東京工芸大学工学部                                               []
基礎教育研究センター・物理教室
實方研究室(Sanekata Lab.)

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<近頃の我輩、あるいはその研究室風景>
<近況☆雑感>

『マイばね定数』

 このキャンパスで、以下のような問答をよくします(とくに、新入学シーズンはフリックエントリーにね)。

   学生:「ところで、先生の髪って、どういうパーマ?」
   私:「天然」
   学生:「うそー!?」
   私:「地毛」
   学生:「・・・、えー、ほんとー!!」

そうなのです。僕の毛髪は、ばねのような、鳥の巣のような天パーなのです。 例えるなら、こんがらがったばねを頭にのせた原子人とでもいいましょうか (実際、高校時代にはその三段跳びの並外れた跳躍力から“ばね方”と一部から呼ばれ、 またその円盤投げの群を抜いた遠投能力から、「石を投げて鳥を撃つ」、そんな狩すらしでかしそうな“原始人”とも一部から称されていましたね・・・)。
 そんなこんな・・・、 で前々から、自分でも、自分の毛があまりにも“ちりくる”しているので、その物理的特性を知りたかった訳です。 で前々から、すばらしくモノサイクリックにカールしたサンプルをとってあったので、 今期「基礎物理A」の期末試験の機に便乗して、マイ・ばね定数を測定してみた訳です。 おもりは付箋紙をちぎったものがちょうどよく、m=12[mg]程度のものを使用すると、写真のようにΔx=3.7[cm]の伸びを示した訳です。 引っ張って手を離せば、びよよよよーんと単振動もします。もちろん減衰振動なのですが、25回程度までなら振動回数もちゃんと目測できました。 で期末試験では、みんなにこの“ちりくる”毛のばね定数K[N/m]と単振動の周期T[s]を計算してもらった訳です。 マイばね特性の結果は、k=mg/Δxよりk=3.2X10^(-3)[N/m]で、T=2pi(m/k)^(1/2)よりT=0.39[s](および減衰係数Gは、 25回振動時の変位が初期変位の1%になるとすればG=-ln(0.01)/(0.39X25)=0.47[1/s])となるようです。 一方、試験の結果の方は出題があまりにセンセイーショナルだったのか、エクセントリックだったのか、 正解者は残念ながら39名中3名だけでした(これにはちょっと困ったなぁ・・・)。
 しかしながら、このばね定数が大きいのか、小さいのか他の例を知らないので比較のしようもないですが、 歯型や指紋と同じように、僕の身体的固有値のひとつになることは、確かです。 ちなみに、この写真の“ちりくる”毛は約六巻きで、伸びて切った期間の三年間から考えると、丁度半年でひと巻きすることが分かります。 なんとも、樹木の年輪といいましょうか、春分秋分の新陳代謝といいましょうか、体内時計とでもいいましょうか、 こういうことからも「身体は、自然の一部である」、ということを強く感じさせられます。
 また、このような毛髪は生体タンパク質からできている訳で、タンパク質分子が幾重にも折り重なり、よじれ巻き上げられ、 毛髪という高次構造体として形成している訳です。たとえば、最先端の生物物理実験ではAFMを用いてタンパク質1分子のばね定数を、 力学的に求めることが既に可能となっていて、ポリアラニンという分子では 1分子ばね定数 が2.5[N/m]と求められているようです。 仮に、このような生体タンパク質分子を一次構造体として、折畳み巻き上げられた毛髪を高次構造体とすると、 おもしろいのは高次構造体のばね定数が、一次構造体の1000分の1ぐらいに小さいということ。 一般性があるのかどうなのか浅学の徒の僕には分かりませんが、なんでなんでしょう?
スパイラル(コイル)状構造体の構造次数とばね定数の間には、どんな物理的な相関があるのだろうか?・・・。 どなたかご存知なら、是非教えてください。
 思い出すのは子どもの頃、糸ゴム動力の模型飛行機を作って遊んでいたとき、 飽きもせずにプロペラを回転させてできるゴムのこぶのできる様子を眺めていたことです。 ねじれのない糸ゴムが巻きあげられこぶをつくり、ごぶのらせんの糸ゴムとなり、 さらにそれがより大きなこぶをつくって大きなこぶのらせんの糸ゴムをつくる・・・。 さらに・・・、さらに・・・、みたいな。このとき、はじめのねじれのない糸ゴムを一次構造とし、そのばね定数を一次のばね定数とする。 巻き上げてはじめのこぶのらせんとなった糸ゴムを二次構造と考え、そのばね定数を二次のばね定数とし、 さらに次にできる大きなこぶの場合を三次とし、さらにさらに四次、五次とすると・・・。 うーん、このモデルだと次数とともにばね定数は大きくなりそうな気がする。浅はかなこのモデルは、早くも破綻かぁ。 どう考えれば、いいのだろう。いや待てよ、案外、逆かもしれないぞ・・・。 でもほら、最近生命科学とかで話題になってる自己階層化(に関わるエネルギー、力、非線形性、構造、機能)のモデル、 って実はこんな身近なところにも、あるにはあるんじゃないのかな。
(2007年6月28日の記)
<過去記の庫>
2007年4月5日の記  
2005年12月29日の記  
2005年8月1日の記  
2005年5月24日の記  
2005年3月24日の記  
2005年3月5日の記  
2004年12月27日の記  
2004年8月17日の記  
2004年7月3日の記  
2004年6月11日の記  
2004年3月2日の記
<よみもの抜粋録イン通勤図書館>
 通勤での乱読遍歴の忘却をわずかでも阻止しようという恥ずかしくも他愛ない試みですので、何分にもご容赦くださいませ。 脈絡のない読書がたたって、同じ書籍を二度購入してしまうこと幾度。こうでもしないとまた読書中に、 「おや、この文面は!?..」みたいなことが起こってしまうもので・・・。
(2007年7月21日の録)


問い合わせ:實方 真臣(Masaomi SANEKATA)
電子メール: sanekatagen.t-kougei.ac.jp

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