  • まっすぐ成長、そのまま成熟の難

    ●佐高信(一部)●
  • 桎梏
  • 聖職、濁職、空職
  • 角熟
  • 二枚腰、三枚腰でいく
  • 負けて知る

    ●縄田一男(一部)●
  • 心に「一粒の漆の実」を持って

    ●小浜逸郎(一部・二部)●
  • 大人化計画
  • 大人は子どもに比べてより深く死を内在化させている
  • 達者で
  • 矛盾と決意
  • 裏店
  • ところを得る
  • 臍曲がりの精神
  • 諦観と自己認識
  • 筋を通す
  • 分を知る
  • ほんとうの武士道
  • 義憤
  • 「平」への尊重の念

    ●権田萬治(第二部)●
  • 大人の世界
  • 清く豊かに美しく
  • 命がけ

    ●阿部達ニ(第二部)●
  • 白埴の瓶こそよけれ霧ながら朝はつめたき水くみにけり(石川啄木)
  • 挫折を知らないものの傲慢、悲しみの人の成熟
  • 飄風不終朝 驟雨不終日(老子)

    ●黒土三男(第二部)●
  • 気高さが醸しだす透明感
  • 風潮に迎合しない美学
  • 道理
  • 節度
  • 小さな澱み
  • 威張らず欲張らず平凡に
  • 冷徹な覚悟

    ●宇江佐真理(第三部)●
  • 胸ふさがれる思い
  • 「四十を過ぎてなお無名だった男(=葛飾北斎)が、世間を相手に試みた必死の恫喝」(『溟い海』)
  • 苦節、苦渋、失意、情愛、品格

    ●岡庭昇(第三部)●
  • 強ければいいというものではない
  • 唯一純粋の「悪」
  • 基調にある温かい世界観

    ●細谷正充(第三部)●
  • 江戸っ子の啖呵
  • 抑制された「思いやり」
  • 距離を保った「優しさ」
  • 狂言回し
  • 意気地なし


  • ●西島襄治(第三部)●
  • 軽輩として、侮られましたな
  • 無益な
  • 私のため、義のため
  • 定斎屋(薬屋)
  • 羅宇屋

    ●山本一力(第四部)●
  • とてもオレは届かねえや
  • 清清しさ
  • 満足の器
  • 身の丈、身の程、わきまえ
  • まなじりを決しない

    ●秋山駿(第四部)●
  • 自然が支えてくれる“再生”
  • 信じられる他人

    ●竹山洋(第四部)●
  • ひとむかし前の男たち
  • 華美に流れず、矩を越えず

    ●松田静子(第四部)●
  • 愍笑
  • 自ら癒える力
  • 馬の骨
  • 自己存在証明

    ●田中優子(第五部)●
  • 付きすぎず、離れすぎず
  • 「幸せ」と「仕合せ」
  • 生きるついでに
  • 意無く、必無く、固無く、我無し

    ●高橋敏夫(第五部)●
  • 熱狂嫌い、流行嫌い、戦争嫌い
  • 他者の鬱屈を感受できる品格
  • ねばり強く生きる
  • 「人間はあたえられた命をいとおしみ、力を尽くして生き抜かなければならない」(『三屋清左衛門残日録』)
  • 負のロマン

    ●宇都宮健児(第五部)●
  • 「えらい人」の顔
  • 営々と働く

    ●湯川豊(第五部)●
  • 抑制された文章
  • 凛々しさの本質
  • 美しい日本人

読後感:朝の通勤電車でBENNIE Kの『サンライズ』、『Sky』などをBGMに、大好きな藤沢周平作品を語る解説本を読む。この至福な時間、満足この上なし。 世の中広しといえど、BENNIE Kのファンにして藤原周平の愛読者、この組み合わせなるは、珍しかる者かも。 しかし存外、BENNIE Kさんの歌詞に描かれる心象風景や世界観は藤沢周平ワールドに通ずるものがあると感じています。 何しろBENNIE Kさんの名前は、“ベン・E・キング”と“弁慶”に由来しているとのことですので、「義」の世界は図らずも遠からじ・・・、でしょ。
追記:藤沢周平ワールドに近い精神世界を描いた曲を、最近見つけました。それは、中孝介さんの歌う薩摩焼酎・さつま白波のCMソング『花』です。 深手を負った手負いの侍や市井の人々。しかし、藤沢周平はその侍の心の中に「花」を描くことができたから、 物語がどんなに暗澹たるものでも、作品の中には通奏低音のような爽快さが目立たずに必ず流れている、と。そう思います。(5月7日おつけ)
○『賢者はかく語りき』 齋藤孝著(2007年4月25日読了)
    ●ニーチェの章●
  • 小さい人間どもに近づくときは気をつけよ
  • 強壮な風の吹くところへ
  • 蝿たたきになるな
  • 心の基礎体力
  • 一事こそ必要
  • 額縁理論
  • 問題提起者
  • 思考の堂々巡り
  • イチローと松井秀喜の共通言「試合に出なければ解決できない問題がある」

    ●世阿弥の章●
  • 眼の前にみて、心を後におけ
  • 我見と離見
  • 秘すれば花なり、秘せずば花なるべからず
  • 稽古は強かれ、情識はなかれ
  • 真の花にあらず。ただ時分の花なり。
  • 失するをも知らず
  • われより下手をば似すまじきと思う情識あらば、その心に繁縛せされて、わが悪きところをも、いかさま知るまじきなり
  • 実力(真の花)
  • せぬ所が面白き
  • 油断なく心をつなぐ
  • 用心を持つ内心
  • 一調ニ機三声

    ●ソクラテスの章●
  • 大きいためにかえってふつうより鈍いところがある
  • 目をさましているには、なにか虻のようなものが必要だ
  • 「自分も無知である」ことを自覚したうえで、人を目覚めさせる虻になりたいものだ
  • わたしに対してではなく、真理に対してなのだ、反対できないのは
  • ファシリテータ
  • 自分の言葉によって相手の歓心を買おうと念じるようなことは、けっしていけない
  • 不正を行うよりもむしろ不正を受けるほうを選びたい
  • 報復人事
  • 「真実を見続ける」ことは、「善く生きる」ことと同義である

    ●アインシュタインの章●
  • 脱常識力
  • 簡単な思考
  • 本を調べればわかるような知識は、頭にしまっておかない
  • 深くつっこみ、辛抱強く追及する
  • 孤独な旅人
  • 個人的な願望の実現に向けられた人生は、つねに遅かれ早かれにがにがしい失望に終わります

    ●老子の章●
  • 其の雄を知りて、其の雌を知れば、天下の鶏と為る
  • 持してこれを盈たすは、その已むるに如かず
  • 笑わざれば、以て道と為すに足らず
  • 上士は道を聞けば、勤めてこれを行う。中士は道を聞けば、在るが若く亡きが若し。下士は道を聞けば、大いにこれを笑う。
  • 道(タオ)

    ●ゴッホの章●
  • 「芸術家」よりもむしろ、「職人」であろうとした
  • 経験と毎日のちょっとした仕事
  • 絵を描くためには、落ちついた規則正しい生活が絶対に必要だ
  • 芸術家的野心よりも、職人的規則正しさを欲した
  • うまずたゆまず実生活に没頭する
  • もっと強い太陽の下で、もっと日本的な透明さの中で、色彩を見たい
  • 「あこがれ」はスタイルの萌芽だ
  • 芸術家の共同体

    ●清少納言の章●
  • 恥づかしきもの
  • ものづくし(ものはづくし)

    ●ヘッセの章●
  • 酔っぱらった自分
  • 青春崇拝
  • 上機嫌力

    ●良寛の章●
  • 「ひとり遊びぞ我はまされる」
  • 飄逸
  • 天上大風
  • 「散る桜 残る桜も 散る桜」
  • 「くささ」は出る
読書感:スペクトルのスキャン中の時間を利用してアップ。世阿弥、アインシュタイン、ゴッホ、老子、ニーチェ。 私の中のスーパーヒーローが満載の本でしたので、つい触手が伸びてしまいました。賢人の言葉は、刺すように痛い。 でも、好き。齋藤先生、次は南方熊楠あたり、如何でしょうか? お待ち申し上げておりますので、よろしくお願いします。
○『チェーザレ 第3巻』 惣領冬実著(2007年4月24日読了)
  • チェーザレ・ボルジア
  • 「人はパンのみに生くるものにあらず」
  • リナシメント
  • ピサ大学教授資格(現在の卒業証明に相当)
  • マキャベリ
  • ヒエラルキア(聖職位階制:総大司教、首都大司教、大司教、司教)
  • コリーダ・デ・トロス
  • レコンキスタ
  • ピサのサピエンツァ大学法学部(チェーザレの母校)
  • シノピエ美術館(シノピエ=「下絵」)
読書感:ガリレオ先生も学んだピサ大学の設立は1343年。なんと創立664年!日本は室町南北朝の混迷期真っ只中。いやはや。 日本にだって平安朝には大学寮が設置されていて国学国体の形成を担う機関があったとはいえ、 既にヨーロッパでは近代大学の礎となる厳格な知の精錬所がシステムとして機能していたのだから、驚愕です。 当時の大学の厳格さと今日本にある(大多数の)大学の行状を比較しては、いけない、いけない(あっちっち)。 そうです、そもそも僕のような俗人凡夫が教員でいること自体が、すでに罪であるのだから・・・。 しかし、大学で教育や研究に関わる者として、“パン”というメタファーを有形・無形の価値としてどう捉えるべきか、 小生も小生なりに少しは考えなくてはいけないのだろうかな・・・。
○『人生の鍛錬 小林秀雄の言葉』 新潮社編(2007年4月23日読了)
  • 人は様々な可能性を抱いてこの世に生まれ来る
  • 感心することを怠りなく学ぶ
  • あらゆる場合に自己に忠実だった人が結果として独創的な仕事をしたまでである
  • 文は人なり
  • 誤解されない人間ほど、毒にも薬にもならない
  • 知識のうちには、まさしく文明人もいるが、覚悟の裡には、いくら文明が進んでも、依然として原始人が棲んでいる
  • 才能の不足で失敗するより、寧ろ才能の故に失敗する
  • 美しい「花」がある
  • 「花」の美しさという様なものはない
  • 生きている人間とは、人間になりつつある動物かな
  • 徒然わぶる人
  • 怪しうこそ物狂ほしけれ
  • 言絶えてかく面白き
  • 強い精神
  • 模倣は独創の母
  • 直覚
  • 視力の純化
  • 春風の花を散らすと見る夢はさめても胸の騒ぐなりけり(西行)
  • 空観
  • 意は目に付き、心は付かざるもの(宮本武蔵)
  • 読書百遍
  • 決して馬鹿ではないのに、人生に迷って途方にくれている人が好きだ
  • ナポレオン法典
  • 見巧者
  • 沈黙させる力
  • 正しく豊かに感ずる
  • 小言幸兵衛
  • 善は得るもの
  • 文勢
  • 照魔鏡
  • 「能率的に考える」と「合理的に考える」
  • 変わり者
  • 自己に忠実に生きる
  • 姿は似やすく、意は似せがたし
  • 歌は味わうもの
  • 「かんがう」、「かむかう」、「むかえる」
  • 眼高手低
  • 積疑(伊藤仁斎)
  • 壺中天
  • 男子の本懐
  • もののあはれ
  • 言霊信仰
  • 活発融通の心
  • 有為転変
読書感:かの先生には失礼ながら、MPから流れるVan Halenの『Jump』がBGMとして小気味良く・・・。今流行りのなぞり本、あらすじ本なれど、 思考のヒントを急速充電するには、非常に役立ちます。しかしそこは、放電時定数の小ささには自信のある私です。乱読浅読の読書百篇ばかりでなく、 先生の教えに準じて読書百遍。機をみて再読の要あり哉。
○『ミクロコスモス(T・U)』 中沢新一著(2007年4月22日読了)
  • バルトーク・ピアノ曲集『ミクロコスモス(全6巻153曲)』
  • 夜の知恵と梟
  • 昼の知性と学問と芸術の守護女神アテナ
  • 料理の三角形(レヴィ=ストロース)
  • 構造主義四天王(レヴィ=ストロース、ラカン、フーコー、バルト)
  • 論証・抽象・実証
  • セリー音楽(ブーレーズ)
  • 隠れた原理
  • ロラン・バルト『モードの体系』
  • 自然の知性作用
  • レヴィ=ストロース『悲しき熱帯』、『野生の思考』
  • マトリックス=母型=構造
  • 岡本太郎のビジョン
  • 恐るべき美
  • 縄文芸術
  • 神話的思考
  • 青森のねぶた祭り、秋田の生保内節盆踊り
  • 岡本太郎『四次元との対話 縄文土器論』
  • 岡本太郎「芸術は爆発だ」
  • 中沢新一『アースダイバー』
  • 魂のヨーロッパ的構造
  • 忘我の神、舞踏する神
  • Exo-への衝動
  • 善のイデア
  • 中道
  • 文明と野蛮
  • 境界的グノーシス学
  • 外来の教養と伝来の知恵
  • 異質なものの接続領域
  • 機前と混沌
  • 母音「ア」「a」のマトリックス性
  • 形而下(フィジックス)
  • 南方熊楠と「東洋の学」
  • 試論
  • ドリームタイムのためのエアーズロック
  • 芸術≠知的作業

  • 思考の強度と筆圧
  • 3・6・9の原理
  • 動物の狡猾な知性
  • 音楽(志向)と思考
  • ピタゴラス・コンマ(二対三の振動比)
  • 禁足地
  • 自然契約(ミッシェル・セール)
  • ヨーロッパ原理
  • 地中海的明快さ
  • 肉付面
  • 三位一体と「ボロメオの輪」
  • ベースボールの愉快・・・、(九の数で組み立てられたゲーム、九は三の二乗で、三は陽の気をあらわす)正岡子規『筆まかせ』
  • 写生・渾然一体・主格合一
  • 純粋接続(ベルクソン)
  • ユーモアの感覚
  • 「私」はどこにある
  • 名前と所有
  • 夢は「私」のものではない
  • 人馬の出会い
  • ケンタウロス
  • 黒川能と古層の神(東北地方)
  • ポリモルフ(多形的)
  • 思考法の規則
  • 友情(感情を持った存在)
  • カイエ・ソバージュ『対称性人類学』
  • バイロジック(複理論)
  • 生存のための倫理
  • 繊細の精神と幾何学の精神
  • エリクチュールの温度ゼロ(バルト)
  • 裸の眼
読書感:お昼休みにアップ。哲学・宗教・神話・民族学の体系を正規に学んだことのない私には、ちょっと“難”な本ではあった。 きっと体系を学んできた人には、要点の詰まった読みやすい本なのであろう・・・。 現代人の意識の古層をなす神話的思考のなかに現代に勝るとも劣らない思考体系がある、ということは非常に勉強となった。
○『なぜ日本人は劣化したか』 香山リカ著(2007年4月20日読了)
  • 「つまづきやすい」
  • 「すぐ休学する」
  • 「一息二〇〇字」
  • なぞる本
  • あらすじ本
  • メランコリー親和型
  • プライドの値崩れ的低下
  • 正当な権利と個人の身勝手
  • 小泉八雲『菊の優美さ』
  • 国策化するコンテンツ事業開発
  • お得感
  • 傷つきやすさ
  • 身体的能力と体力の劣化
  • キャラ化
  • 寛容の劣化(ゼロ・トレランス)
  • 割れ窓理論
  • 社会の衰退
  • 前向き思考と後向き志向
  • 想像力不足
  • 新自由主義と二極化
  • 劣化現象
  • 「セカンドライフ」、「アバター」
  • 病識
  • 無理・自制・我慢・辛抱
  • 交換様式X(柄谷行人)
  • 互酬経済
  • 暗黒社会
読書感:スキャン中に、ちょっとアップ。すでに世の中は“低下”から“劣化”へ、(良質・健全なものの絶対) 量の減少の時代から(良質・健全なものの尺度をのせる地平そのものが全面的に押し下がるようなイメージで、絶対価値観としての) 質の劣化を招いている時代に突入してしまったことを、この著書は指摘している。 中でも“寛容の劣化”という指摘は、とても気になる。大学生のときに受けた教養の授業で(確か哲学?の)先生が言った言葉を思いだします。
先生:「君たち、何のために大学に来て勉強するのかね?」
我々学生:「・・・?」
先生:「それは、教養を身につけるため、ですかな」
我々学生:「・・・?」
先生:「じゃ、どうして教養を身につける必要があるのかね?」
我々学生:「・・・?」
先生:「それは、人、自然、文化、社会、思想、イデオロギー、コスモロジー、立場、好き嫌いなどに見られる自分と異なるものに対して理解し、 寛容にあるための方法を得るため、またはそれらに対する想像力を持ちうるため、ですかな」
私:「・・・?、・・・!!」
今でも、この言葉を信じて曲りなりにも勉強を続けています。しかし一方で、 「勉強をすればするほど、何だか不寛容(=おばかさん)になってはしないか」と疑いたくなる自分もあります。 そんなバナナ! ファウスト先生、それでは私、悪魔に魂を売り渡しちゃった輩のようなものですぜ・・・。もとい。 寛容性の消失した社会、あそびのない機械。なんだか、どちらも耳障りで嫌な音を立てて壊れそうです。
○『物理学者、ゴミと闘う』 広瀬立成著(2007年4月20日読了)
  • 学者の仁義
  • マータイさんの「もったいない精神」と「3R(reduce, reuse, recycle)」
  • たこ壺思考とふろしき思考
  • たこ壺科学とふろしき科学
  • 接続可能(sustainable)な地球
  • 環境エンジンと細胞エンジン(生理作用)
  • 定常開放系
  • 戦略10訓 対 もったいない10訓
  • オクヌールのかなづち車
  • ステピンの三角形
  • 環境の「熱死」
  • 環境は「たまねぎ構造」
  • 水の惑星
  • 勝木渥『環境の基本理論』
  • シュレーディンガー「生命の本質とは、負のエントロピーを食べることである」
  • 代謝
  • 吉田兼好「家のつくりは、夏をむねとすべし」(徒然草)
  • 一木一草に仏性あり
  • 産廃Gメン 対 「穴屋」、「一発屋」、「まとめ屋」
  • もったいない文明
  • エントロピーの廃棄
読書感:キセノン光源が安定になるまでの時間をちょっと利用してアップ。昨年の初秋の頃、 安部明廣先生と帰りの電車をご一緒させて頂いた折に地球環境と、それに対する物理化学者の考える姿勢について興味深いお話をお聞かせ頂きました。 そのことがきっかけとなり、徐々に僕も地球温暖化の問題が気になりだしています(まだまだ、新聞の記事を切り取っておくこと程度の関心ですが・・・)。
○『ハンニバル・ライジング(上・下)』 トマス・ハリス著(2007年4月19日読了)
  • ハンニバル(峻厳)公
  • クリスティアーン・ホイヘンス『光についての論考』
  • ユークリッド『原論』
  • Boche(ドイツ野郎=フランス語の Alboche(ドイツ人)から)
  • しらさぎと 白さを競う 仲秋の月(紫夫人)
  • 放心癖
  • パスカル『パンセ』
読書感:ヒーターの加熱待ち時間をちょっと利用してアップ。『デセプション・ポイント(上・下)』(ダン・ブラウン著)以来、 久しぶりにフィクションものを読む。戦争、天災、事件、病気など様々なアクシデント、 そして渦中に置かれた人間が否応なく直面する不安と恐怖、狂気と正気。日常の中でつい忘れがちな、「この世の一寸先は、闇」という非日常性。 「常なるものなんて何も無し」という何人も避けられぬ過酷な生の現実。うーん、だからといってニヒリズムに陥るのは、ちょっとなぁ。 「今をなるべく充実させながら生きてみる」、せいぜい今の自分にできることって、それぐらいかな。な、ことを何故だか感じました。
○『思考の整理学』 外山滋比古著(2007年4月18日読了)
  • グライダーと飛行機、似て非なるもの
  • グライダー学生
  • グライダー論文
  • 自力飛翔
  • グライダー能力と飛行機能力
  • じらせておいてから、やっと教える
  • 体で覚える
  • 秘術は秘す
  • 素読の効用
  • 夜の信仰
  • 夜考えること、朝考えること
  • 朝飯前
  • 発酵素
  • 熟したテーマは向こうからやってくる(バルザック)
  • Sleep over(一晩寝て考える。寝かせる。)
  • 三上(馬上、枕上、厠上)(欧陽修)
  • 大局と枝葉
  • 見つめるナベは煮えず
  • 専心研究と篤学の人
  • 努力・沈潜・成就
  • カクテル法
  • 訓詁の学問
  • メタ・創造
  • 知のエディターシップ
  • インパーソナル・セオリー(没個性説)
  • 触媒
  • 修辞学的残像
  • アナロジー
  • 慣性の法則
  • 文章における連続性、非連続性の謎
  • マッチ・ポンプ
  • セイロン三王子
  • メタ・メタ・情報
  • 抽象のはしごを降りる(一般意味論)
  • 着想・知識・整理・統合・抽象化・体系化
  • 思考の純化
  • スクラップ・ブック
  • つんどく法
  • メタ・ノート
  • 忘れちゃいけない病
  • 忘却法
  • 逍遥の効用
  • 時の試練
  • 時間のもつ風化作用
  • 古典化作用
  • ニュートン「世間でわたくしのことをどう思っているか、知らないが、自分では、 自分のことを浜辺で遊んでいるこどもみたいだと思っている。ときどき珍しい小石や貝を見つけて喜んでいるが、 向こうにはまったく未知の真理の大海が横たわっているのだ。」
  • 収穫逓減の法則
  • 知識それ自体が力である(ベーコン)
  • 精選の原理
  • 折り返し点
  • とにかく書いてみる
  • 上すべりした長篇
  • 無心
  • 一瀉千里に書く
  • テーマはシングル・センテンス
  • 風を入れる
  • 称揚する
  • 裨益されず
  • ほめてくれる友
  • ピグマリオン効果
  • ほめられた人の思考は活発になる
  • しゃべってみる
  • ロータリー方式
  • 一業一人
  • 創造的雑談
  • ロゲリスト・グループ(近藤正夫、近角聡信、今井功、木下是雄、大川草蔵、磯部孝、高橋秀俊)
  • エディンバラのルーナー・ソサイエティ(=月光会、プリーストリー、ワット、ボールトン、マードック、 バスカヴィル、ハーシェル卿、E、ダーウィン)
  • インブリーディング(同系繁殖)と弱体化
  • ブレイン・ストーミング
  • インターディスシプリナリー(学際研究)
  • ノー・マンズ・ランド(未踏、未開発の地)
  • 発明するためにはほかのことを考えなくてはならない(心理学者スリオ)
  • 自分の観念をあまりに信用している人は発見するのにあまり適さない(クロード・ベルナール)
  • 三多(看多、き多、商量多)
  • 推敲(鳥宿池辺樹 僧敲(推)月下門)(唐の詩人、賈島(かとう))
  • 三中(夢中、散歩中、入浴中)
  • 田舎にいる人間ほど外国語にあこがれる気持ちがつよい
  • 従僕に英雄なし
  • 第二次的現実中心
  • 行動と知識をなじませる
  • 汗のにおいのする思考
  • 思考的読書、量的読書
  • 拡散的作用、収斂的作用
  • 「思われる」と「考える」
  • 「AはBであろう」と「AはBである」
  • methink(=思われる、シェークスピア時代の語)
  • 「It seems to me」 と「I think」
  • 「くらげなす ただよえる」状態と「われ考う、ゆえにわれあり」の状態
  • ものを書くのは人間を厳密にする
読書感:「翔べないアヒル」、って自分のことかも。こんなにもためになる本の存在を今まで知らなかったとは、深く不覚を自覚。それと、 ちょっと調子にのって、書き過ぎました・・・。
○『後手という生き方』 瀬川晶司著(2007年4月14日読了)
  • 先手番のプレッシャー
  • 後手(番)の強み
  • プロの条件とは、仕事にベストを尽くすこと
  • 二足のわらじに好手なし
  • プロとは、あきらめの悪い存在
  • プロにある、執念の差
  • ピアニスト:練習を一日休めば自分に分かる、二日休めば批評家に分かる、三日休めば聴衆にわかる
  • 脳みそで汗をかく
  • 目先の勝ち負けにこだわらない
  • プロには、魅せる義務がある
  • 努力は裏切らない
  • 地位が人をつくる
  • 羽生善治「誰でもある程度のところまではすごいスピードでたどりつける」
  • 第一人者の放つオーラは似ている
  • 一流になるための環境は、まず周囲に認められること
  • 流れに身をまかせてくさらずにやる
  • くだらない負け方
  • 盤上没我
  • 一日三時間、毎日の集中
  • 工夫の余地
  • 将棋は死なない
  • 「脱皮できぬ蛇は滅びる、取り換えていくことを妨げられた精神も同じ。それは精神たるをやめる」(某哲学者の言)
  • 将棋をやっている暇があるのなら働け
  • 精神力は肉体を超える
  • 強くなるほど勉強量は増えるもの
  • 大舞台は人を成長させる
  • トッププロと並みのプロ
  • 信用が勝ちを生む
  • プロは代わりが利かない
  • 将棋より大切なものはあるか
読書感:「将棋」を「研究」に置き換えて読ませて頂くと、内心忸怩たる思いで満杯です。 真剣勝負に生きるものの言葉は、迫力が違います。大変、勉強になりました。


問い合わせ:實方 真臣(Masaomi SANEKATA)
電子メール: sanekatagen.t-kougei.ac.jp

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